君に近づくためには
ティナが一人ぼっちで寂しいと泣いていたと知った俺は、そこで何も考えられなくなった。
考え無しのまま気が付けば、俺がしたがっていた事を体が勝手に実行していた。
彼女を引き寄せて、我が物同然に抱き締めていたのだ。
ティナは嫌がるどころか俺の腰に彼女の細い両腕を回し、バスローブを羽織っただけの全裸の俺に彼女の成熟しきった、いや、まだまだ青くてだからこそ瑞々しい肉体を俺に思い知らせた。
厚手のバスローブ越しにもわかる、俺の身体に押しつぶされてしまった張りのある胸。
大きすぎず小さすぎず、きっと綺麗な真ん丸だ。
彼女の背中は少しやせ気味で、脂肪がついていないのは俺的には好みだけれども、肩甲骨や背骨を感じすぎると俺の指が勝手にまさぐってしまうので脂肪を付けた方が彼女は安全だ。
いい加減にしろ、助平。
そこで自分を律するために彼女の背中にあった手の位置を下に下ろしたが、腰の下にはヒップというさらに俺を魅惑する部位があったではないか。
駄目だ、感じるな。
ぎゅっと目を瞑ったそこで、ベッドに転がして来たジュリアンの姿が瞼の裏に再生された。
彼はベッドに運んでくれてありがとうと俺に感謝するどころか、俺を見下したような目で見返したのだ。
俺に頭と体を洗ってもらい、俺に体を拭いてもらい、そして、歩けないからとベッドまで抱きかかえて運んでもらったくせに、そんな功労者の俺に対して向ける視線が、見下したような、で良いものだろうか。
俺は勿論の事、恩知らずなジュリアンに抗議をした。
すると彼は俺に鼻で笑って返した。
――君は俺に構い過ぎる。これはお前達がやっていない証拠だな。自分の中のフラストレーションを紛らわせられるからって、俺の世話役を可愛いアロイスから奪ったんだ。
いや違った。
鼻で笑うどころか、俺の行為をいらないものだったと言い放ったのだ。
「悪かったよ。じゃあ、今すぐアロイス君を呼び戻すよ。まだ我が家にいるんならね。いなかったら、はい、邪魔した俺が連れ戻させていただきます。」
「はははは、それだよ。新妻と一夜を共にしたばかりの男の台詞じゃないね。君はしていないんだ。可愛いティナの処女を奪えなかったんだ。」
俺は言い返せないとぐっと唇を噛んだが、俺に攻撃的だったジュリアンが急に表情を和らげて俺に手を差し伸べた。
「何だ?」
「いや、素晴らしき俺が託宣をしてやろうってね。憐れな男にさ。」
俺が彼の差し出した手を握ると、彼は俺の手を握り、そのまま自分の口元に引っ張り、なんと俺の手の甲に唇を当てたのだ。
俺は何をするのかと目を丸くしたが、ジュリアンはそんな俺を笑い飛ばした。
「ドキッとしただろ?お前達に足りないのはこれだよ。お前達の関係は熟年夫婦みたいじゃないか。改めてやろうとするには、ハハ、ちょっと気恥ずかしくなったんだろ。」
俺はその通りだとジュリアンに笑い、さすが親友だと俺が彼に感謝を抱いたそこで、ジュリアンはろくでなしの軽薄な男を出して俺を幻滅させた。
「可哀想な新婦とやれなかった新郎君。義理のお兄ちゃんが代わりにいかせてやろうか?」
ジュリアンは掴んでいる俺の手を引っ張り俺をベッドに転がし、俺のガウンをはだけさせるや、俺の下半身へと唇を運んだのだ!
俺が慌ててジュリアンの部屋から逃げて来た理由であり、これは絶対にティナには言えない。
「ジュリアンは大丈夫、だった?」
「ひゃあ!あ、大丈夫!」
ティナは俺の狼狽に目を丸くして、それから俺の腕の中でくすくすと嬉しそうに笑った。
「こんな風なダンって初めて!」
笑うティナに俺の心は安らぎ、そして再びジュリアンの言葉が蘇った。
――ドキッとしただろ?お前達に足りないのはこれだよ。
俺は目が覚めた様になり、ティナから腕を解いた。すると、おや、ティナは俺から離されて心細そうな表情になったじゃないか。俺はそんなティナが可愛いと思いながら、彼女の両肩を両手で掴んだ。
俺はまっすぐに彼女を見つめ、彼女はいつもと違う俺に期待の籠った目を向けた。
そうだ、やっぱりこれ、なのだ。
俺達は出会いと付き合いから始めるべきだ。
「ティナ。」
「は、はい。」
「デートでもしようか?」
ティナははいと言ってくれたが、俺は彼女の声が聞こえていなかった。
デートを取りやめてベッドに連れて行きたくなるくらいの、彼女はとっても嬉しそうで輝いた笑顔を俺に向けてくれたのである。




