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兄とダンと残されたモブ

 ダンは素早く兄のもとに駆け寄った。


「ありがとう。メイヤー。せっかくの貴重な休みにすまないね。」


「いいえ。どうせ休みといっても一人ですから。あの、先輩の部屋は?」


「ああ、俺が運ぶ。って、臭い。腐ったどぶの匂いがするよ。済まなかったね、こんな面倒を掛けてしまって。ああ、こいつは風呂で洗ってしまわないといけないな。」


 ダンはメイヤーと呼んだ青年から兄を奪い取るようにして自分に持たれかけさせると、そのままサクサクと兄を部屋へと引き摺り始めた。

 あ、足を止めた。

 彼は私を見返し、まあ!軽くウィンクして見せたわ!


「先に食べちゃって。ええと、俺の分はそこのメイヤー君に渡しちゃって。ねえ、君は朝ご飯はまだなんでしょう?」


「ま、まだですが、俺も先輩を運びます!」


「いいよいいよ。裸に剥いて洗うとこからしなきゃいけないようだからね。それを後輩にしてもらうなんて、先輩としてあんまりにも情けなさすぎるよ。」


「心遣いありがとう、ダン。俺のケツの穴も君にだったら安心して任せられるよ。」


 あ、兄がダンに後頭部をぱしんと叩かれた。

 そしてダンは肩に寄りかからせていた兄を持ち上げて肩に乗せ上げるという、麗しきジュリアンが粗大ごみに出される布団みたいにしか見えない担ぎ方に変えたのだ。

 そしてそのまま彼は兄の部屋へと消えた。


 この家はバスルームが二つある。

 一つは私の部屋に付随している私専用のもので、バスタブもあるが小さくこじんまりしている。

 もう一つは兄とダンの部屋を繋げる形で存在する大き目のバスルームだが、そこにはどっちの趣味なのか大きなバスタブがででんと存在する。

 男二人が入っても平気そうなくらいの大きなバスタブが。

 あんな風に酔った兄を、いつもダンはあそこという二人のバスルームで介抱するのだ。


「えっと、俺は帰ります。」


「いえ、ちょっと待って。食事をしていらして。ダンもすぐに戻るし、兄もすぐにきれいになってあなたにお礼を言えるぐらいになると思うの。」


 私はそれ以上言えなくなった。

 メイヤーが私を見る目が、怖い、と感じてしまったのである。


「君はいいね。君の立場は羨ましいよ。何もしなくても全てを手に入れる事が出来る。」


「あの。」


「いいね、君はアークロイド少佐と結婚できて。おめでとう。」


 メイヤーはそう言うと身を翻し、後ろも振り返らずに部屋を出て行った。


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