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契約結婚しませんか?

「契約結婚しませんか?」


 私の言葉に驚いて見せたのは、兄の親友で、兄と私の同居人のダン、だ。

 短く刈られた黒髪に眼光鋭い黒い瞳、そして大柄な体格に真面目そうな顔という、軍人そのものの外見の美男子でもあるが、今の彼はよろよろのTシャツによろよろのカットソー素材のパンツ姿で、私の兄の汚した部屋を一緒に片付けているという、人には見せたくない格好である。

 埃除けのマスクだってしているのだ。


「俺と?君が?」


 馬鹿にするような声音じゃない事に私はすっごく安心した。

 それどころか呆れている声でもなく、本当に驚いた、という声だった。

 吃驚するだろう。

 ダンと似たような格好をした私なのだ。

 結婚を口にするには小汚い格好すぎる。


 でも、同じ格好のダンがとっても素敵に見えるのだからと、私は親切で優しい大男にもう一押しをするべく、自分の幸せを叶えるための台本に書いていたもう一言を彼に言った。


「あなたは道ならぬ恋をしているって言ったじゃない。心に秘めて、もしかしたら一生叶わないかもしれない夢だって。だったら、私と結婚してくれませんか?私は兄が結婚したら行く場所ないし、こうして汚し屋の兄の汚し物をいつも一緒に片付けてくれるあなたとなら生活が楽しいと思うの。」


 兄は先日婚約した。

 六年前に父が亡くなると、兄は私を引き取りダンと一緒に育ててくれたが(自分なりには兄が育てて?だが)、そんな兄だからこそ今までと変わらず家にいて良いと言ってくれているけれど、兄が新婚生活する場に妹としてはいたくはない。


 だって私は、ダンがいない生活こそ考えることが出来ないのだ。


 ダンは兄の結婚と共にこの家を出ていく。

 私は彼を愛しているのである。

 そして、士官学校から兄と一緒だった兄の親友のダンは、どうやら兄に恋をしているらしい。

 確かめた事は無いが、彼の視線は常に兄を追い、兄の先回りの行動を取っているのだ。

 それに、一緒に住み始めた頃に三人で撮った写真、それを見つけたと見せたら彼は涙を零したもの!


「申し訳ないが、出来ない。」


 兄は金髪に青い目の見惚れるぐらいのハンサムで、その妹の私は目鼻立ちが似ていると言っても金髪には成り切れなかった茶色の髪に青とは言えないぼんやりとした暗い色の瞳だ。


「兄さまに似ていれば良かった。」


「似ていたら男顔だよ。君はそのままでいいって。」


「あなたは結婚してくれないじゃ無いの。」


 ダンははあっと大きく溜息を吐くと軍手を付けている手で顔を撫で、そんなことをしたら顔が汚れてしまうだろうに気が付かない時々鈍感な男は、意外と考えが深かったというか、男だった。


「俺は結婚するなら本当の結婚しか嫌だ。君は俺と夫婦生活が出来るの?」


 あなたとそれがしたいです!って大声で言ったらどうなるのだろうか?

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