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一歩の前に
それから、新島が赤髪のキャラクターと会うことは無かった。
会えなくなった理由を知る術のない新島にとっては、白紙のノートをめくる様な日々が続いた。しかし、そのノートが落書きされる日々が来るよりはマシだったかもしれない。
一度得た快楽を失うと、再び求めるのが人間の性。新島はゲームを楽しむことから女性に会うことへ目的が変わっていた。
しかし、言葉が分からない新島を理解してくれる人が早々現れるわけもなく、半年もの時が過ぎた。
現実世界では、高校受験が控えており、人生の選択肢を迫られていた。
以前熱中していたピアノの熱はゲームに移り、学校生活は何も変わらない日々。このまま高校へ進学しても明るい未来は見えてこなかった。中学校生活で唯一変わったのはゲームを始めたこと。そのゲームの世界も変わらない日々に溶け込み始めていた。
何かを変えたい。
新島には、心の奥底から沸々と何かが沸き始めていた。