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会話
新島のキーボードの音だけが響く世界とは裏腹に、液晶の中では派手なキャラクターが縦横無尽に飛び交っていた。
新島は、会話が出来なくても十分だと思えた。
ある日、新島はいつものように言葉のような記号を打っていた。
「えrhふぉえのc」
どこからともなく、チャット欄に一つの記号が表示されていた。
「けrんえw?」
新島は目を丸くした。
自分でも分からないような記号を連ねていたが、それを操るもう一人の人物が現れたのだ。
新島は固まったままだ。
「えrふぉp>」
さらに会話を続けてくる。
キャラクターは赤髪の女性だ。実際の中身は分からないが、学校では女性と全く関わりを持たない新島にとっては、人生で初めてオスとして高ぶった瞬間であった。