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きっかけ
新島は健康的な胎児だと医者から言われていた。
新島の母も健康体そのものであり、出産の心配事は特になかった。
いざ、出産を迎え、無事に終わった。3258gの元気な男の子だった。
母は、元気で優しい子に育ってほしいと願いを込めて優気と名付けた。
しかし、出生5日後に悲劇は起きた。
この時期には珍しい、脳出血を引き起こしたのだ。
すぐに処置が行われた。
医者や看護師などの迅速な対応のおかげで一命は取り留めたが、重度な後遺症は残るだろうと言われた。
それは小さい頃には症状がはっきり分からないが、徐々に大きくなるにつれ分かるだろうと、医者から言われていた。
ーーーそして、それから16年後。
未だに言葉を理解できない、言葉を発せられない新島優気は、重度の混合性全失語症だと判明した。
言葉ない世界で生きることを余儀された新島に待っていたのは、言葉の世界からの暴力であった。