街には密偵がいるものです
市場は一段と騒がしくなっていた
ーどけ!何をしている!
ー警備隊だ!
ーこっちこっち!!
「騒ぐな!帝都の市場で何を騒ぐ!」
レイピアのような細い剣を掲げる男達
警備隊の到着だった
クレーナイは助かったとばかりに警備隊に泣きつく
群衆が騒ぐ
ーあそこのにぃーちゃんにこいつらが絡んだ
ー悪いのはドラゴンキラーの奴らだ
ーあの若旦那すげぇー強いな
警備隊隊長らしき人物が寄ってくる
「御面倒だと思うが、お名前と身分などありましたら、伺いたい」
「俺か?イツミと言う。一応ギルド会員だ。ランクは7。こっちは俺の連れ合いでボルジュー。ランクは5。それでいいか?」
ポケットから会員証を見せる
「ほー。その若さで。失礼した。こっちのドラゴンキラーもギルド会員だが、どうする?ギルドに連れて行くか?」
「いや。そっちで対応してもらえるとありがたい。昨日帝都に来たばかりだから、揉め事は避けたい」
「承知した」
絡んだ奴らは警備隊に連行された
ーやるなにぃーちゃん!
ーうちに寄ってきな!奢るよ!
しばらく周囲で騒がれたが、ザワザワと去ってくれた。肉巻き屋の親父さんがさばいてくれたおかげだ
「助かった。土産に肉巻きを買いたい。10個くらい頼む」
「わかったよ!大銅貨3枚だが、2枚で構わないよ!」
肉巻き屋の親父さんがそう言って、ゆっくりと耳元に近寄る
…若旦那。あまり目立つと色々と面倒ですぜ。子爵様から政治利用されないように言われてますのでね
やはり密偵の類か…
ただの露店店主にしては仕切り方や喧嘩の止めなど間合いが良すぎた。大方警備隊を呼んだのも、この親父さんだろ
…子爵につなぐ場合は親父さんか?クレアさんか?
…あっしで構わないですよ
「さー焼けました!大銅貨2枚になりやす!」
「あぁ」
大銅貨を渡し、色々な荷物を持ち、新居に戻る
なんだか疲れたな…
「ここが…イツミ様と一緒に……
早くご飯にしましょう!
私準備します」
テキパキとボルジューが食事の準備をした
肉巻きと野菜のスープ、パンなかなか手際が良い
スープを食べる
ズズー
野菜の甘い旨味が広がる
「ボルジュー旨いな!」
「ホントですか!?嬉しいです!」
ボルジューは満面の笑みで俺を見つめている
二人の生活が帝都で始まった
俺はただその幸せを感じていた