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初戦闘は森林で

7話目

「目視3!」


 フランは声を飛ばし、方向を指差す。そして、直ぐにフランが俺の後ろへ下がった。


「敵は、ゴブリン2コボルト1ね。戦闘継続よ」


 アルンから指示だ。見ただけで、瞬時にモンスターの名前が出てくるって事は、頭が余程良いのかと思ったが、アルンは戦ったことが無い。それなのに、戦闘を続行するかどうかを、一瞬で判断したってことは、アルンの奴鑑定系の技能持ちか。


 アルンとフラン、戦闘以外で有能過ぎだな。扱いは酷でぇもんだが、結構良いパーティに入れたもんだ。ありがとよコタリー。



 先ずは、注意を引くか。


「こっちだオラァ!!!」


 勿論、龍の咆哮は乗せない。俺は学習する筋肉なのだ。



 ゴブリン達が、一斉に俺に襲い掛かってくる。当然の如く、三体の攻撃を、同時に捌けたりしない。やる気と元気と、気合いは一人前だが、戦闘はドが付く程の素人だ。


 敵の攻撃を上手く盾に当てて弾いたり防いだりする事が出来ず、闇雲に斧を振り回したり、腕力にものを言わせて盾で薙ぎ払ったりと、些か戦闘してるとは言い難い状況だ。


 まあ、ミューが来るまで持ちこたえれば、最低一体は受け持ってくれる。幸いな事に、ゴブリンの棍棒やコボルトの牙は、殆ど痛くない。多分、風呂に入ると後悔するレベルの傷だけだ。


 ゴブリン達と戯れに傷付けあっていると、後方の安全確保が出来たらしく、直ぐにミューが飛んできた。飛んできたと言っても、お空をフワッとした訳では無い。普通に、後方から走って来た。


「……お待たせ。私が来た」


 お前以外が来る予定は、元から無い。が、俺はいい人なので、心の中でしか思わない。


「おう!頼むぜ!」


 ミューがゴブリン一体を引き連れ、戦闘に入った。さっきから、一向に斧がぶち当たる気配の無い俺から見ると、ミューはかなり戦えている。


 小刻みに当てては、下がってを繰り返している。俺は、チマチマしたのが苦手なので、あの戦い方は無理だ。


 こう、1発どっかーんと、斧をドタマにぶっぱなして、気分爽快ゴブリンの挽肉の完成ですって感じにしたい。



 二体になった事で攻撃を受ける回数が減り、痛みもそれ程無く、戦闘に目や身体が慣れてきて、上手く盾で受けれる回数が増えた。コレなら楽勝だ。


「ディル。貴方さっきから、ずっと攻撃を受けてるけど大丈夫かしら?」


 ふと、アルンから声をかけられた。


「大丈夫だ、こいつ等そんなに強く無い。ミューの方を、気にかけてやってくれ。俺の回復は戦闘後で良さそうだ」


 そう言うと、アルンは分かったとばかりに、ミューの方へ身体をズラし詠唱を待機している。



「オラオラオラオラオラ!どーした!よえぇぞ!足りねぇ……全然足りねぇ!!!真面目にやってんのかクソモンスター共が!命乞いをすれば、せめて一撃の元に屠ってやるぜ!」


 流石にそろそろ鬱陶しくなって来たので、力強く叫ぶとコボルトの動きが鈍る。


 コボルトとは、二足歩行の犬みたいなモンスターで、気が小さく臆病で、大体自分より強いモンスターに使役されている。ウルフからの進化だと言うのが定説で、二足歩行の為ウルフより遅く、脳が少しだけ発達したため、爪が退化し手先が器用になった。


 しかし、武器を用いるが脳がそこまで、脅威的に発達した訳では無いので、ウルフから機動力と攻撃力を削いだようなモンスターになってしまった。


 実際に、コボルトとウルフを戦わせるとコボルトが負けるし、限定空間で無ければ、いの一番に逃げる。因みにウルフもコボルトと同じ☆1のモンスターだ。ゴブリンは☆2で、☆3までの難易度がFランクの依頼とされている。



 そんな訳で、先程俺の気合いに当てられたコボルトは、驚いて脚を止めてしまい、必然とゴブリンと1体1になる。このチャンスを逃さない優秀な筋肉である俺は、攻勢に出る。


 この状況なら、余り器用じゃ無い俺でもいけるはずだ。盾を地面に捨て、常人の約2倍の位置からゴブリンの頭上に向け、俺の体躯に見合った斧を振り下ろす。


 完璧に入った。ゴブリンの頭が見事にスッパーンと割れ、いい感じに衝撃で木まで吹っ飛び爆発四散した。いや、嘘ついた。爆発はして無い。


「よっしゃぁ!!!どうだ雑魚が!」


 最高に気分が良い。超絶ハイだ。俺こそが天才無敵の人龍族の王かもしれない。どうでもいいが、人龍族の一番偉いやつは長老なので、王とか居ない。


 ミューも俺に次いで、ゴブリンを八つ裂きにしたようだ。一見無表情だが、よく見るとスッキリした顔をしている。


「後はコイツだけだ」

「……後ろから回り込む」

「おう!」


 先程粉微塵にしたゴブリンより、格下のモンスターに挟撃で当たる。そう、要するにずっと俺らのターンだ。


 結果の詳細は、余りに惨たらしい為割愛するが、ミューが上手い具合に、討伐証明部位だけ残して細切れにした。


 今回戦闘を一言で現すなら『圧倒的ミンチ』だ。もし、敵に生き残りが居れば、生涯トラウマは確定だろう徹底具合だ。


そのうち俺が、ミンチマスターを名乗る日も遠くない。いや、絶対名乗んないけど……カッコよくないし。どうせなら、ドラゴンスレイヤーとかがいい。なんとなく言わなきゃいけない気がするので言っておくが、別に同族殺しとかではない。人龍族は龍とコミュニケーションを、とれたりはしないのだ。


 特にミューは心得ている。倒したゴブリンが、生きてないか確認する為に、なんの躊躇もなく頭を潰した。流石だ。


「……ふう。最初はどうなるかと思ったパーティだったけれど、終わってみれば結果は上々ね!」

「ふぃ~結構私はバクバクだったよ~!」

「……以外と大変だった」

「お疲れさん」


 初戦は、結果だけ見ればなかなかに好調な滑り出しだ。


「ミューとディルは回復いるかしら?結局、戦闘中は使わなかったのだけれど」


 アルンも流石に初戦闘で気疲れしたのか、素直でちょっと優しい。


「……大丈夫。か擦り傷」

「俺も全く問題ない」


 それを聞いたアルンは、ホッと胸を撫で下ろし、こう告げた。


「少し休憩して祈りを捧げたら、次の集団を探しましょうか」

「そだね~!」


 少し話し合うと、全体的に消耗が少なく、探索を継続する事にした。



 討伐証明部位を集めきった俺らは、モンスターがアンデット化しないように1箇所に集め焼いた。実はここに、パーティに神官が必要な理由がもう一つ有る。


 身体は残ってなくとも、怨念だけが集まって、また別のアンデットモンスターになったりするので、そうならないように神官が祈りを捧げるのだ。


 アンデットとは非常に面倒なモンスターで、肉体が残ってればゾンビになり、骨しか残って無くてもスケルトンになり、怨念だけが残ってても集まって強力なアンデットモンスターになったりと、ちゃんと処理しないとろくなことが無い。


 どれだけ強いパーティでも、戦闘後の処理をきちんと行わないパーティは、非常に他の冒険者から嫌われる。宿側からも厳しい注意や繰り返すと処分が有るので、よっぽど良識にかけるパーティ以外は皆やる。


 古戦場や、スタンピードの様な、明らかに個人では浄化が間に合わないとされる場合は、仕方なくお咎めは無い。代わりに、教会の強い浄化の魔法が行使できる、司祭以上の聖職者が集団で浄化に当たるそうだ。



 そんな事を考えていると、アルンが焼け跡に向かい、跪き浄化の魔法を唱えていた。


「天にまします我らが神よ、哀れな異形たるものの御霊をお救いください。願わくば、聖なる者として生まれ変わらんことを!『フェブルオ』!」


 アルンが天に跪く姿は、非常に洗礼されており、一種の芸術性と神秘性まで感じる。マナや魔素を全く感知出来ない俺でも、アルンの周りから空気が澄んでいくような気がする。


 そのまま天使に導かれてしまいそうな程、荘厳な雰囲気を纏う彼女の祈りは、耳に心地よくどこまでも深い青に溶け、そして儚く消えていくのだった。


ただ、ただ、ゴブリンをミンチより酷でぇや

にしたかっただけの人生だった。(嘘)

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