道中、交易都市
28話目
「なぁ、次の冒険者ギルドがある、大きな街ってどれぐらい掛かるんだ?」
「そうね。10日から12日と、いったところじゃないかしら」
雨降ったりとか、モンスターとの遭遇戦とか、諸々を考慮すると、もっと見といた方がいいかもな。
「遠いわね。一度ボア・モアまで戻った方がいいんじゃない?」
問題は、この命名「コボルト・スカーレット」である。
新種のモンスターが出た時は、ギルドで適正難易度と名前を決めるので、この名前は便宜上一応ってアルンが言ってた。
「なあ、シェーネ。便宜上ってなんだ?」
「呼ぶのに不便だから、取り敢えず名前を付けときましょうね、その方が都合が良いでしょ。ってことよ」
「お、おう。ありがとよ」
コイツ馬鹿なの?って顔は止せ。難しい言葉を使う、お前らが悪い。これ絶対な。
新種のモンスター、モンスターの異変等は、報告すると報酬があるそうだ。義務では無いんだが、怠るとギルドからのパーティ評価が下がるらしい。
流石うちのアルンちゃんとシェーネちゃん。小難しい事は、なんでも知ってるぜ。
新種の報告しない事は、ダイレクトに死亡率の増加に繋がるから、当然といえば当然か。
義務化されて無いのは、仕方ない。しても、覚えられないからな。うちのパーティみたいに、一度触れたものは、興味の無いもの以外覚えてるような、規格外が居るわけじゃないしよ。
頭の良さをギルド評価基準にしたら、今居る冒険者三分の二は辞めるだろうな。
読めない、書けないはざらだし、俺よりほんの少しだけ頭が良い程度の集団だからな。
「どうしてもって事じゃないならぁ〜依頼優先したらぁ〜?」
「俺もそれがいいと思うな」
戻ったら、食糧も水も補給した意味無いしな。
「この先は森ね。直線ルートか、迂回ルートか」
「迂回?」
「うかいって何?」
「改めて言うのもなんだけど、このパーティ馬鹿ばっかりね」
「……迂回は、遠回り」
「なら迂回ルートだな」
「迂回ね」
「……迂回ルート一択」
「いえ、森を通りましょう」
何言ってんだこいつ。アルンのやつ頭良過ぎて、一周回って馬鹿になったのか。護衛依頼で、危険な森通る奴があるかよ。
「行けるわねフラン」
「アイアイサー」
「……アルンはどう見ても女」
そこツッコムんだ。どうも、ミューはポイントが分かんねーな。
「ん〜そっちは、大きい動物が居るからぁ〜そっち!」
「気持はわかるんだけどよぉ」
「せめてもう少し、わかり易く言って欲しいものね」
「しっかし、良くこんな森の中で、馬車の通れる、敵が居ない道が分かるな」
「ふっふーん!ちょっと皆フランちゃんを舐めすぎじゃない?少なくともディルよりは優秀なんだからぁ」
「はいはい。そうね、偉いわね」
「シェーネさん。フランさん頑張ってるんですから、もう少し褒めてあげても」
「駄目よ。フランとディルは、褒めると何処までも調子に乗るから」
「アルンさんまで」
そうか、だから俺ってば、全然褒められないのねん。
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街が見えてきた。交易都市『シシュ・リーン』
街の中心を海に続く大きな川が流れており、大陸有数の大都市だ。所属はダルダバニス帝国。
ここは少し高い位置で、街もデカイから、意外と時間かかりそうだな。
流石に目の前街が見えてて、テント寝も嫌だし、強行するか。
街道に入ってからは、何も出てないし、ちょっと無茶してもいいだろう。
「ねぇ〜ディル〜」
またフランか。馬車の中暇なのは分かるが、事あるごとに、しょうもないこと聞いて来るんだよな。ちょっとは見た目通り、おっとりお淑やかにしても、いいんじゃねーですかい、フランお嬢様。
「リザードマンと人龍族って何が違うの?」
ぶっちゃけ、どっちも見た目モンスターじゃん?ってか。俺もそう思う。
「色々細かい事は全部省いて、滅茶苦茶大雑把に言うと、リザードマンはトカゲで、龍はヘビだ」
「えっ!?ディル、ヘビなの!キモッ!!!」
「キモい言うな、喰い殺すぞ」
「うへぇ〜だってヘビなんでしょ?ニョロニョロ系が好きな女の子なんて、そうそういないよ」
「大きなお世話だっつーの」
「じゃあ、ラミアとか近いの?」
「いや、近くないけど」
「ラミアってヘビでしょ?」
「いや、知らんけど、見た目的にはヘビだな」
「じゃあ、仲間じゃん!」
「待て待て、ゾンビだって人族に近いけど、アンデットだろ?つまりそういう事だよ……?」
どういう事だよ。自分でも良くわかんねーぞ。
「?」
「人を喰う二本足のドラゴンっぽいのが、リザードマンで、人喰わない二本足のドラゴンっぽいのが、人龍族だ」
「う、う〜ん.....???」
「リザードマンより、ドラゴニュートのが、俺らに近いけどな。見た目はそっくりだし、リザードマンと違って翼も生えてるしな」
「じゃあ、見分けつかないね!」
「いや、なんとなく分かる。理屈で説明しろって言われても無理だが、なんとなく見分けがつくんだ」
「意味わかんな〜い」
「お前らだって、ハイエルフか普通のエルフか、見ただけで分かるだろ」
「バカにしてるでしょ!分かるんだからぁ!」
「でも、他の種族からは、見分けられないだろ?」
「えっ!そうなの!?」
「そうだ。普通の奴に、エルフとハイエルフを見分けるのは不可能だ」
「ほぇ〜」
「……アルンに聞け、アルンに」
「はぁ〜い」
フランとどうでもいい事話してたら、着いちゃったよ。本当に暇持て余してんだな。つーか、他の奴みたいに大人しくしてろよ。
「あら、着いたみたいね」
フランがどれだけ喋りかけても、無視を貫き、本を読んでたアルンが、やっと顔を上げた。馬車の振動が止まったからだな。
俺の事背もたれにしてるんだから、お代替わりにフランの相手をしてくれても、いいんですのことよ。
御者と背もたれと、お守りを兼ね備えるとか、酷使され過ぎだろ。
まあ、そんな事言えば「私のような、美人の背もたれになれたんだから、泣いて喜ぶべきよ」とか「背もたれにしては、硬すぎるわ。私の天女の様な背中に、傷でもついたら、どうしてくれるつもりなのかしら」とか、言い出しかねないので、口が裂けても言わないけど。
「それにしてもディル。貴方、背もたれとしては不合格ね、硬すぎるわ。今度から、腕にクッションでも着けときなさい」
何も言わなくても文句言われるとか、アルン外道過ぎて尊敬するわ。もう、引くレベル。
「ヘイヘイ。悪ぅござんした」
分かればいいのよ。とか、言ってどっか行きやがった。おい、馬車どうすんだよ。
「アルンどっか行っちゃったね〜」
「自由過ぎるわね。流石と言った方がいいのかしら」
「全然流石じゃねーよ。俺より団体行動苦手とか、ヤバいぞ」
「……私も割と自分勝手だけど、アルンには負ける」
「おい、起きてたならそう言え。お兄さん今、すっごいビックリしたから」
「……オジサン」
「…………お兄さんだ」
「……おじいちゃん」
「肩に乗せてやらないぞ」
「……それは困る。許してお兄ちゃん」
「ディルお兄ちゃんとかやだな〜着替えとか覗かれそう」
「ディルさんがお兄ちゃんだったら、とっても頼りがいが有ると思いますよ」
「セレーネさんは分かってるな。その通りだ」
里でも、我儘なクソガキ共を殴り飛ばしてたからな。いや、毎回最終的に村長に怒られるのは、俺なんだけどよ。納得いかねーぜ。
「ただあれだな。ミューにお兄ちゃんって呼ばれても、可愛げが無さすぎて、ゾッとするな」
「……もぐ」
「止せ。俺が悪かった」
「……許す」
許すなら、武器で俺の事ザクザクするの止めてくんない?血は出てないけど、地味にウザい。
「取り敢えず、宿でも探しましょうか」
「おい、シェーネ。どうでもいいけど、アルンにいちゃもん付けられないようにしろよ」
「それは無理」
即答かよ、諦めんな。気合でなんとかしろ。まあ、気合でアルンの機嫌取れりゃ、苦労しないんだけどよ。
「正門横に馬車止めさせてもらって、宿探しましょうか。誰か一人残ってもらうことになるけど、どうする」
「私が残りましょうか?」
「そしたら、自然と俺も残るな」
「よくわかんないけど、依頼人に荷物番させるのってどうなの?」
「根本的に間違ってると思うわ」
「……どう考えても私が適任。眠気に負けたりしない」
「どう考えても、お前が目を覚ましたら、馬車ごと連れ去られてました。ってオチしか見えないんだが」
「……ディル。まだまだ。私が本気で寝たら、何してもあんまりに起きないから、死体と間違われて、その辺に捨てられるまでがオチ」
「起きろよ」
「……この世で私が勝てないのは、睡魔だけ。……多分」
何それ、決めゼリフかなんかのつもりなの。最高にダサいぞ。決め顔のつもりだろうけど、半目で決め顔って割と無理あるな。
「す、凄いですね?」
無理に褒めなくていいんだよ。セレーネさんの、その優しさは買うけどね。
「じゃあ、フランが残ろっかぁ?」
「お前そのまま、人攫いに持ってかれるじゃん」
「え〜大丈夫だよ〜多分?」
「じゃあ、私が残るのかしら」
「……それだと、宿を探す人がいない。アルンが居れば、宿探しは任せたのに」
「ミューが探せばいいだろ」
「……無理。面倒。喋り過ぎて、もう、疲れた。眠い」
お前も充分、アルンとどっこいどっこいの、我儘振りだぞ。
「じゃあ、私が宿探してこよっか」
「ダメだ。俺とフランは、頭が悪いからな」
「あれ、もしかしてフラン、ディルと同じのっぴきならないバカ枠だと思われてる?」
フランてめぇ。俺を進退窮まる究極の馬鹿だと思ってやがるな。
「貴方、1人で旅してた時どうしてたの」
「さあな、普通に騙されたり、誤魔化されたり、してたんじゃないか」
「それでよく……」
「まあ、高かったら、脅かして安くさせたりしてたから、五分ってことで」
「普通に最低ね」
「無視されたぁ!?!?」
ヤダな〜生きる為の知恵って言って欲しいね。全部力押しだけど。
「……私天才」
おう。いつもながら、唐突だな。
「じゃあ、俺も天才」
「……ディル天才っていうか、変態」
「寧ろ、ゴミ」
「シェーネちゃん?ちょっとキツくない。俺なんかした」
っつても、主に変態方面だと、ゴミ呼ばわりされる心当たりしかないんだよなぁ。心当たり無い事が無い、完璧過ぎる変態だしな。エロ変態スケベドラゴンだと、胸を張って言える。
仲間を襲うと、後でアルン何言われるか分からんし、気まずいから、俺は裏路地で常連だったりする。金が有れば、ちゃんと娼館行くんだけどな。
仲間が皆美女で、手出しちゃいけないとか、ただの拷問だろ。
この街では、アルンに金借りてでも、娼館に行くと決めている。というか、行かなければならない。
超絶好みなセレーネさんと、ずっと同じ空間で過ごしてきて暴発寸前だ。
しかし、セレーネさんに嫌われたら死ぬしか無いので、襲う訳にもいかないし、良く我慢したよ。俺超偉い。
仲間とセレーネさん以外には、これからも、ガンガン手を出してく所存。
「で、ミューは何を思い付いたんだ」
「……私は寝たい。ので、私とフラン、シェーネが荷物番。ディルはセレーネさんと一緒にいたい。だから、2人で宿探し」
「お前天才だな」
「……ッフ、知ってた。寝ることに関しては無敵」
どんだけ眠いんだよ。街に入る直前まで寝てたろ。いやしかし、ミュー様天才。一生崇めちゃう。
「では、セレーネさん。僕とデートしていただけませんか」
「はい、喜んで」
片膝をついて、手を差し出すと、その手をそっと取ってくれた。
ただの宿探しだけど、ちゃんと乗ってくれるセレーネさん天使だ。笑顔が素敵。俺なんかでも、聖龍になれそう。
「私も街見たい!連れてってよ〜いいでしょ?」
「空気を読め、空気を」
「やだ〜!私も行くったら行くの!」
「断る」
「やだ〜!!!」
「お前いい加減にしろよ」
「いいじゃないですか、連れてってあげましょうよ」
「まあ、セレーネさんが、そういうなら」
「ほんと!?セレーネ大好き!」
あ、おい。クッソ、セレーネさんに抱き着くとか羨ましい。離れろ。俺だって、まだ抱き着いたこと無いんだぞ。
それに頭まで撫でられて、なんたる妬ましさか。許せん。許せん蛮行だぞフラン。後で覚えとけよ。
「むふ〜いひひ……べーっだ」
「きゃっ!……もう、仕方ないですね」
あんのクソエルフ。胸を堪能し始めやがった。ずるいぞ!それが出来るなら、俺だって女に産まれたかった。
「てりゃ、レッツゴー!」
セレーネさんから、軽快に三ステップで乗りやがった。その身軽さ、他に活かすこと沢山あんだろ。
「降りろ」
「いーやーだー」
「手ぇ繋いでやるから」
「無理。キモい」
「降ろすぞ」
「じゃあ、ディルさんの手が余ったみたいなので、私が繋いであげますね!」
「フラン良くやった。後で何か奢ってやる」
「わーい!」
フランを頭に装着して、右手にはセレーネさん。両手に花だと、モテモテっぽいけど、頭に花だと馬鹿っぽいな。
フランの見た目が子供だったら、子連れの夫婦に見えるに違いない。そんな妄想が一瞬頭をよぎったが、どう見ても人攫いにしか見えなくて、通報される未来しか見えないな。フランが大人で良かったよ。
「ねぇ〜ねぇ〜」
「頭の上でうるせぇぞ。なんだ」
「お腹空いた」
「はぁ?じゃあ、何か食うか。セレーネさん。何が食べたいですか」
「ん〜甘いものがいいですね!」
セレーネさんは、食べ物のチョイスすら可愛いなぁ。
「私も!私も!」
コイツは可愛くないなぁ。
十分ぐらい探して、丁度いい所にデザートの店があった。ここなら、セレーネさんも、満足してもらえそうだ。
「にゃ〜これおいしぃ!」
「本当に美味しいですね!」
フランが美味しそうに食ってる。なのにセレーネさんと同様、食べ方が上品なのが、凄く非常に、とっても遺憾に納得いかない。
フランがお嬢様だって再認識したけど、生まれとか理不尽過ぎるだろ。
「ディルにも1口あげよっか」
「いらん」
「美味しいですよ。お1つ如何ですか」
「とても美味しそうですね。いただきます」
「ちょっとぉ!セレーネさんと私の、同じメニューなんだけど!!!」
「ちょっと何言ってるか分からない。セレーネさんが食べさせてくれるのと、フランが食べさせてくれるのなら、龍の鱗と雑草ぐらい違う」
「誰が雑草だし!」
なんつーかこう、ときめかないんだよ。分かるだろ。セレーネさんのは超ときめく。これが恋ってやつですね。刺身にすると美味いらしい。これが鯉ってやかましい。
うん。すげぇ甘かった色々と。
いや、やっぱセレーネさんは良いな。可愛いし完璧だ。めちゃくちゃ優しくて、俺の事全然好きじゃないのが、はっきり伝わってくる。
百戦錬磨の振られ王である俺には、手に取る様に分かるぜ。こう、なんつーか避け方が上手い。モテる女って感じだ。
アルンに振られたら、多分それはもう、俺みたいのだったら手酷く振られることだろうから、二度とお近づきになろうとは思わない。
けど、セレーネさんに振られても、本当に仲のいい友達としては居てくれそうな感じがする。
ここぞとばかりに、後一歩の躱し方が神憑り的に上手い。
……バッサリそれはもう、木こりの方ですか?ってぐらいバッタバッタと薙ぎ倒してくれるアルンより、未練が残りまくりそうなセレーネさんのが、実は悪女かもしれないな。
やっぱいい女ってのは、ギリギリのところで、マスターモンク並にひょいひょいと躱してくれるもんだ。手に入らないから本気になれるし、誰のものにもならないから口説いてて楽しい。
マスターモンクとハイエストグラップラーと、どっちが強いんだろうな。どっちも最高クラスの拳闘士で、速く重く、その拳は鉄をも貫くといわれている。
って違う違う。そんな暑苦しい話は、どうでもいいんだよ。早く宿探さないとな。
「じゃあ、宿探ししましょうか」
「え〜なんで?寝るの早くない?」
「セレーネさんもお疲れなんだろう。お前と違って繊細だから」
「あの、私達は今日の宿を探しに来たんじゃ.....」
「……?」
あっれぇ、そうだっけか?セレーネさんとデート(おじゃま虫付)を楽しむんだったような気がする。
「えっ!?あれ、私が間違ってましたか」
「多分そんなんだった気がするような〜しないような〜」
「俺もなんかそんな気がしてきた」
「あってますよね。大丈夫ですよね」
いや、どうだったかな。
…………そうだ、アルンに文句言われない完璧な宿を取らなければ。俺の方が絶対アルンより強いのに、なんでアルンってあんなに、おっかねぇんだろうな。不思議だぜ。
こう、怒らせなくても、興味本位で解体されそうなんだよな。いや、マジで。
しょうもないやり取り
「ねぇ、ディル〜お腹空いた!」
「お前さっきデザート食ったじゃん」
「デザートはべつばらってゆーかー」
「堅焼きのパンでも食ってろ」
「あれ顎痛いじゃん?」
「いや、ほら俺頑丈だから」
「え〜反則系じゃない?」
「反則の系統ってなんだよ」




