集団戦 後編 主人公がヒーローとは限らない
おぉ!やっと20話目。もっとペース良く。ガンガンいきたいものです。作戦はガンガン行こうぜ!で。
「……遅かったね。ディル」
「おう。何匹やった?俺は3だ」
「……3。でも、可愛いから私の勝ち」
何そのクソ基準。その採点方法だと、俺のスタート、マイナス三億点ぐらいから、始めないといけないんだけど。じゃあ、今の俺の持ち点はマイナス二億九千九百九十九万九千九百九十七点か。勝てるかボケェ。
「んで、どうすんだアルン?やっぱお前の言った通り、☆1.2の雑魚はそんなにいなかった」
「では次ね。弱い方に回されただけあって、幸いこっちには☆5のモンスターは居ないようね。☆3のモンスターに囲まれない様に気を付けつつ、1体ずつ撃破していきましょうか」
俺らからしたら、☆3.4は全然雑魚じゃねーんだよなぁ……
「では、フラン。主戦場からはぐれた、マナの余り濃くない、位置を探してもらえるかしら」
「ふぇ~なんでそんなとこ?」
「あら、だって主だったところの、モンスターは強いじゃない。中心から外れて、フラフラしてる、ディルみたいな、はぐれ者を相手にした方が楽でしょう」
ねぇ。それ、わざわざ俺に例える必要あった。無いよな。後、フラン。指咥えながら、ふぇ~はよせ。馬鹿にしかみえないから。
「多少強くても、中心に向かって圧力掛けた方がいいんじゃねーか?」
「5人中3人が、戦えないパーティでかしら」
忘れてた。今シェーネは、魔力が空だった。いつもより、しおらしいシェーネは、ただの美女なので、俺のヤル気を上げる役にしか立たんな。あれ、魔力枯渇した魔術師なのにめっちゃ役に立つじゃん。シェーネちゃんマジカワ。
「忘れてたんだよ。じゃあ、なんではぐれ者は弱いって分かるんだ?」
「例外は勿論有るけれど、基本的に危険度の高いモンスターは、比例して知能が高い傾向に有るは。なら、命令を聞かず、フラフラしてるのは、弱いと考えていいんじゃないかしら?わざわざフランに、マナの濃さまで指定しているしね」
流石我らのアルンお嬢様じゃて。これで、性格と、言葉遣いと、態度と、人を一々見下すのと、人使いが……龍使いが荒いのと、極寒の冷気を出すのさえ無ければ、完璧美人なんだがなぁ……いや、割とダメだなコイツ。
フランの先導の下、一番ごった返してるパーリナイなところから外れ、少し森だったところに来ている。森だったって何だろうな。まあ、要するに森と言うか、林っぽいところだ。
「お、本気で居たな」
「ふっふ~ん!ほめてほめて!」
「あ~凄い凄い」
「雑!?愛が感じられない!」
「欲しいか?俺から」
「……ごめん。いらないです」
おい。いきなり敬語は止めろ。そんなに拒絶されると、鉄の巨人で或るこの俺も傷付くぞ。鉄っつーか龍だけど。心は硝子で、十代なんだよ。年齢は百代だけどな。因みに、身長は、人族の4四歳児を縦に三人分で、体重は、リンゴで七百四十個分だ。うん。どうでもいいな。
「なんだアレ?あんなゴブリンいたか?」
「アレは、ゴブリンアビスね。魔編続よ」
「なんじゃそら。後、ゴブリンの癖に、妙にカッコイイ名前だから殺していいか?」
「文字通り、魔を編む種族よ。通常ゴブリンからは、ゴブリンしか産まれないのだけど、突然変異種で、強い魔素に曝され続け、外見まで変異してしまったゴブリンね」
待って待って。今の説明どの辺に、魔を編む要素あったの。
「魔力編んで無くね?」
「ゴブリンには珍しく、戦闘能力の著しく低い、と言うよりは、ほぼ無いのだけれど、体内で魔力を精製し、譲渡出来る能力を持っているは。アイツが、今回の戦闘を長引かせている理由ね」
スマン。ちょっとよく意味がわからないんだが。魔力を譲渡出来るゴブリンと、今回のデスマーチと、一体なんの関係が有るってんだ。
「ゼクスに供給ラインが繋がっていたとしたら、最悪よ」
「あ~なるほど。って事は、早く倒さねぇと不味いんじゃないの」
「貴方なら、貴重なものはどうするかしら?」
「そりゃあ、大事に……あっ」
「そういう事よ」
あのゴブリンアビスとか言う、スーパーゴブリン。近付けば周りに罠や、強いモンスターが潜んでるって事じゃねーか。危ねぇ。
「アレ以外に、マナの反応はあるかしら」
「ないよ~でも、罠がたくさん。うわぁ……影も設置されてるし、厄介かも……」
「影に潜む者ね。解除は可能なの?」
破滅の影だろ。急にボケんなよ。つっこみづらいだろ。
「あの数はぶっちゃけ無理」
そんなにあんのかよ。とりあえず、アルンの間違えを指摘する機会なんて、そう無いしな。言っておこう。
「影に潜む者じゃ無くて、破滅の影じゃ無かったか?」
「正しくは、破滅に至る魔差す光喰の影ね。影に潜む者は通称よ。貴方も毎回フルネームで、呼ばれたりしないでしょう?因みに影は略称ね」
お、おう。そうですね、上位鑑定技能所有者でしたね。半端な知識で、ほぼ全ての正式名称が、視えるヤツに喧嘩売った、俺が馬鹿だった。本当馬鹿。最早デストロイ馬鹿を通り越して、ジェノサイド馬鹿。
「なあ。良く考えたら、コイツ1体が譲渡出来る魔力量なんて、大したもんじゃないんじゃないか?ほっとこうぜ!」
「フラン。索敵範囲を戦場全域でやってみて。目の前のソレと同じ反応を教えてちょうだい」
「あいあい~ん~ちょっと待ってね!…………一番大きい反応を囲む様に、等間隔に設置と言うか、存在してるよ!」
「と、言うことよ」
こんな地雷タップリの中心に鎮座してる、クソモンスターが、わらわら居るのかよ。クソめんどくせぇな。
「つーかフランお前、よく分かるな?とんでもねぇ飛龍級のデカさだぜ?」
「ディルごめんね。単位が龍過ぎて分かんないよ」
そりゃお前、飛龍級って言ったら、飛龍級だろうが。なんの説明にもなってねーな。語彙力、語彙力ヘイカモン。
「つまり、俺が言いたいのはだな、飛龍はデカいって事だ!」
「違うでしょう。戦場が意外に広範囲に及んでいると、言いたいのでしょう」
そのとおりでございますよ。アルンお嬢様。察しが良くて助かる。アルンの察しが良いんだか、俺の頭が悪いんだか分からんが、多分後者だ。
「へへっ!分かってるじゃねーか!」
「さっすがアルンだね~♪」
「……はぁ。なんで、同じ言語を話してる同士で、通訳が必要なのよ」
「……だって、ディルだし」
「フランじゃ、仕方ないんじゃないかしら?優秀な私と違ってね!!」
「あ~!シェーネちゃんひっどーい!」
元気だなコイツら。一応戦場なんだよなここ。なんて、緊張感の無い奴らだ。全く、仕方ないな。
「貴方に、言われたく無いのだけれど」
「心の声に、突っ込むんじゃねーよ。なんなの?神なの?」
「神相手でも、美しさだけなら、勝るとも劣らないけれどね。残念ながら、流石の私も、全知全能とはいかなかったは」
自信家で、自信過剰だな。過ぎたるはなんとやらだが、実際アルン以上の美人を、お目にかかったことがねーんだよなぁ。正直、美の女神とかが居るとして、隣に並べても、遜色無い気がするぐらい美女だしな。
アルン程じゃ無いが、他のも見た目だけは、とんでもなく綺麗だから、コイツらが他の女の前で、謙遜したら嫌味だよな。後、パーティじゃないが、コタリーは、素朴な町娘可愛いって感じだ。地域密着型可愛いだ。
「そんな事より、この割とイカスゴブリンどうすんだよ」
「決まってるじゃない。倒すのよ」
なんでじゃ。さっき罠が多過ぎて近付けないって、話だったろうが。
「おい、結論だけ話すの止めろ。こっちは、フランと争うバカなんだぞ!」
「別に自慢することでも、胸を張って言うことでも、無いのだけれど……」
「ディルのが、バカだもん!」
「いや、流石にそれはちょっと」
「なんで、ドン引きだぁ!?!うわぁぁぁん!」
フランよりバカとか、もう私生活に支障をきたすレベル。いや、フランの場合は既に支障きたしてんな。
「本隊に合流して、理由を伝えれば、10人ぐらい、砲術士を貸してくれると思うは。本隊に行かなくても、私達4人が声かければ、男だけ100人ぐらい、集まりそうだけれどね」
「100人以上集まって、暴動になる未来しか見えないんだが?」
「……ディルと違って、私達見た目が良いから」
「おい、それわざわざ言う必要あった?」
「あははは~!」
何笑ってんだシェーネ。本気でしばくぞ。でも、シェーネ程の美女をしばくと思うと、興奮す……いやいや、俺は至ってノーマルだ。
「ちょっとディル!いつまで私の胸、凝視してんのよ!この変態!」
ヤバい。ガン見しすぎて、気付いたら視線が吸い込まれてた。
「貴方戦闘中でも、発情するの?救いようが無いはね」
「待て!厳密には戦闘中じゃないだろ!」
「げんみつ?みつ?美味しいの?」
「……厳密は、ディルから取れる」
「え!?マジでぇ!!」
「ちょっとミュー!間違った事教えるなんて可哀想じゃない!フラン馬鹿なんだから信じちゃうでしょ!」
「うえぇ!?嘘なの!?シェーネちゃん私バカじゃないんだからぁ!!」
バカな子可哀想。つーかミュー俺から取れる蜜ってなんだ。そんなもんは無いし、あったら拷問にでも使う気なのか。俺から取れるのなんか血ぐらいだろ。因みに、龍の血は燃えるように熱いと伝承されてるが、実は冷たい。理由は、灼熱のブレスを吐く個体が多いからだ。要するに冷却材代わりだ。意外と知られてない。勿論不燃性。
たまに信じられない学者が、龍種は魔力で身体を保護してるから、そんなの有り得ない。って言うんだけど、別に身体を守る器官がいくつあってもいいだろ。なんで、一つしか信じられないんじゃ。居るんだよなぁ……データを過信しすぎて、目の前で起こってる現象を信じられないヤツが。何その目、デコレーションなの。目の前で起こってるんだから、怪奇現象だろうが、超常現象だろうが、起こってる事実は変わらんだろうがよ。
と言うことで、一度本隊と合流して、ゴブリンアビス。ゴブリンカオスだったかな。カオスゴブリンかも。の報告をすると、直ぐに討伐部隊が編成された。アルンの丁寧な、説得のおかげだ。後、アルンの話しを横で聞いてたら、ゴブリンアビスでした。
砲術士を中心とした編成で、それに護衛役って感じだ。俺達『月華氷焔の盾』はアルン、フラン、シェーネは中央で指示系統の補助。俺とミューは、神の方角の護衛に付くことになった。
方角は時間に対応していて、十二時の方角が神の方角だ。方角は天辺の十二時から、この様に一周する。
神、太陽、天、王、火、水、精霊、風、地、妃、冥、月
となる。
まあ、方角を良く理解してないと、俺みたいに道に迷ったりする。フランはマナの濃淡で、分かるとか割とドラゴニックな才能だぜ。
シェーネもエレメンタルヒューマだから、フラン以上に、マナに敏感でもいいはずなんだが、サラマンダーの半精霊族だからか、火の魔素には敏感なんだけどよ、それ以外がダメダメだ。それと、エレメンタルとエレメンタルヒューマは、面白い種族特性があって、自分の産まれに対応した方角や、精霊の方角に魔術的措置を施すと、魔力が増大し、魔法の威力が上昇する。上昇量は、魔術的措置の数、精巧さ、発動魔法の階位、術者の最大魔力量に依存する。
魔素とマナ。何が違うのか、魔法が使えん俺では分からんが、厳密には違うらしい。アルンが言うには、俺が知ってても意味は無いらしいので、どうしても気になった時に、アルンに聞こう。
んで、今護衛の最中なんだが、パーティ分断とかホラーなら、死んでるところだったぜ。何が怖いって、アンデットは倒せるのに、お化けは倒せねぇんだよ。
肝心のゴブリンアビスはと言うと、フランが指定した、罠が張り巡らされてる範囲外から、砲術士達の一斉射撃で仕留めた。いくら変異種でも、所詮は元がゴブリンだけあって、雑魚だった。
配置的には、非常に見つけ辛い位置に居て、多分。フラン並の高感度のエルフや、エレメンタルじゃなきゃ絶対見つけられんかった。Dランクのレンジャーも同行したんだが、罠も非常に巧妙に隠されていて、フランが気付かなければ、普通に踏んでたってぐらいだ。
アルンの頭と、フランの直感の両方で、龍無双だ。龍無双ってのは、ドラゴン並の無双加減ってことだな!アルンが指示して、フランが罠張った建物とか、絶対入れも、出れもしない気がするので、アイツらきっと魔王軍の幹部かなんかだ。四天王とか言うやつだ。きっと、そうに違いない。
斯くして、急速に魔力供給の途絶えた、ゼクスは目出度く、Bランクパーティに討伐され、街には平和が戻ったのだった。
おかしい。俺が前線でカッコよく、「ここは俺に任せて先に行けぇ!」とか、「コイツは俺に任せろぉ!」とか言って、大活躍して、街中のカワイコちゃん達から、チヤホヤされて、パーティメンバーからも、尊敬の念を集める流れじゃ無かったのかよ。
俺の英雄譚が、縁の下の力持ちなのは、間違っている。やっぱり、一番衆目を集めるのは、ゼクス討伐の功績を引っ提げて、凱旋したBランクパーティな訳よ。今は、祝の席だ。クッソ、俺もチヤホヤされたい。後、酒きれたんだけど。
「はよ持ってこいやぁ!ヤケ酒じゃぁ!」
「ね~ディル~街には、被害が無かったのに、なんでそんなに荒れてるの?」
「ピンチに自分が、新たな力に目覚めて、ゼクスを1人で討伐する気だったみたいよ」
「ディルってバカなのかしら?」
「……シェーネ。どう見ても、あの顔は馬鹿」
「うるせぇ!俺だってなぁ!可愛いウエイトレスさん達や、女冒険者達に、チヤホヤされたかったんだよ!」
「フランちゃんが、チヤホヤしてあげよっか?」
「見た目は120点だけど、中身がなぁ……」
「む~!どういう意味だぁ!?」
「あら、フランが120点なら、私はどれ位なのかしら?」
「自称女神様は、変な点数付けると後が怖いから、美人過ぎて測定不能って事で」
「ディルにも、学習機能が有るなんて驚きだは!」
「何?俺古代の魔法兵器か何かなの?」
「どうかしらね」
「……ディル。私は?」
「ん~105点」
「……理由を喋らせてあげてもいい」
「なんだよ。斬首確定なのかよ。見た目だけで110点、胸がマイナスだから、マイナス5点ってとこだな。後、殺すな。いや、ごめんなさいマジで殺すのは無しで!!!」
「ミュー。ここで騒ぎは起こさないでね」
「……アルンがそう言うなら、誰もいない所で消す」
「ちょっと待ってよミュー!まだ、私が何点か聞いてないは!答えないさいよね!はぐらかしたら許さないんだからぁ!!」
「ん~115点かな」
「なんで、フランより低いのよ!」
「そりゃあお前、おっぱいの分だろ」
「私だって、フランと比べなきゃおっきい方なのに!フランが大き過ぎるのが、悪いのよ!」
「フッフーン!自慢のおっぱいだからね!」
「自己紹介で、初対面の人間にチャームポイントとして上げるぐらいだもんな」
「だから、フランは馬鹿なよ」
「ア、アルン。容赦無いはね……」
「なんでだし!!」
「止めろよアルン。シェーネちゃんが、ドン引きじゃねーか」
「ちょっと!シェーネちゃんって何よ!気持ち悪いから止めてよね!」
「……ディル。最高に気持ち悪い。余りの気持ち悪さに、敬意を評して、これを上げる」
「なんだこれ?」
「……今私が食べてる魚の骨。食べれなかった。ので、要らないからあげる」
「要らねぇよ!ふざけんな!!せめて、寄越すなら魚の身を寄越せよ!」
「ディル。貴方本当にそれでいいの」
「いや、良くないけども!」
「そう言えばこれ、ディルの奢りだよね?あ!店員さ~ん!お肉お代わりで~!飲み物はジャンジャン持ってきて!」
「バッカ!フランてめぇぶち殺すぞ!」
「や~ん。こわーい」
「棒読みじゃねーか!舐めてんのか!」
「え?ディルのこと舐めて無いよ?不味そうだし」
「フラン?そう言う意味じゃないと思うはよ?」
「え~シェーネはどういう意味か分かってるの?」
「下に見てるって言いたいんじゃないかしら?」
「えっ?ディルのが、背おっきいよ?」
「どう言えば伝わるのかしら。頭痛がしてきたは」
「諦めなさいシェーネ。フランはいつもこうよ」
「……天然記念物。自覚無し」
「質悪すぎんだろ……」
「???」
こうして、俺の財布は稼いだ先から召されてくのであった。復讐するは我に在り。後でコイツらの下着全部盗んで喰ってやる。覚えとけよ。
結局盗んで、食い散らかしらのを見つかったディルさん。
「何か言い残すことは」
「ちょ、まっ!遺言から!?」
「……有罪」
「死刑よ!死刑!許さないんだからぁ!」
「待て!この流れ前もやったから!」
「さ、さんわけ?おさ?ディル・バンディッドひ、くち?ねぇ、シェーネちゃん!これなんて読むの?」
「裁判長と被告ね」
「ちょっと!全部言葉を覚えたばかりの子供が読めるようにした台本じゃない奴フランに渡したの誰よ!面倒臭いじゃない!」
「……私だ」
「お前だったのか……って何やらせんだ!」
閉廷!!!