買い物と商人と恐喝と
13話目
話が進まねーです。
魔法使いを得た俺達は、シェーネの慣らしも含めてゴブリンやら、コボルトやらを倒してまわっていた。
前回あんなやり取りをしたりしてたが、俺は結局シェーネにも頭を下げていた……生活費を稼ぐためだプライドは無い。
そう言えば全く冒険に関係無いと言えば無いんだが、パーティメンバーに関する話をしたいと思う。題して『何故パーティメンバーで俺だけいつも金がないのか!』だ。
いや、題する必要性全くねーな。そのまんまだし。もう少し三回転捻りぐらい入れた題名にしないと本にしても売れそうにねぇな。本とか書けんけど。
アルンとフランはアルンの家で、一緒に暮らしているそうだ。宿代がかかんねーし、帰れば飯も作ってもらえるそうだ。
羨ましい。実家暮らし超羨ましい。なんでフランがアルンの家に居候してるかは知らんけどな。
次にミューだ。ミューはなんと忘却と驚愕の尻尾亭で、住み込みで働いてるそうだ。
驚愕だ。多分、俺が生きてた百年でもかなりの驚愕に値した。いっつも机に突っ伏して、暇があれば寝てるアイツが働いてるシーンなど1度も見たことない気がする。と言うか、実際見たことない。
最後にシェーネは、魔導師協会魔導研究所ボア・モア支部魔術観測技術部技術者監督特別記録員だそうだ。
良く知らんけど、とりあえず長ぇってことは分かった。生活の最低限はそこで見てくれるそうだ。勿論給料もでる。
えっとアルンによると、協会の魔法を観測する技術を持った部署の、技術者を監視し、その結果を記録する役職だそうだ。特別って着くのは、内部の人間で無く、外部の人間を特別に記録員として認めているからだそーでーす。
なんで外部かっていうと、それはシェーネの種族が理由だ。シェーネの特徴的な透けた様な赤髪は、半精霊族。ハーフエレメント又はエレメンタルヒューマと呼ばれる種族だ。
その中でも赤髪は、サラマンダーの半精霊族だ。火の呪文を得意とし、その紅蓮の業火は全てを焼き尽くすとされている。そして、全ての精霊族、半精霊族は精霊王に帰するとされている為明確な人族機関への所属が出来ないからだ。
研究員ならじゃあ、外に出て冒険者なんてしてていいのかって話なんだが、冒険者になって色んな場所に行くと、その魔素の残滓が身体に付着するそうでそれを観測するのに役立つらしく、実地調査の名目で許可が降りているそうだ。
俺にも分かるように、アルンが一言で説明してくれた、言葉を流用すると「下っ端」だそうだ。死ぬ程わかり易くて涙が出た。
なんで俺が金が無いのか良く分かった。俺だけこの街の住人でないからだ。風にさすらう旅人だからな仕方ないな。まあ、ただの家出中なんだけど。ところで、さすらう旅人ってカッコイイフレーズじゃね……っと思ったが、さすらわない旅人ってそれ旅人じゃねーし。原住民かよ。
さて、俺の金が無い理由が判明したところで何も解決して無いんだよなぁ……
そして、俺は今昼飯をアルン大司教様に奢っていただくのだ。荷物持ちとして働いてな。
アルンは鑑定系技能の持ち主なので、買い物の際騙されたり、ちょろまかされたりしないので安心だ。フランとかは直ぐに騙されそうだけどな。気付いたら自分が商品になってる可能性すらある。
だから、買い物に行く前、アルンからフランを見とけと言われたんだが、コッチは直ぐに解決した。フランが歩くのが面倒だし、人混みを上から見てみたいと言うので、絶賛頭の上だ。
肩車中なのだが、フランはエルフで背が高いので胸が完全に頭の上に乗ってる。超スゲェ。超柔らかい。圧倒的ふわりんこ。
しかも、フランは子供の様に落ち着きが無く、アッチを見てバタバタ、こっちを見てキャーキャーしているので、後頭部と頭頂部が圧倒的ジェノサイド。70年ぐらい前の童貞の俺なら死んでた。
シェーネは見た目が完全に大人なのに、肩車されてはしゃいでるフランを見てドン引きしていた。「絶対に嫌よ!こんなのと一緒に行きたくないは!」と駄々をこねていたんだが、アルンによって強制連行になった。
こんな感じだ。
「特に用が無ければ、皆で買い物に行きましょう」
「嫌よ!って言うかなんであのエルフ頭の上に乗ってるのよ!大人でしょ!恥ずかしいじゃない!!」
「フランは放っておくと人混みで迷子になりかねないのだけれど、私が捕まえておくと店を回るのが非常に面倒なのよ。フランに横で暴れられているとジックリ品定めとか出来ないし、頭の上で楽しそうにはしゃいでるなら絶対あのままの方が楽だもの」
「嫌よ!それにわざわざ皆で行く必要無いじゃない!誰か1人に頼めば良いでしょ!」
「フランとディルが買うもの全て覚えられる訳ないじゃない。ミューは一つのもの買うまでに時間かかるし」
「そうだそうだ~!」
「そうだぞ!紙は高いしな。わがまま言うんじゃない」
「……話すのも、買い物も面倒。寝てたい」
「それにパーティメンバーが、ポーションや魔力草なんかをどれだけ持ってるか確認する必要があるは。用が無いなら纏めてやった方が二度手間にならないで済むのよ」
「その用が無いから、あの恥ずかしいの達と一緒に行きたくないって言ってるんじゃない!」
「あら、じゃあ貴女1人で5人分のアイテム持つつもりなのかしら?」
「えっ!?そんなの無理よ!って言うかなんで5人分!?自分の分くらい自分で持ちなさいよ!」
「嫌よ。私は儚くて、可憐で、ひ弱で、美しいの。そんな私が荷物を抱えて歩いて居たら、荷物持ち志願の男どもが群がってしまうは。ディルが居れば男避け兼荷物持ち兼フランのお守りを任せられるのよ。便利でしょう?」
「うぅ、で、でもぉ!」
「ディルに言って担いで街中練り歩いても私は一向に構わないは」
「…………すみません。ついて行かせてください。お願いします」
って感じだった。
最後にミューは俺の背後に引っ付いて歩いている。どうも俺の尻尾が気になるらしい。掴んで離さない。
亜人と呼ばれる人猫族、人犬族、人兎族とかには尻尾がついてるから別に珍しく無いと思うんだがな。因みに人兎族の女性は見た目がめちゃくちゃエロい。人兎族の男は見た目かなり兎っぽいのでマスコット的に女性に人気が高い。なんで男女で見た目にあんなに差があるかは不明だ。
一説では自然界の動物でメスの方が身体が大きいので、その流れを汲んでいるのでは、と言う話だ。
という訳で皆で買い物に来てるんだが………
この集団とんでもなく目立つ。理由は違うが1人1人がタダでさえ人目を引きやすいのに、それが5人も固まって歩いてるのだ。まあ、1人頭の上だけどな。
物を買う時フランのオネダリとか、ミューの物欲しそうな顔とか、アルンの聖女キャラで、大分安く買える。流石オッサン達、美女と美少女に弱い。
アルンが見て吹っ掛けて来そうなヤツは、アルンが先に交渉をして、吹っ掛けて来たタイミングで俺が出ると言う方法を取っている。スゲー安く買える。
先に美女で落としておいて俺が出てくる。俺らが吹っ掛ける側だったらタダの詐欺だ。まあ、街の商店じゃ無く、行商人から買う場合騙される方が悪いんだが。アイツら国々まわってるから、絶妙に人によって値段を変えて足元見てきやがる。
鑑定系技能持ちのアルンと俺が組めばいい詐欺師に成れそうだ。なんせ俺は頭を使わず脅すだけでいいからな。俺の十八番だぜ。
こんな買い方をしてると、商人お抱えのヤバそうなガチムチの集団に囲まれたりするんだが、人龍族でも無い限り俺の3分の2に届かないからな背が。大抵ビビる。
名の売れた大商人でも無い限り、護衛もたかが知れているので、憲兵に突き出して、国からお金を貰った上で、フランが分からない程度に商品をかっぱらったりもした。本業レンジャー兼シーフは伊達じゃなかった。目の前で見てる俺でもよく分からんかった。最早奇術の類だ。
初めてパーティ全員で買い物に来たがこりゃ楽しい。最終的に料金を明らかに払ってないであろう、見知らぬものが数点。悪徳商人のヤツだ。
と
鑑定と交渉&脅迫で安く買い叩いたのが、大半。
と
悪徳商人の余罪で国から貰った報奨金で、元金は殆ど減ってないのに、アイテムはかなり増えた。
流石に全部は袋に入り切らなかったので、その分は皆に少しずつ持ってもらった。勿論アルンはひとつたりとて持っていないがな。大収穫だ。
シェーネは終始ドン引きしていた。諦めろアンタのパーティは割と最低の集まりだ。
街に元々ある優良な店舗ではちゃんと正規の料金を払っているので許して欲しい。
冒険用のアイテムをしこたま買い込んだのはいいが、これ俺が全部運ぶのか……いやまあ、フランもミューも乗ってなけりゃ運べるけどよ。フル装備でこれ運ぶのは割と骨が折れるな。
って言うかなんで俺が1人で運ばなきゃならねーんだ。5人パーティだよな。なんで荷物持ちが1人なんだよっつーか荷物持ちじゃねーし。しっかり戦闘要員だし。防御の要だし。てか、俺なんでシェーネの分までも持つ前提。テメェで持てテメェで。
しかし、アルンもフランもミューの分も持つのに、お前は自分で持てとか言ったら絶対拗ねる。間違えない絶対拗ねる。やっぱ女ばっかのパーティに男が1人は辛いもんが有るな。
これが男がイケメンで、女の子皆から慕われてるパーティなら別なんだろうが、俺が当然慕われてるはずもなく、最初に入れてもらう時の前提が荷物持ち兼肉盾だったしな。
前提酷過ぎだろ……なんで俺こんなパーティに居るんだ。そうだ金が無いのに神官の宛がねーからだ。
なんで俺には幼馴染みで、昔一緒に冒険者になる約束をした、神聖魔法適性の高い可愛くて、気が利いて、俺のことが大好きな、おっぱいの大きい女の子が居ないんだ畜生。
いや、人龍族は魔法適性自体が、突然変異でもないぐらい適性のあるヤツなんかいねーからだけどな。個人的には、人龍族の女はデカくて全員が、アマゾネスみたいな感じだから全然可愛くねーんだけどな。ただしデカい分纏えるもんは少ないので、エルフ並に良く見える色々と。
エルフは纏えるもんが少ないんじゃなくて纏わないだけだから、そもそも着れるもんが少ない人龍族とは条件が全く違うけどな。
ん?待てよ。完璧に運ぶ方法を思い付いた。俺本当に天才だは。天才過ぎてヤバイ。
完璧な運搬方法を思い付いた俺は、意気揚々と次の冒険に向けて準備するのであった。
※恐喝とスリと暴力は実際にやると捕まりますゲームとかの中だけにしましょう。
まあ、相手が悪い奴だから粉微塵にしても良いよね!