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進化  作者: ゆう
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2話 天照由美の進化

二日遅れちゃってすみません!


天照由美あまてるゆみはjk1です。

修君と同じ塾の生徒です。

 小さなときからすでに人間として姿を確立していた私は、周りの大人に数奇な目で見られていた。

 最初は見世物よろしく見せびらかしていた両親も私が育てば育つほど警戒心を持ち、一度は売りに出されそうにもなった。

 私はその瞬間から、彼らに認められよう、と心を決めた。

 背中から小さな翼が顔を出し始めたころだった。


 小学生になるときにはもう自在に進化できるようになっていた。

 ある子が蛇になってと言ったら蛇に、またある子が人魚になってと言ったら人魚に。

 でも普段はずっと天使だった。

 背中から身長と同じほどの翼をはやす、天使。

 洋服は、というと母が軽く文句をつぶやきつつ制服の背中部分を大きく切っては縫い、アイロンをかけて私に持たせてくれた。

 父は特に何をするでもなくその光景をじっと見つめていた。

 そのころからかもしれない。私が父を明らかな敵、いや見返す対象と決めてしまったのは。


 中学に入学するころには私も見た目に気を配るようになり、顔を少し進化させるようになった。

 明らかな変化は見せず、自分のかわいくないところは隠し、母のチャームポイントは引き継いで、あとはもう絶世の美女である。

 絶対にばれず、最高にかわいいメイクであった。

 父とはあまり似せなかった。いや、似せたくなかった。

 親戚に「お父さんと似てる」と言われたくなかったからだ。

 勉強もそれなりに頑張って、クラスで一二を争えるぐらいにはなった。

 高校も進学校に入り、レベルが高い塾にも入ることができた。

 きっと、もう「見返す」という目標は達成できている。よね?


 私は筆をおき、一つ深呼吸をする。

 このぐらいでいいか。

 もう、やめていいよね、少し疲れちゃったんだ。

 もう一度、筆をとる。


 これが今までの自分のすべて。

 そして、それが更新されることはもうない。

 これで終わりにしようと思う。

 私はやはり少し間違っていたようだ。

 まずお父さんを見返すなんてこと無理だった。

 外見で見返そうとしても私の中に「嘘つき」「詐称」「親騙し」というレッテルが貼られていくだけ。

 そんなのじゃ、見返すなんてことは到底できそうにない。

 でも、頭はよくなった、それで見返すっていうことはできないの?むしろ、それでいいじゃない。

 私だってそう思っていたことはあった。

 でも、進化は外見しか変えられないらしい。

 つまり、私の子の頭脳は所詮遺伝、しかも一流大学出の父親譲り。

 結局私は自分を騙していただけだった。

 子供が、しかもまだ16の小娘が自分の親に勝とうなんて無理だったという話だ。

 親がいるから私がいるのに。

 ちょっと書きすぎ?あとちょっとだけ付き合って。

 他にも間違ってたことがあるから。

 といってもまた「目標」の話なんだけどね。

 何もこの16年間見返すことだけを目標にして頑張ってたわけじゃない。

 もう一つあった。

「美しく死ぬこと」。

 難しいことだ、これは。だって、おばあちゃんになったらもう進化の力は使えないし、よぼよぼで全然美しくない。

 だからといって、20歳超えちゃったらきっと忙しくなるだろうし過労死なんて絶対やだし、もしその時の私が16の私より美しくなかったら駄目じゃない?

 だから私は、今日、今、死にたい。

 怖いなんて思わない、だって小さなときからの目標が今叶うのだし。

 いつか、SNSで百合の中で死ぬって言うのが流行った。私、あれはやりたくない。

 だってヒト一人死ぬだけなのにやけに壮大だし、私は美しい死に方で死ぬことよりも美しいヒトが美しいまま死んだことのほうが重要だと考えるから。

 だから、まあ拳銃で死にたかったんだけど銃刀法っていうのがあるし…

 別に私は特別死にたいわけではない。

 ここまで育ててくれた親には感謝しているし、ここまでの人生も楽しかった。

 この幸せをずっと感じているにはやっぱり、死ぬしかなくて。

 親だって最後に見る我が子の顔は一番美しい状態でありたいだろうし。

 と、いうことで。私はもう死んでくるね。

 どうやって死ぬかはきっとニュースとかで知るでしょ。

 それじゃ、さよなら。


  天照 由美


「さよなら」


 そう私は呟き、その髪を丁寧に折りたたんだ。

 用意していた便せんに自分の羽とともにしまう。

 これで、準備はできた。

 先に書いた通り、恐怖はみじんもない。

 ただ、心残りは少しある。

 この塾のことだ。

 別にこの塾自体が心残りなのではなく、この塾の塾生、もっと言えば私の同級生たちだ。

 あのヒト達は私に何の先入観も持たず、まっすぐに私と接してくれた。

 そんなヒト、私の短い人生の中じゃあのヒト達ぐらいのものだ。

 だから私が死んだ後、同級生たちはどんな反応をするか、それだけが気になる。

 でもそんなこと気にしていても無駄だ。

 もう死に時なのかもしれないし。

 最後の進化をする。

 死んだのが私と分かるように顔の本質は変えず、親の、父と母のチャームポイントとそうでないところの面影を残し、羽を大きく長くした私は、やはり進化前と何かが変わってる気がした。

 父親と私はきっと似ているのだ。彼の鼻の形は私の顔にしっくり合う。

 あまりかっこいい鼻とは言えないのに。

 死ぬ準備はできた。さあ、この世界にお別れをしよう。


 今度こそ本当にさよなら。

この話ってローファンタジーなんですかね?

それとも空想科学??

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