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5話 「娘を守れないで何が父親だ!」

とあるビルの屋上。そこに1人の魔法少女が立っていた。


大妖精のお告げでいち早くここに来ていたが決して介入しようとせず、ただ樹とモンスターの闘いを眺めていた。外見は大きな帽子を被っており服は浅黄色、スカートは黄緑色を基調とした露出の少ない服だ。両手にはロッドらしき物を1本ずつ持っている。


「助けなくていいの・・・?」


彼女の妖精が語りかける。彼女の目線の先にはモンスターの強烈な平手打ちで殴り飛ばされて建物に衝突し倒れ込んだ樹。気絶して起き上がる気配がしない愛華。その愛華の方へゆっくりと近づいていくモンスター。

この光景を見た彼女は口を開いた。


「そうね、横取りする趣味は持っていないけれどあの新人さんはもう限界みたいね・・・」


そう口にすると右手に持ったロッドをモンスターの方へ向けた。そして目線は愛華の方へ向けた。


「それに・・・あの子を見殺しになんてできない・・・!」


彼女は右手に持ってるロッドに魔力を込め始めた。しかし彼女の妖精が何かに気付いた。


「待って・・・あれ・・・」


急に紅い光りが見えた。彼女は目線を光りがする方へ向けると倒れ込んでいた樹の体が紅く光っていた。

その光りにはとてつもない膨大な魔力が宿っていると彼女は感じた。


「これは・・・!?」


――――――――


突如樹の体が紅く輝き始めた。モンスターも思わず歩みを止め樹の方を見つめた。輝く体で何事も無かったかの様に起き上がり徐々に輝きは収まり樹の体全体に紅いオーラのような物を纏った。


「すごい!すごいわ樹!力がもの凄く溢れ出てくるみたい!私にこんなすごい魔法があったなんて!これならあいつを倒せるわ!さぁ反撃よ樹!」


「わかってる・・・僕がやらなきゃ・・・」


そう一言残した瞬間、目にも留まらぬ速さで一気にモンスターの懐に入った。「愛華から離れろ!」そう言ってそのままの状態のロッドでさっきのお返しとばかりに殴り飛ばした。モンスターの体が建物に突っ込みそのまま建物が崩れ落ちた。

崩れた建物を見つめる樹。すると瓦礫を吹き飛ばし一気に起き上がったモンスターは樹の方へ走って行き殴り掛かろうとした。樹は一瞬でその場を離れ攻撃をかわした。

モンスターは苛立ったのか火炎弾を何発も樹に放つ。樹は左手を出し魔法の障壁を作り火炎弾を全て防ぎきる。魔力を込めたロッドをモンスターに向かって振るように魔法弾を放った。

魔法弾が命中しモンスターは再び吹っ飛んだ。モンスターが起き上がった直後樹は再びモンスターの懐に入ろうとする。しかし今度は反応したモンスターが右手の拳を樹に向かって振りかざす。これを見た樹はすかさず左手を出して障壁を作りモンスターの右手を消滅させた。

モンスターは痛さのあまり悲鳴を上げるかのように叫び後ずさりした。

樹はロッドを後ろの方へ向け魔力を込める。ロッドの先端に魔力の塊が現れ徐々に大きくなり、最終的に自分の身長以上の巨大な魔法弾を創り出した。


「娘を守れないで何が父親だぁぁぁぁぁあああ!!!」


ロッドを思い切り振り巨大魔法弾をモンスターの方へ発射した。

巨大魔法弾はモンスターの胴体を飲み込み爆発した。モンスターの体は散り散りになり辺りに肉片が散らばる。肉片はその後蒸発したかの様に煙を出しやがて骨も残さず消滅した。


樹はモンスターを倒した。体に纏った紅いオーラは消え樹はそのままへたれ込む。すぐに愛華の事を思い出しよろめきながらも立ち上がりフラフラしながら愛華の方へ近寄った。

この光景を見ていた浅黄色の魔法少女は「フゥ」と軽く息を吹きこの場を去った。


――――――――


「・・・いか・・・あ・・・いか・・・」


―――誰?私を呼んでいるのは・・・?


「・・・あいか・・・愛華・・・愛華!」


―――・・・もしかして・・・




「パ・・・パ・・・・・・?」


愛華は目をゆっくり開き言葉を発した。そこには心配そうに見つめる魔法少女いつきがいた。

「パパ」と言われた樹は思わず動揺するが「よかった、生きてて!」と言い安心しニッコリ笑った。


「あれ・・・魔法少女さん・・・?」


「うん、怪我とか大丈夫・・・?」


「怪我・・・?多分大丈夫だと・・・痛っ!」


起き上がろうとした時左腕に激しい痛みを感じた。左腕を見ると肘辺りが流血していた。

原因は樹の背中に火炎弾が直撃した時に一緒に飛ばされ地面に左腕から打ち付けられた時だろう。


「酷い怪我だ・・・!今すぐ病院へ行こう!緊急なら対応してもらえる!」


「は、はい・・・あの、魔法少女さんも背中が・・・」


「背中?」樹は手が届く範囲で背中を触ってみた。服が破れてはいたがすべすべした感触で痛みも無く怪我はしていない様だ。火炎弾の直撃や建物に背中から衝突したにも関わらず怪我一つしていない。魔法少女になったら身体の耐久度が上がって怪我をしないのか、それともあの紅いオーラを纏った時に治ったのか・・・

何にせよ、背中は無傷だった為「僕は大丈夫みたい」と愛華に言った。

樹は軽々と愛華を抱え上げ「ちょっと怖いかも知れないから目つぶった方がいいよ」と愛華に勧め、愛華は樹の言うとおりに目をつぶった。

樹は近くの建物にピョンとジャンプしビルの屋上まで来るとビルからビルへどんどんジャンプをして病院へ向かう。

途中、愛華は目を開けた。すると走ってる電車の窓のように夜景が流れて見えていた。自分は今空を飛んでいるのかと一瞬思ったが、樹が自分を抱えながらジャンプして移動している事に気付く。

愛華は樹の横顔を見つめていると昔の事を思い出す。


それはまだ小さい頃の事だ。家の近くの公園で友達と一緒に遊んでいたが友達の母親が来て帰ってしまい一人寂しく遊んでいたが遊んでいる途中寝てしまったようだ。

目が覚めると自分は今フワフワ浮いていると思いビックリしたが顔を上げるとそこには見覚えのある顔があった。自分の父親の顔だった。父親が公園で寝ていた自分を抱え上げて家に帰る所だった。

父親の顔を見て安心したのかまたウトウトと眠ってしまった。父親の腕はあったかくて心地がよかった。


それと同じぐらい樹の腕は心地が良かった。身長は自分より低いし腕の太さも女の子の細い腕なのに、何故父親と昔の事を思い出したのだろうか。しかしあまりにも心地が良かったのか愛華はいつの間にか考えるのをやめ樹に身を委ねた。その表情は痛みを忘れたかのように穏やかに笑みを浮かべていた。


ビルからビルへジャンプして移動する樹が見覚えのある病院を見つけ入り口前で着地し愛華を下ろした。病院に入り受付の看護師に愛華の左腕の怪我を見せた。看護師は魔法少女である樹を見て少し困惑していたが愛華の左腕の状態を見て緊急の治療が必要と判断し、受付室に入り医師を呼ぶ為電話した。

しばらくすると医師が現れ愛華の左腕の状態を見る。樹も何が原因で怪我をしたのかを事細かく説明した。その後応急処置をし左腕の骨の状態を検査する為レントゲン室へ案内しようとした。すると愛華が少し待ってほしいと医師にお願いをし樹の方に駆け寄った。


「あの、今日は助けていただき本当にありがとうございました。」


「え、あっうん、僕は当然の事をしたまでだから・・・んっ」


突然目がかすみ始め樹は目をこすった。愛華は心配そうに声を掛けるが「大丈夫」と樹は答えた。


「初めてモンスターと戦ったもんだから疲れちゃったみたい・・・ごめん、後はお医者さんに任せて僕は帰るよ・・・」


「はい・・・あの、また会えます・・・よね・・・?」


「えっ・・・うん、もしかしたら・・・ね。」


「あ、あの、最後にお名前・・・教えていただけますか?」


「名前?え、えぇっとぉ・・・」


「ラビアタって答えなさい」ラビアタが樹に語りかける。樹は頭を少し下げ「フゥ」と息を吐く。そして愛華を見つめ魔法少女としての名を名乗った。


「僕は魔法少女・ラビアタ、またね愛華ちゃん。」


樹は軽く手を振り病院に出て近くの建物にジャンプし病院を後にした。愛華は病院を後にする樹にお辞儀をして見送った。


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