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4話 「これが私の力なの!」

空間にできた亀裂が崩壊し、周りの人間達は恐怖のあまり逃げ惑う。


空間の欠片が樹達に飛び散ってきた。「危ない!」そう言って樹は愛華を庇う為前に出て背を向け飛び散ってきた欠片から愛華を守った。魔法少女になって身体の耐久度が上がっていたのか幸い服が数箇所切れただけで済んだ。

欠片から防ぎきった樹は恐る恐る後ろを振り返る。そこには額に大きな1本角を生やした鬼のようなモンスターが立っていた。大きさは3mは超えているだろう。肌は赤く手足の爪は鋭い。そして鋭い目付きは樹達を睨みその場で天に向かって咆哮した。

あまりの迫力に樹は怖気づいたのか後ずさる。すると踵に何かが当たり振り向くとモンスターを見て怯えてしゃがみ込んだ愛華がいた。「逃げるわけにはいかない」そう思い「早くここから逃げて!」そう言って愛華に逃げるよう指示した。「は、はい!」そう言って愛華は急いでこの場から逃げ出した。そしてこの場には樹とモンスターのみとなった。


「さぁデビュー戦よ!さっさとぶっ飛ばすわよ樹!」


「そ、そんなのいきなり言われても!」


魔法少女になったとは言え戦い方がわからない樹。するとモンスターが口から樹に向かって火炎弾を放った。攻撃してきた事に気付いた樹は慌てて近くの建物にジャンプして避難する。放たれた火炎弾は電飾看板に当たり爆発した。この光景を見た樹は再び怖気づいてしまう。すると再び大妖精が樹に語りかけてきた。


「魔法少女ラビアタ、初めての魔物との対峙で恐怖に怯える事は充分承知しております。しかしこの場にいる魔法少女はあなたしかいないのです。」


「そう言われても、どうやってアイツと戦うんですか!」


「この地域にいる魔法少女達にもここに魔物が出現する事を伝えています。それまで貴方は他の魔法少女達が来るまで持ちこたえて下さい。戦い方は妖精ラビアタが教えて下さいます。」


「だってさ!ま、このラビアタさまの力あらば他の魔法少女が来る前どころか魔物なんて瞬殺よ瞬殺!」


「そ、そぉ?だったらやってみるよ!」


「んじゃ、あいつとやり合う前にまずはロッドの召還ね!右手を前に出しなさい!」


言われた通り樹は右手を出した。すると右手に差し出した方が光りだし、やがて光りは棒状の形へと変貌した。長さは今の身長の3分の2ぐらいで先端にはハートのような形で赤い水晶な物が付いており棒状の接合部には羽の装飾が付いている。


「これが魔法少女の武器「ロッド」よ、これに魔力を込めて魔法弾を撃ったり魔力のオーラを纏わせて直接ロッドで殴ったりする事が出来るのよ!どう?すごいでしょ?」


魔法と言えば炎を出したり雷を落としたりして攻撃するものだと思ったが、「撃ったり」「殴ったり」という言葉を聞くと何とも現実味がありそうな攻撃方法である。樹はこの事は気にしないでおく事にし「わかった」と言ってロッドと手にし建物から飛び降りる。再びモンスターと真正面で対峙する形になりラビアタはロッドを敵に向けろと指示した。


「最初は私がサポートしてあげる!あとはやってる内に感覚で覚えてくるわ!さぁ魔力をロッドに込めて・・・」


樹は自分の魔力・・・だと思う力をロッドに込めた。するとロッドに丸い光りが現れた。


「さぁ今よ!撃てと念じなさい!」


言われたとおり「撃て」と念じた。すると丸い光りが魔法の塊「魔法弾」となってモンスターに向かって放たれた。放たれた魔法弾は見事命中した。しかし当たったとはいえモンスターに傷どころか跡すら残っていなかった。モンスターは魔法弾が当たった所を軽くさすった。


「ちょっとラビアタ!あいつ全然効いてないみたいだけど!?」


「あ、あれぇおかしいわねぇ・・・今のフルパワーでやったのに・・・で、でも今ので隙は出来たわ!今度はロッドでぶっ叩くわよ!ロッドに魔力を込めなさい!」


言われるがまま樹はロッドを両手で持ちロッドに魔力を込めた。すると今度はロッドにオーラのようなものが纏った。


「今よ!あいつに向かって全力で飛んで思いっきりぶっ飛ばしなさい!」


樹は脚に力を入れモンスター目掛けて飛び込んだ。「やぁー!」と掛け声と共にモンスターの胴の辺りへロッドを思いっきり振りかぶった。しかしこの攻撃も受け止められてしまい、突進した時の衝撃の反動で樹は吹き飛ばされてしまう。

何とか起き上がるが、モンスターが再び口から火炎弾を樹に向かって放った。瞬時に「左手を出しなさい!」とラビアタが指示し樹は急いで左手を出した。左手の先に魔法で創られた丸い光りの障壁が現れた。放たれた火炎弾は障壁に命中し爆発した。障壁は砕け散りその衝撃で樹はまたしても吹き飛ばされてしまう。よろめきながらも再び立ち上がる樹。すると突然ラビアタが「フフフ・・・」と不適に笑い出した。


「そうか、私ってそういう役割だったのね・・・」


「ら、ラビアタ?どうしたの突然・・・」


「いい樹?もう一度ロッドに魔力を込めて今度は上に向かって振りなさい!」


「わ、わかったよ!」樹はラビアタの指示通りにロッドに魔力を込めた。しかし今までのロッドの光り方が違った。新たな攻撃方法なのかと思った樹はロッドを天に向かって振った。すると放物線を描いた光りから緑色の粒子が降り注ぎ、その粒子を全身で浴びた樹は不思議な力が身体に宿ったと感じた。

今の魔法が何なのかラビアタに聞こうとした瞬間再びモンスターが火炎弾を放った。「手を出して!」とラビアタの指示を聞いてもう1度左手を火炎弾の方に出し光りの障壁が現れ火炎弾が命中した。

しかし今度は砕けずそのままの形を保って火炎弾を消滅させた。


「防げた・・・のか・・・?」


「惚けてないでまたさっきのように振りなさい!今度は2回よ!」


言われるがまま樹はまたロッドに魔力を込め天に向かって2度振った、1度目は赤く光り、2度目は青く光り2色の粒子を全身に浴びる。

「さぁ突撃よ!」ラビアタに攻撃をせがまれ樹は再びモンスターに突進する。魔力のオーラを纏わせたロッドを構え再びモンスターの胴の部分目掛けてなぎ払いモンスターの巨体な身体を十数メートルも吹き飛ばした。


「やった!やったよラビアタ!でもなんで急にここまで強くなったの?」


「長くなるけど教えてあげる!さっきの緑の光の粒はシールドの強化、つまる防御力を上げる魔法よ!そして赤い光は魔法の威力を増幅させる魔法で青い光は身体能力を上げる魔法よ!身体能力が上がってスピードが増して勢いづいた突進力と腕の力、魔力を増幅したオーラロッドであのでっかい魔物をぶっ飛ばす事が出来たのよ!」


「そうだったんだ・・・でもどうしてもっと早くこれをやらなかったの?早くパワーアップしてればこんな苦労をしなくて済んだのに・・・」


「私だってさっき気付いたばっかだもの!フルパワーの魔法弾とオーラロッドが全然効かないしシールドだって超脆かったのは私の魔法が戦闘向けじゃないって気付いてもしかしたらと思って能力を上げる魔法を試したら出来ちゃったの!私の魔法は他の魔法少女をサポートする為の魔法・・・認めたくないけど、これが私の力なの!」


今のラビアタの言葉にはいつもの強気の感じではなく自分に失望して苛立って言ってる様に樹は感じた。自分自身も魔法少女になれて嬉しかったのだろう。魔法少女になった自分はモンスターなど敵ではない、そんな強い魔法少女をラビアタは思い描いていた。

だが現実は違った。いざ戦えば自分の魔法は通用せず自分の固有魔法である能力上昇魔法でやっと戦える状態になる自分にショックを受けているのだろう。

ラビアタを慰めようと言葉を掛けようとするが言葉が浮かばない。すると物音がしその方向を向けるとモンスターが起き上がろうとしている。途中まで起き上がった状態で火炎弾を何発も放った。

「樹!」ラビアタの声に反応してすばやく動きまわり火炎弾を避ける。


「能力上昇魔法には時間制限があるわ!また掛け直せばいいけど時間切れで大きな隙が生まれる可能性があるかもしれない、その時に狙われたらアウトよ!だから切れないうちにケリをつけるわよ!」


自信無さげに「う、うん」と頷く樹。ロッドに魔力を込め魔法弾を撃てる状態になりロッドをモンスターに向けた。

すると突然悲鳴が上がる。樹はロッドを思わず下げて悲鳴の上がった方へ目線を向けた。そこには建物に火炎弾が当たった場所の近くで怯えてしゃがみ込んだ女の子がいた。樹はあの女の子が誰なのか瞬時でわかった。逃げたはずの愛華だ。樹は急いで愛華の方へ向かった。


「ど、どうしてここに戻ってきたの!?」


「ごめんなさい・・・私、魔法少女さんが心配で・・・戻って、来てしまって・・・」


「とにかくここは危険だ!今すぐ安全な所まで離れよう!」


そう言うと樹は愛華を抱え上げ急いでこの場から離れようとした。しかしこれが大きな隙を作ってしまった。


ドォンッ


樹の背中に火炎弾が直撃した。当たった衝撃で樹の体は数十メートルも飛ばされてしまう。抱えていた愛華も樹以上に飛ばされ体を打ち付け気絶してしまった。

辛うじて意識があった樹はモンスターに目線を向けた。モンスターは既に起き上がっており1歩ずつ樹の方へ歩き出していた。だが目線は樹の方には向いていなかった。あいつの目線は倒れている愛華に向けている、あいつは愛華を食べる気だ。そう察した樹は大きなダメージを負った体で何とか立ち上がりロッドを構えモンスターに立ちはだかる。

しかし、樹の前に立ち止まったモンスターは邪魔だと言わんばかりにその強靭な腕で樹の体を追い払うかのように平手打ちで殴り飛ばした。

吹き飛ばされた樹の体は建物に打ち付けられその場に崩れ落ちた。歩みを止めていたモンスターは再び愛華の方へ歩き出した。

ラビアタが必死に樹の名前を呼ぶ、しかし意識が朦朧としている樹には聞こえていない。朦朧としている意識の中、樹は愛華の方へ歩くモンスターを見つめていた。


「ダメだ・・・このままじゃ、愛華はあいつに喰われてしまう・・・そんなのダメだ・・・僕が、僕が愛華を・・・守らなきゃ・・・僕が・・・!」



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