表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/14

13話 「みんな命懸けで戦っているんだ!」

モンスターに危うく食べられそうになった樹を救い出し、腰が抜けて動けなくなった樹に代わってモンスターと対峙するコクシネア。


「さぁ次は私が相手よ、モンスター!」


右手に持っていたロッドをモンスターに向けて宣戦布告するコクシネア。彼女のロッドをよく見ると剣みたいなロッド、というか剣である。見た目もそうだがもはやコクシネアは魔法少女と言うより「騎士少女」と言うべきなのだろうか。

それはさておき、その剣のようなロッドをこの場で空間を切断するかの如くスマートにロッドを横に振り改めてロッドを強く握り締めるとモンスターに向かって一気に駆け出した。

モンスターもこちらへ向かってくるコクシネアに対抗して全ての触手をコクシネア目掛けて伸ばしてきた。無数の触手がコクシネアに襲い掛かるが勢いは落とさず次々と触手達の攻撃をかわしていく。だが1本の触手がコクシネアの目前に迫っていた。これはさすがに触手攻撃を喰らってしまったか、そう思われたがコクシネアは前屈みになると目にも留まらぬ速さで触手を掻い潜って攻撃をかわしてみせた。まるで瞬間移動のようでかわした後も何度も瞬間移動をして一気にモンスターの前に詰め寄った。ロッドを構えるとロッドが光だし剣型ロッドの剣身よりも倍は長い光の剣(オーラソード)を創り出した。そしてそのオーラソードでモンスター目掛け薙ぎ払おうとするとモンスターも身を守る為すかさず大量の触手を盾の様に重ねたがお構いなしに大量の触手を両断、そしてモンスター本体にも深手を負わせる事に成功した。


「よし、もう一撃!」


コクシネアは間髪入れずにオーラソードを構えモンスターにトドメを刺そうとする。ところがコクシネアの真横から触手が迫る。それに反応したコクシネアはすかさず瞬間移動で数メートル後ろへ後退してしまう。すぐさま顔を上げモンスターに目線を移すとすでに再生が始まっており、切断された触手はすでに生え変わり本体に切り付けた大きな切り傷もみるみるうちに塞がっていった。


「上から見てたけどなんて再生能力・・・!少し甘く見過ぎたわ・・・」


完全に再生したモンスターは無数の触手をコクシネア目掛け伸ばしてきた。その場で瞬間移動をし再びモンスターの懐に入ろうとするが無数の触手達の波状攻撃により行く手を阻まれてしまう。迫り来る触手達を切っては避け切っては避けるの繰り返しで中々モンスターの所に辿り着けないでいる。


「このまま長期戦になっていくとマズいわね・・・マナが切れて変身が解かれてしまう・・・でもこんな大量の触手と相手するのはキリが無いわ!ど、どうすれば・・・!」


一方で腰が抜けへたれ込んだままコクシネアとモンスターの戦いを見てる事しか出来ない樹だが、コクシネアが苦戦している所をただただ見る事しかできないのを嫌ったのかようやく口を開いた。


「どうしよう・・・コクシネアさんでさえあいつに苦戦するのか・・・ぼ、僕も加勢しなくちゃ!」


立ち上がった樹は落としたロッドをキョロキョロと探し見つけ出すと急いでロッドの元へ駆け寄った。ロッドを拾い上げ急いでコクシネアの元へ駆けつけようとする、が樹の脳裏にある事が浮かんでしまう。


「でも、僕が加勢したら(かえ)って足手まといになるんじゃないのか・・・?もしまたあいつに捕まって助けようとしたコクシネアさんも捕まってしまったら・・・でもこのまま見ている事もできないし・・・ど、どうしたら・・・!」


弱い自分が加勢したら却ってコクシネアの足を引っ張ってしまう。そう思い浮かべてしまった樹は中々1歩を踏み出す事が出来なくなった。しかしこの状況を打開しなくてはコクシネアがやられてしまう・・・樹はふわふわツインテールをわしゃわしゃしながら必死に打開策を模索する。すると先程コクシネアとのある会話を思い出す・・・。


―――――――


「あなたはどんな固有魔法が使えるの?」


「僕の固有魔法・・・ですか・・・僕のは魔法の威力や身体能力を上げたりできて、自分や他の魔法少女をパワーアップさせる魔法・・・ですかね?」


「へぇ~サポート系の魔法が得意なのね。」


―――――――


「そうだ、これだ!そうだよ!何で自分で言っておいて今まで忘れていたんだ!ラビアタ!」


「な、何よ突然。」


「僕らの固有魔法って言うの、自分以外にも他の魔法少女に強化魔法でパワーアップ出来るんだよね!?」


「ま、まぁ、そうなんじゃない?試してないけど・・・ってあんたまさか、コクシネア(あいつ)に強化魔法をかけようって言うんじゃないでしょうね!?」


「その通りだよ。このままだとコクシネアさんがやられちゃうかもしれない、だから赤の強化魔法でパワーアップさせればあのモンスターを一気に倒せるかもしれない!だからコクシネアさんに赤の強化魔法をかける方法を教えて欲しいんだ!」


「そんなの嫌よ!ただでさえアイツに助けられて私のプライドに傷が付いたのに、今度はアイツなんかの為に強化魔法を掛けるなんて絶対に嫌よ!!」


ラビアタは樹の要求に激しく拒む。それもそのはず、自分に対しいつも口うるさく説教する姉的存在の妖精(コクシネア)にいつか見返してやるという野心に燃えていたのだ。ところがピンチに陥りながらもこれから自分達はパワーアップして魔物を倒すのだと信じていた矢先に樹がコクシネアに助けを求めてしまい妖精(コクシネア)のパートナーによって助けられてしまった。この時にラビアタのプライドはズタボロに引き裂かれてしまったのだ。それなのに樹は今度は苦戦を強いられているコクシネアを助ける為に自分以外の魔法少女に強化魔法をかける方法を教えろと要求してくるのだ。これにはラビアタも怒りを露にし樹の要求を拒否してしまう。

だが拒む理由がラビアタの自己中心的な理由に過ぎない、そう感じた樹はこれまではラビアタの言動に押されっぱなしだったが今回ばかりは心を鬼にしてラビアタに反論をする。


「じゃあラビアタはこのままあの子とあの子の妖精がやられてもいいって言うのか!」


「そ、そんな事言ってないじゃない!」


「拒む理由があの子の妖精の事が嫌いってだけじゃ済まされないぞ!僕やコクシネアさんと彼女の妖精、そしてラビアタだってここにいるみんな命懸けで戦っているんだ!なのにあの子の妖精の事が嫌いだからって助けないのはおかしいよ!!」


「嫌いだなんて・・・一言も言ってないわよ・・・!」


「だったら何で拒むの!?嫌いじゃないのなら少なからずラビアタだってあの子の妖精の事を仲間だと認識してるんでしょ!?お願いだよラビアタ!いくらあの子だってこのままじゃマズいって事ぐらいわかってるでしょ!?」


「ううぅ・・・わかった!わかったわよ!教えればいいんでしょ!?何熱くなっちゃってんのよまったく!」


「ラビアタ・・・!」


樹の必死な訴えに心が折れたラビアタ。気が乗らない様子だがその場で樹に自分以外の魔法少女に強化魔法を与える方法を教え始める。

しかし、その間もコクシネアはモンスターの触手攻撃を凌ぎ続ける。一瞬の隙を見つけ後退し一旦モンスターとの距離を置いた。モンスターは触手を天に向けうねうねさせながらいつでもコクシネア達の攻撃に備えている。


「これだけ再生が早いのであれば高威力の魔法で一気に倒す以外方法が無いわね・・・私の全力でも倒しきれるかわからないしここはシフォンさんを呼び戻すべきか・・・」


コクシネアは自分では倒せないと判断し先ほど建物の屋上で話をしここから離れたシフォンを呼び戻すべく、腰に付いた巾着袋からスマートフォンを取り出そうとした。すると横からコクシネアの名を呼びながら彼女の元へ向かってくる樹がいた。よく見ると樹が持っているロッドには赤い粒子の光が纏っている。


「コクシネアさーん!この強化魔法を!」


そう言うと樹はロッドに纏った赤く光る粒子の魔法をコクシネアに向けて放った。放たれた赤い粒子の集合体をコクシネアは避ける事なく身体に赤い粒子を纏わせた。力が湧きいつもの自分の力とは違う事に戸惑っているのか右手のロッドと左の手のひらを見つめるしぐさを見せた。


「すごい・・・力が溢れ出てくるみたい・・・これが彼女の魔法・・・これなら!」


コクシネアはロッドを握りしめ視線をモンスターの方へ移すと一気に走り出した。ロッドを構えオーラソードを作り出すが、樹に授かった己の魔力を増幅させる赤の強化魔法でパワーアップしたコクシネアが作り出したオーラソードの剣身は先ほどまで作り出したオーラソードの剣身の何倍もの長さになり輝きも先ほどのよりも増している。その自分の身長よりも何倍も長いオーラソードを天に向かわせながらモンスター目掛け駆けるコクシネア。モンスターもこちらに向かってくるコクシネアを迎え撃つために全ての触手をコクシネア目掛け伸ばした。だが触手がこちら目掛けて狙ってくるのを確認したコクシネアは天の方へ向かせていたオーラソードをモンスター目掛けて振り下ろした。向かってくる触手を次々と切断し最終的にはモンスターの触手の根本付近を切り裂き全ての触手を切断した。だがこのモンスターの再生能力は恐ろしく早過ぎる。この情報を頭に入れているコクシネアはオーラソードを一旦消滅させ何度も瞬間移動をしてモンスターのもとへ向かう。既にモンスターの触手の再生が始まっているがモンスターのいる手前でコクシネアは思い切り跳ね上がりロッドを天に向かわせると再び長いオーラソードを作り出す。そして・・・


「はあぁぁぁぁぁあああ!!」


叫びながら落下し着地する直前でオーラソードを振り下ろすと着地と同時にモンスター本体を一刀両断した。だが真っ二つに両断されたモンスターは消滅せず、むしろ切断面から糸状の物が無数に現れ二つに両断された本体を繋ぎ合わせようとしている。


「ラビアタ!こっちに来て!」


コクシネアは遠くに離れた樹を呼ぶと樹は慌ててコクシネアのもとへ向かう。樹がコクシネアのもとに辿り着くと突然コクシネアは樹の腕を組む。突然の事に動揺したのか樹は思わずコクシネアの顔を見つめるとコクシネアはニッと微笑んだ。


「最後は一緒にトドメを指すよ、いい?」


「は、はい!」


コクシネアの提案に承諾すると「せーの」の掛け声で一緒に飛べ跳ねた。跳ね上がった勢いが落ちると樹は右手に掴んだロッドを、コクシネアは樹の腕を組んだ時に左手に持ち替えたロッドをモンスターに向け二人共ロッドに魔力を溜め始めた。


「今よ!撃てぇ!!」


コクシネアの気迫溢れる掛け声で再生を図るモンスターに二人は魔法弾を連射した。何発も魔法弾を撃った後高度が下がり二人は撃つのをやめ地上に着地する。何発もの魔法弾で巻き上がった砂ぼこりが消え始めると二人はモンスターの方へ恐る恐る見つめる。砂ぼこりが消えモンスターはというと微塵に砕け再生する力が無くなったか肉片は既に蒸発が始まっていた。

樹とコクシネアはモンスターを倒した。やっと難敵を倒す事ができ二人はホッと胸をなでおろした。


―――――――


一方その頃、樹達とモンスターが交戦していた場所の近くの建物の屋上に一人の魔法少女と思われる少女がモンスターとの戦闘が終わり安堵した樹達をしゃがみながら眺めていた。


「ややや、めずらしくコクシネアちゃんが苦戦してるから(わたくし)も加勢しようと思いましたが・・・さっきのオーラソードすごかったですね~・・・いつものコクシネアちゃんじゃないみたい・・・そして・・・」


少女は目線を樹の方へずらした。


「あの子が新人さんですねぇ~、遠目で見ても物凄く可愛らしいですね~ぬふふふふ・・・でもやっぱり近くで見たいなぁ~・・・よ~し」


少女は立ち上がりスカートをパンパンとはたくと足に力を籠め勢いよく建物から飛び降りた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ