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1話 「私のパートナーになって魔法少女になりなさい!」

男はひどく疲弊していた。


この日男は再就職する為とある企業の面接を受けていたのだ。そう、男は職を失っていた。

脱サラしてまで夢であった喫茶店経営していたが、客足が伸びず1ヶ月前に閉店を余儀なくされた。さらに信頼していた親友であり会社の元同僚に「個人で事業をしたい」と相談され最終的には「連体保証人になってほしい」と言われる。元同僚の事はもっとも信頼している存在であり「彼を応援したい」という思いが芽生え快く応じた。が、その後彼と連絡が取れなってしまう。しばらくすると自宅に明らかに日本人の風貌とは思えない謎の男達が何人も押し掛け「金を貸した男と連絡が取れなくなった。連体保証人のお前が代わりに払え」と恐喝され、できた借金が喫茶店の経営費含め「1億円」となってしまった。

とてつもない額の借金を背負う事になってしまった男は藁にも縋る思いで職に就き返済費用が欲しかった。だが今日受けた面接は自分でも思うほど手応えを感じられなかった。面接官の視線も冷たかったようにも感じた。

「きっとあそこは駄目だ」

弱々しく呟きトボトボ歩いてくうちに公園を見つけ、公園のベンチに溜め息を吐くと同時に腰掛ける。着ていたスーツを脱ぎ横に置いてまた溜め息を吐いて俯く。しばらくすると声が聞こえ顔を上げると子供達が公園で遊んでいた。無邪気に遊ぶ子供達に癒されしばらく遊ぶ子供達を眺めていた。

すると突然視線が何かに遮られてしまう。え?と声を漏らし目をパチパチさせると


「何を眺めているのかな、オジサン?」


若い女の子の声だ。さらに顔を上げるとこれまた見た目の推定で中学生の顔立ちをした女の子だ。

しかし、所々何かおかしい。長い髪をまとめたポニーテールが明るいというより輝くオレンジの髪色、服装も某朝の女児向けアニメの女の子が着ていそうな服を着ており、そして何より彼女の瞳がまるで夢と希望が詰まってるかのようにキラキラと輝いていた。一目見た時はコスプレイヤーかと思ったが違う、こういう女の子は毎日テレビやMahoo!ニュースとかでよく見た。そう、この子はまるで・・・


「魔法・・・少女・・・?」


「あ、うんそうだけど?」


彼女は包み隠さず魔法少女だと認めた。

最近世界で猛威を振るっている「モンスター」というこの世の物とは思えない怪物に唯一対抗出来る存在でモンスターとほぼ同じ時期に現れた魔法を操る少女、通称「魔法少女」なのだが

この街にも魔法少女がいるという噂は聞いていたがまさか本当にいたとは夢にも思わなかった。


「それで、オジサンはさっきから何を眺めていたの?今は私の事ジロジロ見てるけど」


「え?あ、あぁゴメン!」


男は慌てて目をそらし、「何となく遊んでいる子供達を眺めていた」と魔法少女の質問に答えた。


「本当に眺めていただけ?私が来なかったら一人で砂浜で遊んでいる女の子に声でも掛けようとしたんじゃないの?」


「え!?しないしない!しないよ声を掛けるだなんて!」


「そう?最近この公園だけじゃなく色んなとこでちっちゃい女の子を性的な目で見る男がいるみたいだからね、いたら懲らしめてやろうかと思ったけど・・・オジサンは性欲どころか覇気すら感じないから安心かな?」


何気に傷つく。確かに自分でも覇気が無いと思うと男は自己嫌悪に陥りガックリと肩を落とした。その様子を見た魔法少女が何か失言をしたと気付き手をバタバタさせながら慌てて男をフォローした。「気にしなくていいからね」とか細い声で自分を慰める魔法少女に声を掛けた。そしてなぜ自分が今こんなにも気が滅入ってるのか簡単に説明し始める。これを聞いた魔法少女は同情し哀れんだのか唐突にこんな提案をした。


「そうだったんだ・・・じゃあ私が特別な魔法、あなたにかけてあげる!」


「魔法?僕に・・・?」


「じっとしててね」とお願いされた男は今日行ってきたばかりの面接の時のように両手を拳にして両膝に置き背筋をピンとして真剣な眼差しで魔法少女を見つめた。すると魔法少女は前屈みになって右人差し指を男の顔に近づけるとくるくると指を回し「幸せにな~れ☆」と男の鼻先にチョンとつついた。男は何をされたのか理解できずただ唖然とした。


「はい!これであなたは幸せになります!背負った借金も吹っ飛んじゃうでしょー!」


魔法少女は両手を天高く上げ声高らかに宣言した。すると公園で遊んでいた子供達が魔法少女の存在に気付き一斉に駆け寄ってきた。これに気付いた魔法少女は「ヤバッ」と声を漏らし「じゃあねオジサン!元気でね!」と一言残しその場から思い切りジャンプし数十メートル離れた街灯に着地した瞬時に公園の近くの建物にジャンプして姿が見えなくなってしまった。駆け寄った子供達は魔法少女が見えなくなったのを確認すると残念がったり「いまのすごかったね!」と友達と談笑したりとベンチに座っていた男を見向きもせず解散していった。一方男はさっきの人間とは思えない魔法少女の跳躍力を眼にしただただ呆然としていた。


―――――――


辺りはすっかり暗くなっていた。

公園で会ったオレンジ髪の魔法少女と別れた男はその後も状況が理解できずしばらく石像になったかのように膠着していたが流石に辺りが暗くなり始めてるのに気付き現在の住居でもあるアパートに帰るところである。

「幸せになる・・・か」

そう呟くとさっき魔法少女につつかれた自分の鼻先をいじった。つつかれた時は魔法とか特に何も感じず、彼女の指先が鼻に触れたという感覚でしかなかった。もしかしたら何の根拠も無いが自分を勇気付ける為のおまじない的な事をしてくれたのだろうと推測した。フフッとニヤけ夜空に輝く月を眺め「明日も頑張ろう」そう心で呟きアパートに向い歩き出した。


数分後、今の住居であるアパートに到着した。2階の1番奥の手前の部屋が男の部屋である。40代前半の男には少し疲れる距離であり大量の食材を買い込んだ時には地獄である。階段も少し急でありこの日もハァハァ息を漏らしながら階段を昇りきり部屋の前で鍵を取り出そうとすると突然後ろから甲高い少女の声で男を呼ぶ声が聞こえた。


「見つけた!私のパートナー!」


男は慌てて後ろを振り向くとそこには人間の赤ん坊よりも小さく透き通った羽をバタバタ羽ばたかせている女の子が宙に浮いていた。

それを見た男は「うわぁ!」と叫び思わず腰が砕け倒れこんだ。状況が飲み込めず、え?え?と連呼する様子を見た女の子は「だらしないわねぇ!」と罵りその後もブツブツ言って光る鱗粉りんぷんを撒き散らし飛びながら男に近づき男の顔真正面に停止した。


「いい?今から私が言う事に絶対従いなさい?」


男は空飛ぶ女の子を目前にしてわけがわからずも恐怖したのか思わず「はい」と答えてしまった。


「私のパートナーになって魔法少女になりなさい!」


この時男は今の状況もあり理解がまったくできなかった。しかしこの時からこの男の人生が大きく変わろうとしている事にこの男はまだ気付いていない。


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