「きみらしいね」「縁助交際」「鉄の雨」
「らしさ」ってなんだ。
そんな固定概念だらけの言葉で
「わたし」を語らないで。
*
純潔を悲しみで汚した日、
私は加害者になった。
真白い身体に黒い胸、
徐々に黒が浸食してくる。
春を散らせて、
他人に押売りした
ふしだらな唇を舌で舐める。
ただ視線だけだった恋を失っただけ、
実るはずのなかった現実を
目の当たりにしてしまっただけ。
あなたの買った春は、
2日分の血液と共に足跡を消したのだ。
*
鉄の雨が降っている。
自然現象で空から落ちてくる鉄達は、
私達に打撲傷を与えて、
徐々に徐々にと足元を支配していく。
目立った外傷なんてなく、
そこらにあってもおかしくない青痣が
見えないところから増えていくという、
「応急処置」も「他人からの心配」も
何もない無意味な傷達が
私の体に刻まれていた。
毎日痛みが体を引っ張っていて、
今にも倒れてしまいそうな状況が
延々と続いてるね。
痛み達に意味なんかなかった、
痛み達に意味なんかなかった。
いつか筋肉組織や骨でさえも蝕むのだろう、
雨具を買う金すらない私達に救いなんてない。
鉄の雨が降っている。
たまたま口の中に落ちてきた一片のカケラ、
それは酷く苦くて飲み込めず、
なのに吐き出すこともできない。
なぜだか悲しい気持ちになっていく。
自分だけが苦しいわけじゃない、
他人だって苦しい思いをしている、
そんなの理解していたはずなのだ。
なのに、
その味をいざ咀嚼してみると、
これでもかというほどに
涙が止まらなくなった。
雨具を買う金がないのは自業自得、
救いがなくても雨に打たれていても
「仕方がない」で済まされてしまう。
事実を受け入れきれない私達弱者は
ただただ居場所を求めて旅を続けて、
ナカマ同士で傷を舐め合いながら弱音を零す。
「人を傷つける」「人が傷つく」ということは、
ただの自然現象でしかない。
避けては通れない道を
無理矢理にでも避けようとして、
そうやって道を外す。
その道に500円玉はあった?
傘を買う金は落ちてた?
鉄の雨に打たれて泣く自分の愚かさに気付き、
今までの人生をたったの4文字で
表せるものにしてしまった。
たったの4文字程度しか作れなかったのよ。
「自業自得」、
鋭利な刃物で背中を刺されたような痛みだった。
鉄の雨が降っている。
自然現象には逆らえず、
被害者が増えていく。
被害者は加害者に、
加害者は被害者に、
きっとなりたかったはずなのに。