「鳥籠」
ゴールデンウイーク初日の朝、
自分だけの特権だった人を失った。
ただトラブルが重なって、
受信された文面ひとつで確定化して、
何粒もの涙を流して。
私は彼女にとって特別だった。
彼女も私にとって特別だった。
特別が廃れ、
虚ろな心は指を通して
ケータイを扱う。
数日後、初対面の女性と出会う。
そして体を重ねた。
つくづく向いてない、
潔癖な顔がチクチクと心を突いてる。
白かった心を汚して、
その汚れに嫌悪感を抱いて、
それでもやめれなかったの。
私が人と体を重ねるときだけ、
他人の特別になることができるから。
寂しかったんだよ、知ってる。
性欲がないのに行為を求めるのは、
誰かの特別に少しの時間でもなりたかったから。
家族じゃなくていい、友達じゃなくていい、
恋人じゃなくていい、形なんて問わない。
お互いが特別でいられた家族は亡くなったね。
友達だって性別の壁を見て上辺だけだったけ。
心から好きだと思えた恋人とは世間が許さなかった。
私は何を求めてもダメなんだ。
窮屈な世界に飽きたよ。
また、手が汚くなる。
触れられるのは嫌い、私が触れるだけ。
求められるたびに溢れ出す多幸感。
こうして「1度きりの関係」を、
何度も何度も繰り返すの。