ブラッド・ダイヤモンド
『ブラッド・ダイヤモンド』(原題:Blood Diamond)は、2006年製作のアメリカ映画。
アフリカのシエラレオネ共和国での内戦(1991年 - 2002年)での、「ブラッド・ダイヤモンド」(紛争の資金調達のため不法に取引されるダイヤモンド、いわゆる紛争ダイヤモンド)を巡るサスペンス。
内戦が続くアフリカ西部のシエラレオネ共和国。
反政府勢力のRUF(革命統一戦線 Revolutionary United Front)に村を襲われた漁師のソロモン・バンディー(ジャイモン・フンスー)は、家族を逃がすことができたものの、自身はRUFに捕まってしまう。
RUFの武器調達の資金源となるダイヤモンド採掘場での強制労働中、ソロモンは大粒のピンクがかったダイヤモンドを発見し隠そうとするが、RUFのポイゾン大尉に見つかってしまう。丁度その時、政府軍による攻撃が始まり、顔を負傷したポイゾンとともに、ソロモンは留置所へと連行される。
一方、ローデシア(現・ジンバブエとザンビア)出身の白人傭兵のダニー・アーチャー(レオナルド・ディカプリオ)は、RUFに武器を調達し、代わりに受け取ったダイヤモンドを隣国リベリアへ密輸中に逮捕されてしまう。
留置所でのソロモンとポイゾンのやり取りを聞いたアーチャーは、ソロモンが見つけた大粒のピンク・ダイヤを手に入れて、紛争の絶えないアフリカの地を脱出するための切符にしようと考える。
(wikipedia抜粋)
監督は「ラストサムライ」「マーシャル・ロー」を筆頭に、あらゆる人の生き様を通じて特大スケールで強いメッセージ性を描くことに定評のあるエドワード・ズウィック監督。
2006年に公開されたこの作品もご多分に漏れず「紛争地域から裏ルートで取引されるダイヤは反政府軍やテロ組織の資金源となり、戦争を混沌化させてしまう現状がある」として、アフリカ人民大勢の血で贖われる紛争ダイヤを取引することの危険性について消費者に警鐘を鳴らす内容となっています。
物語はアフリカ、シエラレオネの小さな村から始まります。
妻と子供を抱えて暮らす漁師のソロモンは、学校に通う息子を迎えに出掛けた帰り道、RUFという反政府武装組織に村が襲撃されているのを目撃します。
ISISを彷彿とさせる情け容赦のない彼らの目的は簒奪と人狩りです。
子供は少年兵として接収、屈強な男はダイヤの採掘場の労働力として、それ以外の人間は正規政府への加担者にならないよう手足を切り落とすという、怖気を覚えるような冷酷さで勢力を拡大させている組織であります。
襲撃から身を呈して家族を避難させたソロモンは、強制労働者としてダイヤの採掘場へと送り込まれます。
そこでこのお話のキーアイテムとなる、100カラット相当の特大のピンク・ダイヤ(現在市場価値にして30億円は下らない代物)の原石を見つけてしまうのです。
この映画にはもう一人の主人公が居ます。
真面目に漁師として働く原住民のソロモンとは対照的に、元傭兵で紛争ダイヤの流通に加担し財を成す小悪党のダニー・アーチャー(レオナルド・ディカプリオ)。
彼はいつものようにダイヤと引き換えにアメリカ軍からの横流し品を武装勢力に売りつける奔走のさなか、国境越えの際にドジを踏み、正規軍に拘束されてしまいます。
拘留された場所でダイヤ採掘場から正規軍の手によって解放されたソロモンと出会い、偶然にもピンクダイヤの存在を知ってしまいます。
元上官でもある軍の大佐の元で息苦しくダイヤを売りさばくアーチャーは、ソロモンの隠したダイヤを手に入れ、混沌渦巻くアフリカの大地から脱出するための資金源とするためソロモンに詰め寄ります。
離ればなれになってしまった家族と引き合わせるという約束などを駆使してダイヤ横取りしようとするのですが、果たしてうまく行くのか?
前述通り、紛争とテロ組織の資金源となるダイヤの密輸を取り巻く環境を緻密に描いた作品となっています。
射幸心からなるべく安価でーー例え違法だろうと少しでも安く結婚指輪のダイヤを買いたい先進国消費者の心理と、それを糧に肥大化する武装勢力とアフリカ内戦、という構図がとても狂気的に思えました。
少年兵の洗脳や、容赦ない描写の連続は徹底して現実を表そうという制作者の強い意図を感じさせる仕上がりとなっています。
漫画「ブラック・ラグーン」や、リオデジャネイロ・ファベーラを舞台としたギャング映画「シティ・オブ・ゴッド」を彷彿とさせる無法具合ですが、ロアプラナやファベーラのように貧困が生み出すそれとは違い、政府と反政府軍による政治的内紛という環境下はさらにタチが悪いことに現地民にとって地獄に等しいのである、とまざまざ見せつけられる一作でした。
爆煙と粉塵、銃声と耳元を通り過ぎていく死の影、そういった映画のスリルに乗せて叩きつけられる現実は現在も世の中のどこかで続いていると考えると、日本ってすんごい平和なんだなと再認識してしまいます。という感想そのものがもはや平和ボケなのでしょうけれど、それが正直なところですね。
ともあれ、武器商人以外のロクな戦争ビジネスを知らなかった僕にとって紛争ダイヤというものの存在を知る契機となった作品であり、見識を広める上で映画の持つ高い衒学性を知る上でも考えさせられた作品でした。
(傭兵ディカプリオ様の勇姿とテイルズオブジアビスのアッシュばりにカッコいい最期について語るつもりがテーマ性が心にぶっ刺さってしまい語るテンションではなくなってしまった模様)