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虐殺器官

 サラエボで発生した核爆弾テロによって世界中で戦争・テロが激化した結果、アメリカを始めとする先進諸国は厳格な個人情報管理体制を構築しテロの脅威に対抗していた。


 十数年後、先進諸国からテロの脅威が除かれた一方、後進国では内戦と民族対立により虐殺が横行するようになっていた。事態を重く見たアメリカは新たに情報軍を創設し、各国の情報収集と戦争犯罪人の暗殺を行うようになった。


 アメリカ情報軍に所属するクラヴィス・シェパード大尉は、後進国で虐殺を扇動しているとされるアメリカ人ジョン・ポールの暗殺を命令され、相棒のウィリアムズら特殊検索群i分遣隊と共にジョン・ポールの目撃情報のあるチェコ・プラハに潜入する。


 プラハに潜入したクラヴィスは、ジョン・ポールと交際関係にあったルツィア・シュクロウプの監視を行うが、次第に彼女に好意を抱くようになる。ある日、クラヴィスはルツィアにクラブに誘われ、そこで政府の情報管理から外れた生活を送るルーシャスたちと出会った。


 その帰路で、クラヴィスはジョン・ポールに協力するルーシャスら「計数されざる者」に襲撃され拘束されてしまう。


(Wikipedia抜粋)


 ご存知”ゼロ年代最高のフィクション”と称されたSF小説のアニメ映画版がアニメーション会社の紆余曲折を経て、ついに登場でございます。


 15Rということでなかなか手加減のないグロさを味わってきました。小説ではサッと過ぎ去った描写が実際に画になるとエグさ万倍といったところで見応え大有りでした。実際にはエリート軍人であるSF装備の主人公がカラシニコフを抱えただけの少年兵を処理っていくあたりや、あいつやこいつが死んでいくところなど。


 その他の演出もかなり力が入っていてびっくりの連続。あらすじ通りこの世界のアメリカは同じく伊藤計劃氏著の「ハーモニー」の前身となる個人情報管理社会であり、それを印象付ける監視カメラ目線ワークから冒頭のサラエボの核爆発に始まり、次の場面で「クラヴィスの会見」へとつながって回想チックに本編へと入っていく導入となりました。


 原作の半端ねェ密度をどう処理するか注目して見ていましたが、主人公クラヴィスの生い立ちを大幅にカットしたり、プライベート・ライアンの冒頭数分ネタなどの余分な(ファンとしては入れて頂きたかった)修辞レトリックを削ることで、うまく主題である「言葉と社会と人間習性」にスポットを当てる構成になっていたと思います。


 具体的な物語としては近未来、赴く先の国々で紛争・虐殺が巻き起こるとされる謎の人物ジョン・ポールを捕まえるため、主人公であるアメリカの情報軍所属クラヴィス・シェパード大尉が奮闘していくという入りとなります。


 元々は地域紛争の戦争犯罪者を暗殺するために設立されたアメリカの非公開組織の所属なのですが、いくら現地の武装集団の頭を潰しても各地で次々と頻発する虐殺が止まる気配がない。その中で謎のアメリカ人であるジョンが浮かび上がったわけです。


 さて、この主人公であるクラヴィスくんですが、軍人であるにも関わらず文学やクラシック音楽に非常に明るく、内に秘めたる多感さといわんや無神経を要される要人殺害任務に反してその辺の子供より遥かに高いものを持っておられるわけであります。


 そんなですから、言語学者であり、かつてマサチューセッツ工科大学の研究が評価されてペンタゴンの雇われ研究員となっていたジョン・ポール氏とも哲学的禅問答がごとき人間の脳に言及した議論を初対面から繰り広げていきます。


 ジョンは古今東西の虐殺の歴史を研究し、その中で虐殺の前兆として地域で流行し始める独特の『文法』があることを突き止め、それを意図的に製作し、広報相談要員となって文法を流布することで虐殺を巻き起こすのであるとクラヴィスに答えます。


 果たしてそんなことを繰り返すジョン・ポールの目的とは。そしてその元恋人であるルツィアと接触を重ねる内に関係を深めてしまったクラヴィスの行方は? という方向にスイングしていきます。


 『言葉と人間』というものに深くフィーチャーした話でありながら、世界観やSF設定の作り込みもまったく余念が感じられず、見事に作品を際立たせる要素に落とし込まれています。


 原作はお世辞にもSF小説の入門編とは言い難いハードな空想脳科学的内容ですが、映画は幾分とっつきやすいようになっています。


 これを機に未見のハーモニー劇場版、さらに三部作の終作品である『屍者の帝国』にも触れていきたいと思います。


追伸:エピローグの改変、ナイスでした。原作まんまやるとホントスットコドッコイだなこいつってなったでしょうし。まぁあのあと家に引きこもってああなる場合もあるよね。ピザとビールおいしいもんね、しょうがないね。

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