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1.こんなことはあってはならない

 俺には友達がいない。

 なぜなら俺には友達を作る気がないからだ。

 断じて友達ができないとかそういうわけではない。

 断じてだ。

 俺は軽く焼き上げた食パンに焦げ目がついた目玉焼きを乗せたものを頬張りながら自家製ブレンドのコーヒーで流し込む。

 他愛のない会話を妹とともにしながら毎日こうしてごく普通の朝を迎える。

 食事を終えた俺は重たい腰を上げる。

 そうしていつもと変わらない通学路を歩いていく。


 俺はこの辺一帯でそれなりの高校に進学した。

 入学式から約1か月が過ぎそろそろ特定のグループが確立してくるころだろう。

 俺はその中に溶け込めずにいた。

 そう、入学式から1週間、俺は誰とも会話をしていない。

 誰にも話しかけられずに、誰にも話しかけずにいた。

 コミュ障の俺には自分から話しかけるには経験値が足りなさすぎる。

 たとえば、俺がレベル1の駆け出し冒険者だとすれば、レベル100の裏ボスを倒すくらいにだ。

 ただ話しかけられるのであれば、その会話を続けるノウハウは持ち合わせていると思っている。

 さっきのたとえで言えば後者はレベル1のスライムになる。

 俺のレベルが変わっていないのは気にしないでほしい。

 だから俺は自分から話しかけずに話しかけるのを待っていた。


 そして早一ヶ月がたった。

 いまだに誰とも話していない。

 きっと俺からあふれ出るエリートのオーラがあふれているからだ。そうに違いない。

 自分で言うのもなんだが、俺は自分自身をイケメンだと思っている。

 さらに勉強ができる。

 入学後すぐに行われる入学おめでとうテストでは学年2位を誇っていた。

 運動があまりできないのがあれだが他はよくできていると考える。


 だがそろそろ限界を感じている。


 家を出てから20分ほどが経つ。

 俺がこの高校を選んだのは単純に家が近いからだ。

 そんなことはどうでもよく、門をくぐり下駄箱で靴を履き替える。

 この「西駒第一高校」は県内でも規模の大きな高校で、クラスがFクラスまで存在する。


 俺は自分の教室、1-E組へ向かい、窓際の後ろから2番目の席に座る。

 一番後ろでないのが残念だが割とお気に入りのポジションである。

 ちょうど座った瞬間にHR開始のチャイムが鳴る。

 我ながらよく計算ができている。

 そうして前方の扉があく。

 担任だ。

 教師職について3年目の新人の女性の先生だ。

 先生は名簿順に名前を呼んでいく。

 次々と生徒の名前が呼ばれていく。

 そして俺の名前が呼ばれる。

「相馬伊織」

 ここは目立たないように軽く挨拶する。


 そうして怠惰の授業が始まる。


 午前の授業が終わり購買のパンを買う。

 そして中庭のベンチでそれを食べる。

 これが俺が1か月間続けてきた日課だ。


 べつにダチと一緒に食う必要はないからな、そもそもいねぇけど。


 俺はさっさとパンを食べ、少し横になる。

 5月は俺にとって一番好きな気候だ。

 日なたは暑いが日陰はちょうどいい体感温度だ。

 俺はそのまま横になっていると校舎のほうから人がやってくる。

 もちろんここは俺の場所だから、どけといわれてもどかんぞ。


 しばらくすると俺が横になっているベンチの横にその生徒はやってくる。

 女子生徒だ。

「私もそこに座っていいかな」

 そう声をかけられる。

 こんなことがあっていいのか、そいつはうちの学年では有名な美少女だった。

「……えっ、あっ、はい」

 思わずきょどってしまった。

 そして俺はおきてベンチの端に移動する。

「ありがと♪」

 と肩で切りそろえられた髪を心地の良い風で揺らしながら彼女は席に座る。

 普通のボッチなら骨抜きにされている光景だ。


 こんなことがあっていいのだろうか

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