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記憶の印  作者:
26/26

25.正体不明

「これは…………」

 エスラルは緊張を覚えながら、剣の柄に手をかける。

 気配は一つ。

 大きな力を纏っているようだ。

 それは確実に、二人の方へ迫ってきていた。

「誰なの………?」

 フレアは不安そうに辺りを見回す。

 と、不意に茂みから影が飛び出した。

 常人では視認できないほどのスピードで、真っ直ぐフレアに向かう。

「スタージュさん!!」

 エスラルが声を上げた時には既に遅く、フレアはどさりと地面に崩れ落ちた。

 駆け寄ろうとするエスラルの前に、先程の影が立ち塞がる。

「ちょっとキミ」

 街中で道を尋ねる時のような調子で声をかけられ、エスラルは思わず相手を見上げる。

 フレアよりさらに高い背の持ち主は、精悍な顔つきをした青年だった。

「ちょっといいかな」

「そこ、退いてくれますか?」

 エスラルは青年を睨みながら剣を抜く。

 青年が苦笑しながら答える。

「まぁ落ち着けって。オレはキミに用があるんだからさ」

 エスラルは無言で切りかかる。

 しかし、それはいとも簡単に受け止められた。

 エスラルが振りかぶった時、まだ剣を抜いてもいなかったのにだ。

 そんな素早い動きを見せた当の青年は、困ったようにエスラルを見つめている。

「……………」

 エスラルは予想通りといった様子で剣先を下げた。

 目の前の青年はからは、大きな力が感じられたのだ。

 今の自分では太刀打ちできそうにもない、威圧感。

「スタージュさんは………」

「大丈夫、気絶しているだけだよ」

 させたのはそっちだろう、という言葉を呑み込んで、エスラルは青年を見上げた尋ねた。

「用って何ですか?」

 青年は苦笑を笑顔に変える。

「キミの力についてさ」

「!」

(どうして……クラウスの時を見られてた?)

 そんなエスラルの心中を察したように、青年はにこりと笑って続ける。

「いや、オレ達の仲間の一人が、制御されてても力を感じることができるんだよ」

 そんな能力は、お伽話の中でしか聞いたことがなかった。

「信じられませんね」

「そんなこと言われてもなぁ…………それで、一緒に来てもらえるかい?」

「……………」

 エスラルは怪訝そうに青年を眺めた。

「貴方は何者なんですか?」

 眺めながら考える。

 今クラウスに戻れば、この青年を倒せるかもしれない。

 フレアを放って、青年について行くわけにはいかない。

 しかし、その考えはすぐに打ち消された。

「オレかい?オレは………」

 圧が、跳ね上がった。

 エスラルは思わず一歩後ずさる。

 クラウスでも勝てる気がしなくなった。

「ケーフ・カルロっていうんだ。一緒に来てくれるよな?」

 どこかずれた答えを、青年は返した。

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