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記憶の印  作者:
25/26

24.問題

 二人は早くも出発し、森の中を歩いていた。

 人気は無く、ひっそりと静まり返っている。

「ごめんなさいね、油断してしまって……」

 事情を聞いたフレアが、申し訳無さそうに謝る。

 エスラルは苦笑して、首を振った。

「いえ、俺もですから」

 油断しすぎていた。

 そのせいで、敵の情報を掴むことができなかった。

(もっと…うまくやれたはずだ)

 エスラルは唇を噛む。

 予想外の出来事だったからといって上手く対処できなかった自分に腹が立った。

「……大丈夫?」

 気がつくと、フレアが心配そうにエスラルを見つめている。

「怪我、まだ治っていないのかしら」

「あ、いえ、大丈夫です」

 レシェードに飛ばされた時に作った傷はフレアが既に治していて、文句のつけようが無いほどに完璧だった。

 どうやら責任を感じているらしく、念入りに呪文を唱えていた。

「スタージュさんは……」

「うん?」

 エスラルは口ごもり、思考する。

 しかしやはり言おうと決意し、再び口を開いた。

「スタージュさんは人を殺したこと、ありますか?」

「!………」

 突然の質問に、フレアは驚いた顔をした。

 意表を衝かれたらしく、立ち止まる。

「どうしてそんなことを……?」

「俺、今まで人を殺したこと無かったんです」

 エスラルは答え、同じく立ち止まる。

「でも俺、初めて人を殺しても特に何も感じませんでした。寧ろ快感だった」

 その声は震えている。

 自身に恐怖しているようだった。

「普通の人は後悔したり怖がったりするんでしょう?なのになんで…おかしいんでしょうか、俺は。それに……」

 それに――――――

 あのアサシンと繋がりのあった男が死んだ時、妙に安らかな気分になった。

 噴き出す血を見ていると、どこかで同じような光景を見た気がしたのだ。

 とても懐かしく愛しい記憶は、けれどエスラルの中には見つからなかった。

「……やっぱり、良いです。自分で考えます」

 エスラルは首を振って言った。

 そして、再び歩き出す。

 フレアに尋ねても、分かることはないだろう。

 自分で考えなければならない問題だ、とエスラルは感じていた。

 と、その時。

「!」

 エスラルが一瞬びくりとして、歩みを止めた。

「どうし……!」

 フレアも尋ねかけ、動きを止める。

「何か来る……?」

 気配が、迫っていた。

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