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記憶の印  作者:
24/26

23.得たものは無し

 横向きの状態で木に激突したエスラルは、衝撃で地面に崩れ落ちた。

 左腕を強打し、ずきずきと鈍痛を伝えている。

 しかし、骨は折れていないようだ。

「………」

 エスラルは無言で、立ち上がった。

「お?まだやるの?いいねぇ」

 レシェードが楽しげに笑う。

 完全に、この勝負を楽しんでいるようだ。

 エスラルは痛む左腕を無視して、切りかかった。

 レシェードがそれをナイフで受け止め、振り払う。

 間髪入れず、レシェードはいつのまにかもう片方の手に持っていたナイフで、エスラルに切りつけた。

 エスラルは軽く躱し、剣を振りかぶる。

 その脇腹を狙い、レシェードがナイフを振るう。

 と、エスラルはその状態からナイフごとレシェードを蹴りつけた。

 レシェードは避けきれず、まともに飛ばされる。

 そこに、エスラルは剣を構え突進した。

 「ちっ」

 どこか嬉しそうに舌打ちし、レシェードが早口で呪文を唱える。

 エスラルの目の前に、大木が倒れかかった。

 咄嗟に後ろに飛び退き、エスラルは大樹で塞がれた視界をじっと見つめる。

 一時的に、林はしんと静まり返った。

 エスラルは一心に、向こう側からレシェードが来るのを待つ。

 神経を集中し、気配を探す。

 そして背後に振り向き、後ろから来たレシェードの斬撃を受け止めた。

「へぇ……やるじゃん!」

 そう言って笑みを浮かべるレシェードの額には、少量の汗。

 相手の方は剣術と魔術の併用で、疲弊しているようだった。

(あれくらいでそんなに消耗するかな……?)

 エスラルは疑問を抱きつつ、レシェードを振り払う。

 と、唐突に目を見開いた。

 レシェードがにやりと笑う。

「やっと気づいたか?」

 パチパチと何かの焼ける音が、林に響いていた。

 鈴虫の鳴き声は、いつのまにか止んでいる。

 火の手が、じわじわと迫っていた。

 それに気づき、エスラルは顔を顰める。

「面倒なことをしてくれましたね。ずいぶんと力を使ったでしょうに」

「はは、いい考えだろ?」

「………」

 次の瞬間、エスラルは目にも留まらぬ速さで動いた。

「がっ!」

 レシェードが声を漏らす。

 その胸には、エスラルの剣が深々と突き刺さっていた。

「本当は色々と聞き出したかったんですが……仕方ありませんね」

 消火の方が先決である。

 二人が戦っている間にも炎は増大し続けていたらしく、周りは火に囲まれつつあった。

 エスラルが剣を引き抜き、レシェードはどうと倒れる。

 もう動くことは無く、ただ虚ろな瞳が炎を映していた。

(さあ…どうしようか)

 その時、不意に炎が消えた。

 一瞬にして、林を赤で照らしていた炎がまるで電気のスイッチを切るように消え去った。

「だ、大丈夫だった?」

 声がした。

 聞き慣れた、フレアの声。

 どうやら、魔術で火を消したらしい。

 黒い炭と化した茂みから現れたフレアはレシェードの死体を見て眉を顰めたが、すぐにその装束に気づき目を見開いた。

「すみません……殺すべきではなかったのに」

「いいの。仕方なかったんでしょう?」

 エスラルは頷き、フレアを見上げる。

「……行きましょうか」

「……そうですね」


此処を放置して早2ヶ月……。

転居等の事情でもろくにお知らせもせず執筆を放置したことをお詫び致します。

放置中にもかかわらず毎日足を運んでくださった方々への深い感謝の気持ちでいっぱいです。

アクセス数があまりにも少なければ閉鎖しようかとも考えていたので、励みになりました。

本当にありがとうございます。

少々落ち着いたので、また執筆を続けていこうと思います。

しかし作者はまだ学生で2月は試験や行事などが多数重なりますので、更新は遅れがちになるかもしれません。

精一杯努力しますので、今後ともどうぞよろしくお願い致します。

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