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記憶の印  作者:
23/26

22.後悔

 灰装束の青年レシェードはにやりと笑った。

 獲物を見つけた肉食獣のようで、けれど爽やかさを忘れない、そんな笑み。

(バレたかな……)

 エスラルは警戒してレシェードを見つめる。

「見かけない顔だな……旅人なのか?」

 どうやらエスラルの正体には気づいていないようだ。

 レシェードがようやくナイフを拭き終わり、再び構えた。

「……拭いた意味無いじゃないですか」

「気にすんな」

 藍色の目が笑う。

 エスラルはレシェードを睨んだ。

 その目には、困惑と嫌悪が浮かんでいる。

「何故この人を殺したんですか?」

 血の池の水源となっている男を指差して訊く。

 レシェードはきょとんとした。

 何故そんなことを問われなければならないのか、と怪訝な表情を見せる。

 けれどすぐに、おどけたように体を揺らした。

「何故って、喋られると困るからさ。まぁ半分くらいは俺の気晴らしだけどな」

 ナイフを、エスラルに向ける。

「お前がいるのにも気づかなかったよ」

 嘘には聞こえない。

 そもそも、エスラルに気づいていたのならわざわざ目立つように殺す必要は無い。

 あとで2人とも速やかに始末すれば良いのだから。

(……馬鹿?)

 エスラルは半ば呆れて、剣を構える。

「さぁて、次はお前殺さなきゃな」

 ナイフがエスラルの首目掛けて飛ぶ。

 だがすぐに、剣に弾かれた。

 レシェードはどこから出したのか、両手に5本ほどナイフを用意している。

 そしてそれを、4本同時に投げた。

 キン、という音が4回響き、ナイフが次々と地面に落ちる。

 レシェードは間髪入れず、最後に残ったナイフでエスラルに切りかかった。

「っと!」

 それさえも、エスラルは軽々と受け止めた。

 レシェードはまたも愉快そうに笑う。

「久しぶりだな、ここまで無傷なヤツ。楽しませてくれよ?俺は退屈してるんだ」

 ははは、と笑いながら、レシェードはエスラルから距離を置く。

(偉そうな奴……)

 エスラルは顔を顰め、剣を構え直した。

 レシェードが笑顔のまま、呪文を唱える。

 エスラルの体が吹っ飛び、そのまま木に激突した。

 大木が大きく揺れ、軋む。

「もしかして、魔術は全然なのか、お前?」

 残念そうに、けれど嬉しそうにレシェードが言う。

(変化、かけるべきじゃなかったかな)

 少し後悔しながら、エスラルは再びレシェードを睨んだ。

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