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記憶の印  作者:
21/26

20.短い姿

「眠らせたまま、殺そうって言うんですか」

 エスラルは男を睨んだまま言った。

 即座に男は頷き、口を開く。

「邪魔させる訳にはいかない」

「だったら……」

 エスラルは微かに笑った。

「僕が邪魔しようかな」

 直後、エスラルの口から呪文が漏れた。

 一陣の風が、林の中を駆け抜ける。

 それと同時に、変化が解けた。

 銀髪の少年が、現れる。

 深緑のマントに、王家の印が浮かび上がる。

 風に揺られ、印は月光に照らされ光った。

 封じていた魔力が体に舞い戻った。

 湧き上がる魔力が、辺りに空気の渦を作る。

「な……?」

 男をよそに、自分に掛けられていた束縛魔術を解く長い呪文を、ものの数秒で言い終える。

「何を……」

 男は早口で呪文を唱えだした。

 クラウスはそれより早く呪文を呟き、男の魔術を振り払うように、手を横に振る。

 同時に、クラウスに向かって噴き出された炎が、呆気無く消えた。

「何だお前は……?」

 男は驚愕した様子で呟いた。

 クラウスから並々どころか自分をも超える魔力を感じ取ったせいだろう。

「……ふぅ」

 クラウスは溜息を吐いた。

 渦巻いている魔力を抑え、男を見る。

「……これ、抑えるの結構疲れるんだよ?まぁフレアさんの前じゃ魔術使う必要無かったから封印魔術かけてたんだけどね」

 困ったように言って、クラウスは再び溜息を吐いた。

 月の光が、クラウスの揺れる銀髪を照らす。

「君」

 クラウスは幼い声で、男に呼びかけた。

 そして気づいた頃には、男は首筋に剣を押し当てられていた。

「……何故、斬らないんだ?」

 男は怪訝そうに尋ねた。

「ちょっと訊きたいことがあってね」

 子供らしい無邪気な笑みを浮かべながら、クラウスは言った。

「アサシンって組織、知らない?」

「知っている」

 男は即答した。

 クラウスは目を見開く。

「ほんと?」

「ああ。旅人を差し出している相手だ」

「!?」

「豊作の話は本当だ。あの方達に人間を差し出しているから、この村は安泰なんだ」

(……魔術じゃなさそうだな…何か特別な能力かな?)

 クラウスは、呪文を唱え始めた。

 見る間に、黒髪の大人びた少年に様変わりする。

 魔力が、吸い込まれるように消えていく。

(そろそろフレアさんが起きるといけないしなぁ)

 驚く男を見ながら、そんなことを思った。

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