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記憶の印  作者:
20/26

19.噂の正体

 色々と思うところはあったものの、二人は眠りについていた。

 勿論ボロ布は使わず、マントに身を包んで柱にもたれている。

「っ!?」

 気配を感じて目を覚ましたエスラルは、体が動かないことに気がついた。

 小屋の外では、満月がぼんやりと光を放っている。

 雲は無く、快晴の夜だった。

「旅人さん」

 小屋の入り口で、声がした。

 案内人の、男の声。

 エスラルは体を動かそうとするのを諦め、男を睨んだ。

「この村は昔から、飢饉が少なかった。他と比べて、劇的にな」

 何を言っているのかと訝しむエスラルをよそに、男は語る。

「日照りが続くことも無ければ、長雨も無かった。何故だか分かるか?」

 床を音も無く歩きながら、男はエスラルに近づく。

「俺が、生贄を捧げているからだ」

 そのとんでもない言葉に、エスラルは耳を疑った。

「生贄といっても、神様にではないが、まぁある人物にだ」

(……嫌な予感がする)

「だがその方に人間を差し出すと、いつも豊作になるんだ。しかも犠牲になる者が多いほど、その効果は増す。嘘じゃない」

 男は一人で喋っている。

「代わりに、捧げなかった時は嵐がやってきて、村は半壊した」

 男はエスラルを背負い、立ち上がった。

 エスラルはなされるがままに男の背中に乗せられる。

「そして今日が、またあの方の訪れる日なんだ」

 エスラルは口さえも動かせず、ただ黙然と地面を睨んでいた。




「はぁ……疲れたな」

 ずいぶん苦労したらしい男が、フレアを担いでやってきた。

 その額には、薄っすらと汗が浮かんでいる。

 村の外れの、林の奥。

 真夜中の林は、しんと静まり返っていた。

 鈴虫の音だけが、こだまする。

 フレアを地面にそっと寝かすと、男はエスラルを見た。

「何か言い残したいことは?」

 静かな声で、そう言った。

 口だけ自由になったことに気づき、エスラルは口を開く。

「どうやってスタージュさんを?」

「普通にノックして入ったら出迎えてくれた」

(は?)

 半ばフレアに呆れ、エスラルは溜息を吐く。

(フレアさん……色んな意味で無防備すぎだよ……)

 そして、フレアが気を失っていることに気づく。

「とにかく、スタージュさんを起こしてください」

 無理を承知で、言う。

「却下」

 予想通り、無理だった。

「そいつはかなりの魔力を放っているからな」

 魔力とは、人間が魔術を使う際に消費する力だ。

 意識していないと、膨大な魔力は体から漏れ出てしまう。

 エスラルは、唇を噛んだ。

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