10.それぞれの戦闘
「違和感は貴方達だったんですね」
「そうだろうな」
先頭の男が小振りの斧を振り回しながら答える。
「カーラさんには誰もいないと言われましたが、気配を感じたので」
「大したもんだ」
エスラルは、隣の部屋の方へ目をやった。
「ああ、隣にも送り込んだぜ」
エスラルの心内を察して、男は言った。
壁の向こうで、銃声が響く。
「スタージュさんなら心配要りませんね」
「そうか?」
「はい」
エスラルは頷くと、剣を構え直した。
「じゃ、こっちはこっちで片付けますから」
「何ぃ?」
男の視線がきつくなる。
エスラルは無視して、切りかかった。
暗い部屋で、火花が散る。
エスラルは自分に向かってくる刃を次々と受け流し、剣を振るった。
紅色の飛沫が部屋に飛散し、模様を作り上げていく。
「あれ、ずいぶん呆気無いですねぇ」
エスラルは剣を鞘に収めながら言った。
そしてまだ息のある男に話しかける。
「リーダー的な人って、この中にいますか」
「いないな」
男は荒い息を吐き出しながら、にやりと笑う。
「俺達は3つの組に分かれたからな」
「!」
エスラルはようやく思い出した。
この屋敷にいるのが、自分とフレアだけでは無いことを。
(なんてことを失念してたんだろう)
間に合うことを祈りながら、エスラルはカーラの部屋へと向かった。
パン、と部屋に銃声が響いた。
「?」
ベッドから起き上がったのはフレア。
その目の前の結界に、銃弾が張り付いているのを見つける。
結界は肉眼では見えず、銃弾はただそこに浮いているように見えた。
「…なっ……?」
撃った相手はかなり驚いているようで、宙に浮く銃弾を凝視している。
「なんで…魔術貫通弾なのに……」
「私の魔術にそんなもの効かないわよ」
フレアはざっと部屋を見渡した。
10人。
「襲撃?まぁいいわ。……エスラル君は?」
「あの坊主か?今頃15人相手に苦戦してんじゃねぇの?」
「……」
フレアは無言で、右手を上げて敵の方に向けた。
そして、何かぼそりと呟く。
途端、10人いた男達は消えていた。
跡には、灰が舞っていた。
「……」
隣の部屋から、話し声が聞こえた。
そして直後、バタンとドアが開く音がして、廊下を足音が駆け抜ける。
「…あ、カーラちゃんが」
そこで思い出して、フレアは足音のした方へと一歩踏み出した。