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記憶の印  作者:
10/26

9.疑問の向く先

「犯人の手口とかって、分かってるんですか?」

 食事中に、エスラルは唐突に言った。

「へ?」

 突然訊かれ、カーラは一瞬ポカンとした。

 だが、すぐに口を開く。

「あぁ、事件の話ね。……解決する気?」

「はい。俺達の探してる連中かもしれないので」

(…敬語なのに『俺』?)

 カーラは疑問に思ったが、打ち消した。

(まぁ、そういう人もいるのかも)

 ちなみに、エスラルは本の中でしか『俺』という一人称を知らない。

 つまり、敬語と混合して良いものと悪いものの区別がつかないという訳で。

「犯人は、一度に何人も殺してるの。今までの犠牲者は皆、首か胸を刃物で刺されて死んでるわ」

「そうなんですか……えっと、夜ですか?」

「そう、夜中。それとね、犯人は毎回、予告状を出してるのよ」

「!」

 エスラルとフレアは顔を強張らせた。

「予告状?」

 カーラはこくんと頷く。

「でも、どんなに警備を固めても、その警備員諸共皆殺しよ」

「そう……」

 フレアはフォークを置いた。

「エスラル君」

「分かってます」

 アサシンでない可能性の方が高い。

 アサシンは、貴族や王族など身分の高い者しか狙わないからだ。

 しかしそれは単なる噂なので、実のところは誰にも分からない。

「それで、次の予告状は届いているんですか?」

「まだよ」

 カーラの言葉に、エスラルは考え込んだ。

 可能性は、否定できない。

 それに、

(話を聞いたからには、解決しなきゃ面目立たないよね……)

 妙なプライドまで顔を出した。

(まさかこのまま「気をつけてー」とか言いながら去る訳にもいかないし)

 結果、

「犯人捜し、しましょうか」

「そうねぇ」

 即座に返事をしたフレアと二人、頷いた。

「えっと、まず食事しない?」

「あ、すみません」

 カーラが困ったように呟いたので、二人はおずおずと食事を再開した。

「それと、今日はもう遅いから、明日にしたら?」

 微笑したカーラに、エスラルは頷き、スプーンでシチューを口に運ぶ。

「そうですね、明日の朝からにします」

 カーラはそれを聞いて、にっこりと笑った。




 ――――その夜。

「何か疲れたぁ……」

 エスラルは割り当てられた、やけに広い部屋のベッドに寝転がっていた。

 まだ夜は宵の口で、月は昇りかけている最中だ。

 フレアは眠ると言って隣の部屋に引っ込んだ。

「………」

 家に着いた時から、あの違和感は消えていない。

 何か、感じる。

「……ふあぁ」

 欠伸を一つして、目を閉じた。

 睡魔がエスラルを襲う。




 首に向けて振り下ろされたナイフを、エスラルは剣の鞘で受け止めた。

 ち、と舌打ちが聞こえ、相手は飛び退く。

「意外に遅かったですね」

 エスラルは横になった体勢のままで言う。

 シャキ、と鞘から剣が引き抜かれた。

「起きてたのか……」

 ナイフを振り下ろした張本人の男が呟く。

「ええ。貴方達が煩いんで、眠れませんでした」

「……」

「ずっと、天井に潜んでいたんでしょう?」

 エスラルはベッドから降り立った。

 月光に照らされたその姿には、半身ずつに光と影がくっきりと浮かび上がっている。

「さて」

 エスラルは剣を構えた。

「……なんか、数多くありませんか?」

 部屋には、15人ほど人がいた。

「複数犯だったんですね、殺人鬼さん達」

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