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天才撲滅部  作者: 織鈴
3/3

涙を流す天才

珠希は驚きを隠せないまま数秒たたずむ。周りの生徒達の目が珠希を見て笑ってるように見えた。少し気持ちを落ち着かせて散らばった紙切れをさっとかき集め両手で持ち、少し喘ぎながら教室に向かう生徒達を避けながらよろけて走った。珠希の足が部室の前までたどり着くと右足で乱暴に戸を開ける。三角の机のパソコンに一番近い席に紙切れを置く。何枚か落ちてしまった紙切れも拾わずにさっと部室の戸を閉める。戸を背に少し深呼吸をする。カバンを背から降ろして席に着き、紙切れの一枚を手に取る。チャイムが鳴ったような気がした。

「天才とは努力もせずにのうのうと褒められる、馬鹿の気持ちを知らない者である……」

はあと小さなため息を漏らし腕を組み顔を伏せる。


チャイムが聞こえる。ハッと目が覚めて顔を上げる。腕が痺れたようで体を起こす行為が不自然になる。ずれた眼鏡をかけ直しぼやけた目で壁時計を見る。昼を過ぎていた。

「初めてこんなに授業サボった。」

腕で潰していた残りの紙切れを眺めてはゴミ箱に捨て、眺めては捨てを繰り返した。ろくな人間がいやしない。そう小さく呟き最後の紙切れを丸めてゴミ箱に収めるとまた先ほどの姿勢になり自ら眠りに入った。


またチャイムが聞こえる。目が覚めたが全く動かない。自分でも驚く程に珠希には動く気力がなかった。廊下から女子生徒の話し声が聞こえる。部室しか近くにないこの廊下を通る、放課後だ。話し声が通り過ぎると急いで立ち上がりゴミ箱を持って非常口前の大きなゴミ袋に中身を放り投げる。できるだけ紙切れの存在を目立たせないためにゴミ箱でゴミ袋に押し込む。走って部室に駆け込んだ。ゴミ箱を戻し落ちている紙切れを拾い握力で固めポケットに詰め込む。いつ来るかわからない二人の部員を息を荒らしながら席について待つ。どれくらいたっただろうか初めての感覚に耐え切れないようにカバンを背負って手を振るせながら廊下に出る。部室に向かう生徒達に逆流しながら足早に玄関に向かう。靴箱を開けると朝の光景が思い描かれるようで身震いがした。さっと靴の交換を行うと走って校門を出る。手の震えがおさまるのと同時に視界が大きく歪んだ。珠希にとってこんなにも意味の無い涙は初めてだった。眼鏡を外し、制服の裾で涙を拭う。溢れ出る涙を拭い切ることができず、視界が歪んだまま眼鏡を掛けてがむしゃらに人ごみを走り抜ける。家に着く間、何人の人にぶつかったのかわからない。家に着くなりベッドに潜り込む。涙が止まらなかった。テストの点数が低かった時の悔し涙の止め方を知っていても止められない涙だった。


ロレクと雅、二人が話しながら部室へ向かっている。

「タヌキ怒ってるんちゃうん?俺ら遅くなってしもたし。」

「しょうがないだろ。俺らのクラスだけ遅れちまったんだから。」

「まあそうなんやけどな。」

「遅れたわ。すまんすまん。」

そう言いながら戸を開ける。いつもなら聞こえるタヌキの怒った声がないのに二人だ気付き目を見張る。部室に珠希の姿がなかった。その代わり、一人の男子生徒が普通とは思えない表情で二人を睨んでいる。怒り狂ったような瞳だった。

「増原やん。なにかあったん?」

「どっち。」

「はあ。何が。」

「だから、どっちが珠希ちゃん泣かせたのさ!」

増原と呼ばれた男子生徒が二人を交互に睨みながら返答を待つ。ロレクと雅は何が何だか分からずにお互いでアイコンタクトを取る。二人の不思議な反応に増原もおかしいことに気づいたようで、表情を一変して自分から口をわる。

「二人じゃないの?さっきバド部の練習で外出てる時に泣いてる珠希ちゃんにぶつかってさ。あんたらのどっちかが泣かせたんだと思ってた。」

「増原って眼鏡外した時の珠希のファンクラブじゃなかったんだな。」

「眼鏡掛けてても掛けてなくても可愛い珠希ちゃんは珠希ちゃんだし。」

それより、と増原が真面目な顔で話を変える。

「知らないの?珠希ちゃんが泣いてたわけ。」

「少なくとも俺は知らないな。」

「俺も知らんよ。初耳や。」

2~3分沈黙になり、ロレクが口を開く。

「外にいたんだよな。」

「ああ。方向的に家に帰ったんだと思う。」

「行ってみるか。」

「ロレク、珠希んち知ってんかいな。」

「いや知らんけど。ファンクラブ会長ならそれくらい知ってるでしょ。」


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