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天才撲滅部  作者: 織鈴
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動き出す天才

部活設立わずか3日目の放課後にしてすでに部員らは部室にいなかった。誰もいない部室には文字の羅列が手書きで書かれているA4のプリントの束と投げ捨てられたように置いてある3つのカバンだけだった。

「いじめは駄目。差別は駄目。バカと言っても駄目。じゃあ天才は?天才が必ずしも褒め言葉だと思いますか!」

「これもう選挙やな。」

体育教官室から引っ張り出してきた大きめの台に堂々と立ち黒髪を揺らしながら口達者に話す珠希を体育座りから見上げて独り言のように雅が呟く。2人はそれはだるそうに校門によしかかっている。

「あのタヌキセンスないもんな。演説って言ったら選挙とかガキかっての。」

「何言うてんの。珠希頑張ってんのお前が悪いんやん。」

「そんなこと言ったってしょうがないだろ。」


 「うっさいな。しょうがないだろ。忘れっぽいのはいつものことだ。」

「もう案出てから3日たったの。ロレク乗り気だったじゃないか!」

ロレクがだるそうに頬杖をつきながら聴いてるのを見て苛立ったのかバッと立ち上がってロレクの右腕を弾いて頭を落とす。

「っ……痛えな。このクソたぬき!」

「あぁやんのか?」

「二人共そのへんにしとき。元は忘れてきたロレクが悪い。でも手え出した珠希も悪い。両方共ちゃんと謝り。」

さすがに止める気になった雅が二人を割って大声で入る。

「確かに私言いすぎたわ。ごめん。」

「いや忘れたの俺だし。」

「はい。じゃあ問題はここからや。演説の原稿ないんやったらどうするん?はよせんともう帰宅部帰ってまうで。」

さっと重たい雰囲気を雅が断ち切り二人に話を振る。

「ぶっつけ本番で行く。もう時間ないでしょ、準備しちゃおう。」

そう言うと誰の意見も聞かず立ち上がり眼鏡を胸ポケットに掛けて部屋を出て行った。


「今日じゃない方が良かったんじゃないのか。なんか内容もボロボロだし。国語出来ない奴に任せたのが悪かったんだな。」

「ええやん。一応人集まってるで。運動部もいるしアピールにはちょうど良かったんちゃうん?」

二人して必死な珠希の周りをくるりと見回す。立ち止まる帰宅部や汗だくで足踏みだけする運動部もいる。

「ま、そうかもな。ってかただ珍しいの見てるって感じだけどな。」

「そう見えんでもないな。しかも知ってるか?眼鏡外した珠希のファンクラブあるんやで。本人は気づいとらんみたいやけどな。増原によるとたまにおどおどした時の表情がええらしいけどな。」

「知ってる知ってる。ファンクラブ会長だろ。アホな奴だな。見る目がない。こんなタヌキのどこがいいんだか。」

俺も全く同じこと言うてしもたわ。と小声でいい、二人の目線が斜め上の必死な黒髪女子を眺める。周りにはもうほとんど人はいない。ロレクがその状態に気がつくとすっと立ち上がり珠希の前でストップの合図をする。

「もう人いないしやめていいんじゃないか。」

その言葉がロレクから出てくると緊張が走っていた珠希の顔を緩ませる。

「ならさっさとやめよう。もう疲れたわ。」

そういい台からトンと降り腕を伸ばしながら校内の方へ歩いていく。それを見た二人が台を運びながら珠希のあとに付いて行く。


おはようの言葉がどこからか飛び交う中、うるさそうな顔で人ごみを避ける珠希。やっとたどり着いた2‐2水野珠希と書いてある下駄箱を開ける。珠希は目を見開く。床にはたくさんの紙切れが散らばっていた。


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