表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

プロローグ

一つの話として一応完結していますが、シリーズを考えているので、書き込まれていない部分もあります。


 濃紺の薄闇に浮かぶ月は細く、触れれば切れそうな刃物のように見えた。一人だということも忘れ、彼女は夜道で立ち止まり、空を見つめた。

 普段よりも月が目を惹く夜だった。

 ふと、なにやら気配を感じて彼女は振り返った。鼓動が早さを増す。

 次の瞬間、黒い二つのシルエットが軽やかに彼女の頭上を越えていった。さらに家から家へと体重を感じさせない動きで飛び移っていく。

 細い月を背に軽やかに動くさまを彼女は美しいと思った。

 少しの間、その場に立ち尽くしていたが、思い出したように彼女は歩き出した。

「――――」

 公園に近づくと誰かの声が聞こえた。夏の夜に若者たちが浮かれて遊んでいるのだろう。彼女はそのくらいにしか思っていなかった。ここの公園は外灯も少なく、薄暗い。その上人もあまりこないことを思い出すと、さすがに心細くなった。足早に公園を通り過ぎようとした彼女は、その光景に足を止めた。

 三つの黒い影が公園にあった。

 大きな人影が一つ、中ぐらいの人影が一つ、もう一つの影は人ではなかった。シェパードのような体形の犬だった。

 思わず足を止めた彼女は、次の瞬間息をのんだ。

 中ぐらいの影が左腕を伸ばし、大きな影の首に手をかけた。手を掛けたと思う間に、大きな影は細くなり、地面に倒れた。それは砂で出来た人間のように崩れ去った。

 彼女は咄嗟に手で口を覆った。声を上げそうになるのをなんとかこらえた。

 残りの人影が、彼女を見た。暗くて顔まではわかないが、そう確信した。

 気づかれた。自分も砂のように消えてしまうのだろうか。

 人影がゆっくりと近づく。近づいてくるうちに、自分よりも小さい人間だとわかった。

 顔がわかるほどまで近づいて、それが十二、三歳の少年だと気づいた。小作りな顔は夜目にも白く、女の子のような綺麗な顔立ちをした少年だ。

「お姉さん、今の見た?」

 少年は変声期を迎えていない少し高めの声で、彼女に話しかけてきた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ