期間限定パーティと、初めてのゴブリン退治
◆ティナとの初仕事
その日、ユージンはギルドの掲示板の前で、
木の棒を肩に担ぎながら紙を眺めていた
「ユージーン!」
背中にドンッと衝撃。
振り返れば、弓を背負ったツインテールの少女、ティナが満面の笑みで立っていた。
「おはよ! 今日こそパーティで依頼行こ! ね、ね、行こ!」
「お、おはようティナ。元気だね……いつも通り」
「だって初めての正式パーティ依頼だよ?
“期間限定ユニット・ユージン&ティナ”のデビュー戦なんだから!」
いつの間にそんなユニット名を。
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パーティで選んだ依頼は……
ティナが指さした依頼書には、こう書かれていた。
【依頼名:街道周辺のゴブリン群れの討伐】
・ランク:G〜F向け
・討伐数目安:5〜10体
・備考:初心者は複数人パーティ推奨
「はい、これ! ゴブリン退治!」
「いきなり群れ相手だけど……大丈夫?」
「ユージン、索敵得意なんでしょ? それに私、遠距離担当だし!
近接と遠距離の2人って、バランスいいよ!」
「……まぁ、たしかにそうかも」
ユージンの《解析の目》は、
敵の位置や数を把握するのにも役立っていた。
「よし、ゴブリン退治でペアデビューだね!」
ティナは手を差し出す。
ユージンも笑って手を合わせた。
「よろしく、相棒」
「よろしく、“期間限定”ね!」
何度も「期間限定」と強調するのが、ティナらしい。
⸻
森の手前で、生活スキルが芽を出す
依頼書の指定場所は、街道から少し外れた小さな森だった。
「お昼どうする?」とティナが聞くと、
ユージンは背負い袋から小さな鍋と香草を取り出した。
「簡単なスープくらいなら作れるよ。
森の手前で、食べられる木の実とキノコも採れるはずだし」
「え、料理できるの!? ずるくない!?」
「いや、そんな大したものじゃないけど……」
《解析の目》で毒性をチェックしながら実やキノコを選んでいると、
視界に新しい表示が浮かんだ。
──《スキル:採取Lv1》を習得しました。
(あ、ついに“採取”って名前がついた)
さらに、鍋でゆっくり煮込んでいくと、
香りがふわっと立ちのぼる。
──《スキル:料理Lv1》を習得しました。
「待って、今すごく美味しそうな匂いしてるんだけど!?
なにそれ、ずるくない!?(本日2回目)」
「ほら、味見してみて」
ティナが一口すすると、目を見開く。
「……おいしい!!
何これ、冒険してるのに“ちゃんとしたご飯”だよ!? ユージン、専属コック決定!」
「いや、メインは棒の人なんだけどな……」
ティナと一緒に食べる温かいスープは、
不思議とユージンの緊張を解いてくれた。
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◆索敵&気配隠蔽コンボ
ゴブリンの巣へ向かう
腹ごしらえを済ませた2人は、森の中へ足を踏み入れる。
「ユージン、例のスキル、試してみてよ」
「うん。《解析の目》と……えーと、最近わかってきた感覚があってさ」
ユージンは目を閉じ、意識を周囲に広げる。
すると、頭の中に“点”のような気配が浮かび上がった。
(……あっちに3つ、そこから少し離れて2つ……)
──《スキル:索敵Lv1》を習得しました。
「ティナ、北東側に3体、その奥に2体いる。たぶんゴブリン」
「おお~! マジで便利じゃん、それ!」
さらにユージンは、呼吸を整えながら歩き方を変えた。
足の裏全体で地面を撫でるように、音を殺して進む。
──《忍足Lv2》 → 静音効果上昇
《気配隠蔽Lv1》を習得しました。
(……自分の存在感が、薄くなっていく感じだ)
すぐ横を小鳥が飛び立っても、ユージンのことなどまるで気づいていないように見えた。
「うわ、気配消えてる! さっきまで“普通の人”って感じだったのに……
一瞬、“本職のスカウト”っぽかったよ!」
「褒められてる……のかな?」
「もちろん! これで、私が遠距離、ユージンが偵察&前衛って感じだね!」
役割が、自然と決まっていった。
⸻
ゴブリン、10体。
やがて、茂みの向こうから耳障りな笑い声が聞こえてきた。
「グギャギャギャ……」
ユージンは茂みに身を潜め、そっと覗き込む。
そこには――
粗末な槍や棍棒を持ったゴブリンが10体、
焚き火の周りでなにかを争っていた。
(うわ、本当に10体いる……)
《解析の目》が情報を浮かび上がらせる。
【対象:ゴブリン】
【危険度:低〜中(数が多いと注意)】
「ティナ、10体。
でも、見張り役みたいなのが2体いるから、最初にそいつらを落としたい」
「了解。じゃあ、初手は私に任せて!
ユージンは、バレそうになったら“気配隠蔽”で近づいてカバーして!」
「わかった」
ユージンの索敵が敵の配置を頭に描き、
ティナの弓がそれに合わせて弦を鳴らす。
2人の初めての“本格連携戦”が始まろうとしていた。




