初めての仲間
◆草原狼との遭遇
草原地帯へ──素材集めクエスト
ギルドで受けたのは、
《草原狼の毛皮回収》という初心者向けの採取クエスト。
「今日は戦うのも練習だし、棒術のフォーム調整もやるか!」
ユージンは上機嫌で草原を歩く。
昨日覚えた《忍足》で、草むらを踏んでも音はほとんどしない。
風を切る音――
鼻をくすぐる土と草の匂い――
前世では味わえなかった、冒険者らしいフィールドの空気だ。
「さて、草原狼は……どこに……」
視界の端で、草が揺れた。
ガサッ!
「来た!」
灰色の狼が跳びかかってくる。
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◆連撃──棒術+投擲の新フォーム
草原狼の爪が閃く。
「──《解析の目》!」
狼の動きがスローのように読み取れる。
(右から!)
ユージンは低く潜り込み、棒で顎の下を狙って突く。
急所をかすめた衝撃で狼はよろめき、隙が生まれる。
「今だ!」
拾った小石を、弧を描くように投げる。
ピシッッ!
石は狼の耳の付け根へ刺さり、狼は悲鳴を上げて倒れた。
──《棒術Lv3》《投擲Lv3》に上昇しました
「よし、順調!」
そう思っていた瞬間――
「ちょっと待ったぁぁー!!」
草むらから何かが飛び出してきた。
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◆暴走少女、現る
「毛皮は私の獲物なんだからぁぁ!!」
飛び出してきたのは、
小柄で栗色の髪をツインに束ねた少女だった。
背中には木製の弓、腰には矢筒。
そして――
「うわっ!」
少女は足を引っかけて転び、その勢いでユージンにぶつかった。
二人して草原に転がる。
「ご、ごめんなさい!ちょっとつまずいて……!」
「いや、大丈夫だけど……取り乱してたね?」
「だって!あと10枚毛皮を集めればランクアップなんだもん!!」
少女はむくりと起き上がり、
胸を張って名乗った。
「私の名前はティナ・ミルティス!
見習い弓使いで、将来は“敏捷スナイパー”になる予定なのだ!」」
やたら元気だ。
「僕はユージン。ソロでやってる初心者冒険者だよ」
「ソロ!? すごっ!……いや、すごくない!? 危ないよ!?
ていうか今の戦い何!? 避け方綺麗すぎない!?」
「棒術と……ちょっと投擲が得意で」
「投擲!? なんでそんな地味スキル鍛えてるの!? 逆に天才じゃん!」
やかましいが悪い子ではない。
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◆二人で群れ戦──コンビ誕生?
ティナは耳を立てた。
「来る! 草原狼の追加個体!
この時期は群れで行動するの!」
風を裂くように、3匹の狼が現れる。
「右から1、正面2! 私が右! ユージンは正面お願い!!」
「了解!」
ユージンは棒で一本の軌跡を描き、狼の突進を弾く。
その瞬間に石を正確に投げ込み、前足を潰す。
もう1匹はティナが矢で足止めし、ユージンの薙ぎ払いが決まる。
息はぴったりだった。
──《協調行動》評価:高
パーティ適性:良
《解析の目》がそんな評価を出した。
(パーティ適性……?)
狼の群れが沈黙したあと、
ティナは両手を広げて言った。
「ユージン! あんた才能あるよ!!」
「そ、そうかな……?」
「うん! 弓の私と、投擲と棒術のユージン!
これ、絶対相性いいやつだよ!」
少女の目がキラキラする。
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◆はじめての“仲間”候補
日が暮れて、二人は草原の木陰で簡単な焚き火をした。
「ティナは、なんでランクアップにこだわってるの?」
「……んー。家のため、かな」
「家?」
「私の村、貧村でね。
でも……私が稼げるようになったら、生活を楽にできると思って」
彼女の顔に、少し寂しげな笑みが浮かぶ。
「だから、もっと強くなりたいの。
狩りでも、護衛でも、なんでもこなせる強さが欲しい」
ユージンはその言葉に胸が熱くなった。
(何か……わかる。
僕も強くなりたい理由、ちゃんと見つかった気がする)
「僕も強くなりたい。
自分の足で、少しずつでも前に進みたい」
その言葉にティナは満面の笑みを返した。
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◆ティナの提案──小さなパーティ
「ねえユージン、お願いがあるんだけど……」
「ん?」
ティナは弓を抱えながら、真剣に言った。
「期間限定でいいから、組んでみない?
パーティってほど堅苦しくなくていいけど……仲間として!」
ユージンは一瞬迷い、
だが《解析の目》の評価が浮かんだことを思い出す。
(相性……いいんだよな。実際、戦いやすかったし)
「うん。やってみようか」
「やったぁぁぁ!! 初めての仲間だー!!」
彼女は跳ねるように喜び、ユージンも笑ってしまう。
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◆新たな旅立ち
焚き火の明かりに照らされる中、
ユージンは新しいスキルの感覚を思い返していた。
《忍足》《投擲》
そして棒術の成長。
(まだまだ強くなれる。
今度は……二人で、前へ進める)
草原の風がそっと吹き抜けた。
ユージンの小さな冒険は、少しずつ“仲間と成り上がる物語”へと変わり始めていた。




