「転生、そして森の中で目が覚めた僕」
風が、やけに近い。
ユージンが目を開けた時、まず視界に飛び込んできたのは、見ただけで湿気を感じる深い緑だった。頭上には大きく広がる見知らぬ木々の枝。鳥の鳴き声が、やけにクリアに耳へ刺さる。
「……森? あ、そうだ。俺、転生するんだった!」
思い出した瞬間、胸がぽんと軽くなる。
昨夜――いや、前世での最後の瞬間。突然現れた優しげな神様に「君みたいな頑張り屋には、気持ちよく成長できるスキルをあげよう」と告げられたのだ。
そうして授かったスキルは二つ。
■ スキル【習熟加速】
行動した分だけ、成長速度が何倍にも跳ね上がるスキル。
■ スキル【解析の目】
視界に入るものの「情報・弱点・特徴」が薄い光文字で表示される。
「よし……まずは状況確認だ!」
ユージンは明るい声で、周囲を見回した。
すると、視界の端に薄く光るウィンドウが浮かんだ。
【種族:人族】
【レベル:1】
【スキル:習熟加速(特)、解析の目(特)】
【状態:空腹(小)、疲労(小)】
「ゲームっぽくて分かりやすいな……助かる!」
前向きな性格が幸いしてか、絶望よりもワクワクの方が強い。
とりあえず“動きながら考える”のがユージンのスタイルだ。
「まずは水! あと食べ物だな!」
森は深い。
でも、解析の目が光る。
【植物:ブルーベリー似の果実】
【毒性:なし】
【栄養値:小】
【味:甘め】
「おお、分かりやすい!」
試しにひと粒を口に入れると、甘さが舌に広がった。
美味しい。
そして。
『習熟加速:〈採取〉の経験値が通常の3倍加算されました』
脳裏にシステムの声が響く。
「……え、採取しただけで成長するの? これ、めっちゃ便利じゃん!」
ユージンは思わず笑った。
スキルの効力は本物。
“努力が確実な成果になる”という最高の安心感があった。
◆ 森のサバイバル開始
食料を確保した後は水だ。
ユージンは川を探して歩き始めた。
その道中――。
ガサッ。
茂みが揺れた。
ユージンは反射的に後ろへ下がる。
解析の目が自動的に発動し、浮かぶ光文字。
【モンスター:フォレストウルフ(子)】
【危険度:低】
【弱点:鼻、後脚】
【行動パターン:警戒 → 威嚇 → 逃走】
【素材:牙(小)、毛皮(小)】
「子ども……か。こっちもレベル1だし、無理して戦う必要はないか」
しかし、フォレストウルフの子は――逃げずに唸った。
「え、来るの!?」
ユージンは棒切れを拾い、身構えた。
「よ、よし……やるしかない!」
相手は子供の魔物。
だがユージンにとっては“人生初の戦闘”だ。
フォレストウルフが飛びかかる!
「うわっと!」
棒を突き出すと、偶然鼻に命中し、狼は怯んだ。
『習熟加速:〈棒術〉に経験値が……』
「棒術ってなんだよ!」
ツッコミながらも、必死に棒を構えるユージン。
狼が再び唸り――。
「や、やるぞ……!」
森の中で、初めての戦闘が始まろうとしていた。




