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挿絵(By みてみん)


冬休みが終わり二学期が始まるとーー


クラスも違うエリアルが休み時間の度にレベッカの元に通うようになった。


周りの目から見ても

((((((…あっ、そうか、そうなのか…))))))

とバレバレになる密着ぶりである。


エリアルはデレデレで露骨に鼻の下を伸ばしているので

「エリアルは実は元からレベッカ嬢に惚れてたのか?」

「いや、よっぽどあっちの相性が良かったんじゃないのか?」

などといった憶測を呼んでいた…。


元々他人と深く関わる事のなかったレベッカにとってーー

戸惑う事が多いのだが…

一緒に過ごす時間が長くなってエリアルの性格について一つ判ったことがある。


それは

「エリアルは実は嫉妬深い」

という事。


他人がレベッカに見惚れるのですら

「見るな!ベッキーが減る!」

とでも思っているかのように視線にすら敵意を返す男だ。


友人が大勢いて人付き合いを楽しんでいるタイプの女性なら確実にドン退きするような独占欲だと言える。


その点、レベッカは人付き合いを制限されても元から人付き合いを殆どしてないので

「何がそんなに不安なの?」

と驚く程度。


エリアルの窮屈な独占欲に対して特に抵抗したり不満を感じる事もない。

性格的には相性が良かった二人なのだ。


そんな学院生活の中ーー


唯一レベッカが不安に感じるのは

クラリッサ・チャニングの剣呑な視線である。


冬休み期間中も悪役令嬢達からの嫌がらせを受けていたようだが…


どうやらクラリッサの脳内では

「犯人はレベッカ・ルース」

という事になっているらしい。


冬休み期間中も二学期に入ってからもクラリッサはメジャールートの攻略対象者達であるロードリック・クロックフォード、グレッグ・レヴァインらと過ごしている。


普通に考えるなら

「自分が誑かした男の婚約者から恨まれる」

と予想する筈なのだが…


クラリッサは特殊な物事の捉え方をしている様子。


女子寮の談話室でクラリッサが

「レベッカ嬢は魔道具研究部で精神干渉魔道具を開発して婚約者のエリアル様を洗脳している」

などと言いだし


レベッカの卑劣な人心操作を非難し

「他人の心の自由を奪って操るなんて許されない悪行だわ!」

と憤ったらしい…。


そんな荒唐無稽な話をクラリッサを監視させていた侍女から報告され

(…ハーレムルートを狙ったのにエリアルが靡かないので、勝手な妄想に耽って私を悪者ヒールに仕立て上げようとしてる、って所なのかな?)

とガックリ肩を落とした。


二学期末には「研究発表会」というイベントがあるので

その機に魔法攻撃無効化魔道具(改良品)を発表しようと思っていたのだが…


クラリッサのせいで

「レベッカ嬢が魔道具研究部で開発している魔道具は精神干渉魔道具だ」

という根も歯もない噂が広まってしまっているようだった。


(…おかしな噂がクラリッサのエンチャントのせいで広まってるのだとしたら、火消しのためにも魔法攻撃無効化を学院内の社交場に実践投入する事を考えた方が良いのかも知れない…)

と考えた。


それと共に

(部活での魔道具開発は次の課題である「退魔結界魔道具」に変更して、魔法攻撃無効化魔道具の小型化は魔道具研究部の部活動ではなく寮の自室で研究を続けた方が良いのかも)


(完成品の外観を知られた後だとアクセサリー型にして身に付けて実用するにしても「精神干渉魔道具だ」と言い掛かりを付けられて物理攻撃で破損させられる可能性もあるだろうし。完成品の外観を誰にも知らせずコッソリ使うように気をつけよう)

と思った。


アクセサリー型にして身に付けて持ち歩けるような小型化はまだできてないが、魔法攻撃を無効化する魔道具自体は完成している。

夜会でのお披露目も済んでいる。


「これで完成した」

という事にして次の課題に着手してみせる事もできる。


(学院長には「別予算を使った特別扱いの支援」を諦めてもらって、さっさと次の課題に取り組んでいるフリをしておこう)


そう決意して、顧問のバートランド・ブロデリックに

「学院長に取り継いでいただきたいんですけど」

と話を持ちかけた…。



*****************



「…私の見た所、君は着目点が鋭いし先見の明がある。その君が『退魔結界魔道具』を開発したいと言い出すのは、『それを必要とする状況が訪れるかも知れない』と予想しているからなのかな?」

と学院長にツッコミを受けたので


(このオジサンは多分、私が正直に話したほうが融通を利かせてくれる人だ…)

と思いながら


「学院長先生…。ヒビの入った水瓶を使い続けると、いつか水が漏れ出して水瓶も割れる。それを予想するのは先見の明が無くとも誰でもできると思います。

現状維持にこだわる事で既得権益を貪れるポジションにいる人達や、そうした既得権益のおこぼれに預かる人達だけが自明の理から目を背けるのだと思います」

と欲深い人達こそが自明の理に蓋をしてしまう現実を指摘した。


「…なるほど。深いね。君の社会洞察は」


「お褒めいただき光栄です。ですが自明の理に蓋をして悲劇が起こる事態を放置し、更には悲劇の責任を他所になすりつけようとする人達も多いと思いますので、悲劇を未然に防ぐべく自明の理を解いて対策を立てる事にさえ横槍が入れられる危険は常に有ります」


「…それで?君は具体的にどんな連中が自明の理に蓋をして悲劇が起こる事態を放置していると思っているのだ?」


「…某伯爵の領地に古いダンジョンがあって、内部は随分と成長し、いつスタンピードが起こるか判らない状態になっている事は私が指摘しなくても本当は誰もが理解している筈です」


レベッカが暗にバーネット伯爵領にあるダンジョンの事を仄めかすと


「…現状維持による既得権益のおこぼれにあずかってない者達まで自明の理に蓋をして、かのダンジョンの危険性を誰も陛下に奏上しない原因を君はどう考える?」

と学院長が探るような目を向けてレベッカを射抜いた。


「…自分達の不利に繋がる認識が広まる前に、自分達の不利に繋がる認識を持つ者達に対して脅迫したり社会的に抹殺する手段を取る人達がいるという事でしょう。

そもそも社交界自体が自分達を有利にする認識を広め、自分達の不利に繋がる認識を潰すべく行動するステルスマーケティングとネガティヴキャンペーンに満ちているではありませんか。

お陰でしっかりした後ろ盾のない聡い者達は、簡単に信用毀損され、発言の信憑性を失わせられる詐術の犠牲になって潰されていきます。

そうやって『陰湿な攻撃者達』の陥れを誰もが目にしてしまい、それでいて本当は何が起きているのかを知ろうともしない。

だから『陰湿な攻撃者達』を不利にする認識を持ってはいけないと潜在的に強迫観念を刷り込まれ、そうした強迫観念がバイアスになって人々の知性は伸び悩むようになってしまうのだと思います」


レベッカが学院長の鋭い視線に怯みもせずに

淡々と社会分析を述べると…


「やはり君は賢い。小賢しい連中と違って賢い人間に降りかかる危険とバイアスに関してもちゃんと理解した上で、悲劇を最小に抑えるための対策を取ろうとしている」

と学院長が何故か寂しそうな表情になったので


「…別に学院長先生や他の方々を責めてはいませんよ。誰だって怖い目に遭ったり不条理に潰されたりするのは嫌でしょうし、被害に遭うのが自分と自分の大切な人でさえなければ構わないと思ってしまう事もあるでしょうからね」

と卑怯な大人達の側の自己正当化事情に言及してやった。


学院長が大きなため息を吐いてから


「…それで君は…。退魔結界魔道具の開発に幾らコストが掛かると思ってるのかね?国家予算並みの価格でやり取りされる超高級魔道具の中には既に退魔結界魔道具も含まれていて、それこそ君が嫁ぐ事になっているブライトウェル辺境伯城はそういった魔道具の結界で護られている。

それをバーネット伯爵領のダンジョン近くの村々に普及させようと思ったら、天文学的金額のカネがかかるとは思わないか?」

とコスパの心配を口に出してくれた。


「…学院長先生。…学院長先生は超高級魔道具の材料には入手難易度Sランクの特殊な素材が使われているから超高級な値段だと素直に信じてらっしゃるんですか?」


「…違うのか?」


「…様々な素材が入手できる環境あってこそ自由な発想が出来る面も有りますので、魔道具開発には確かに財力と多様な素材の流通が必要です。

なので退魔結界魔道具が作られた当時に市場に流通していなかった素材が使われていれば素材自体をいちいち取り寄せた筈なので無駄にお金が掛かっていただろうとは思います。

更には特許権という概念が昔は存在していなかった。つまり自分の発明品を量産して世に出せば知識も技術も盗まれて知的財産の価値自体が下がり、開発にかかった費用を回収できなくなる。

そういった事情から、使用素材を一見して分からないように工夫したり回路を無駄に複雑に組んで模倣を牽制したんでしょう。

付加価値を保つためにあえて量産せず、ごく少数だけ作って相当に吹っかけて高値で売り付け、知識も技術も封印。

後世に後発品が安値で量産される事態の芽を根こそぎ絶った、という事が考えられます。開発者が人々の安全な暮らしよりも自分が金を得る事を望んだために。

…こうした当時の事情を想像するなら、今の社会で金目的じゃない私が安値で開発する事は不可能ではないと思います」


「開発の目処は立っているのかね?」


「目を付けている素材や、それを使ったアイデアは幾つかあります。試してみてダメだったらやっぱりダメなんでしょうが…。ダメかどうかはやってみないと分かりません」


「…そうか…」


「…因みに目を付けている素材は高価なものではないので別予算とかの特別扱いは不要です。

…あと、私が退魔結界魔道具の開発を思い立ったのは辺境で活躍する冒険者達や騎士達の野営用だという事にしていただけると助かります。

某ダンジョンのスタンピードを警戒してると知られると、その時点で某ダンジョンの利権で甘い汁を啜ってる人達が何か仕掛けて来るか分かりませんから。

…ですのでブロデリック先生にもこの話は伏せておいてください」


レベッカが学院長が神妙な表情で頷くのをジッと見守った…。


バーネット伯爵領にある古いダンジョン…。


ゲーム内では、夏休みが終わって、新学年が始まってすぐに起きている。

バーネット伯爵オーウェン・グレイはコンクウェスト侯爵派なのだ…。




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