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68:ロドニー・デュー視点33

挿絵(By みてみん)


「声に魔力を乗せて精神干渉する魔物」

と対峙した経験のある者だけが…


クラリッサ・チャニングの異常さを看破していて

それ以外の者達はクラリッサが危険人物である事に気付いていない状態。


それは

「狂人達の群れの中でごく少数のマイノリティーだけが正気でいる」

という恐ろしい状態だ。


近衛騎士の全員が精神干渉系魔物との対峙経験がある訳じゃない。


俺やエセルは精神干渉系魔物との対峙経験があったが、グレッグ王子の護衛であるダスティン達は精神干渉系魔物との対峙経験が無かった。


「精神干渉系魔物との対峙経験はあるか?」

と尋ねた後に


「クラリッサ・チャニングには気を付けろ」

と露骨なヒントを出してやったのに


「?(はて?)」

と首を傾げてクラリッサの厄介さに気付きもしないようだった。


ドミニク王子は魔力栓の作り方を直ぐにマスターした。


クラリッサと接する時や

クラリッサの声を聞く時に

耳の中に魔力栓を作れば

「音だけ拾って干渉波は遮断する」

という事ができる。


危険人物の魔の手から是非とも逃れて欲しいと思っていたのだが…

どうやらドミニク王子は魔力栓による防御をあえて行っていない。


他の男子生徒達と同じように

フラフラとクラリッサに惹き寄せられている…。


(…王子は優秀だとは言え、肉体的には思春期真っ盛り。精神干渉のような蠱惑的な魅力にはあえて引っかかって「どんなものか自分で実際に体験したい」と思ってしまうのかも知れないな…)

と王子の若さゆえのチャレンジャー精神を感じ

俺はとても悲しくなった…。


好奇心から麻薬に手を出して廃人と化した前世の知人のことを

思い出してしまうのだ。


皆が皆、初めは好奇心。


「どんなものか自分で実際に体験したい」

というチャレンジャー精神から

じわじわと自覚もなく価値観が歪んでいく…。


「依存性薬物を断つように」

と勧める健全な価値観を持つ健全な人間達のモラルを

薬物依存者達は凡ゆる脳内こじつけで否定する。


人間というものは簡単に壊れる。

簡単に狂う。


それを思い知らされた…。


(…なんでこのゲームがメリバエンドだらけのシナリオだと言われてたのか分かった気がする)


精神干渉系魔物が人間を狂わせて破滅させるように

ヒロインは攻略対象者を婚約者から寝取って

婚約者を悪役令嬢に仕立て上げて破滅させる。


それと同時に攻略対象には

「正気に戻って、事実を事実として認識する」

という引き返す道を塞ぐ。


それが乙女ゲームの定番シナリオなのだから

そうやって結ばれた魔物のようなヒロインと攻略対象者は

社会の中から「正しさ」や「公平さ」を消去している。


略奪愛という泥棒の正当化。

浮気と裏切りの正当化。


それがヒロインと攻略対象者の性根の実態なのだから

そんな連中が大手を振って通用する世界がマトモである筈がない。

滅びずに済む筈がない。


(…ドミニク王子。…クラリッサは水妖魔物セイレーンと同じで危険なんだよ。引き返せるうちに早く気付いてくれよ…)

と俺は、王子自身が「溺死する運命」を自分自身の力で変えてくれるのを期待して待った…。



****************



学生は皆、寮生活。

王子達は王城からの通学。


そんな事もありーー

学生達の不純異性交遊の根城は主に

「連れ込み宿」(いわゆるラブホ)が立ち並ぶ花街の一画。


学生だとバレぬように

知人に遭遇しても自分だとバレぬように

変装・扮装して出向く者も多いが…


普段から火のない所にも煙が立てられるドミニク王子は

フードを目深く被った状態で普通に出向く。

勿論、フード付き外套は認識阻害の魔道具ではある。


認識阻害看破魔道具という対抗魔道具も存在するにはするが

そういった道具は高価だという事もあり

各貴族が情報戦のための私兵に貸し与えるのが専らの使用法であり

「趣味で認識阻害看破魔道具を所持して使っています」

という人間は限りなくゼロに近い。


花街の一画で誰かに姿を見られても

相手が情報戦における敵でなければ見抜ける方がオカシイのだ。


ドミニク王子は婚約者のグロリア・ケンジット嬢とのお楽しみの場合も

クラリッサ・チャニングとのお楽しみの場合も

同じように認識阻害魔道具に身を包んで宿に入っていった。


護衛と言えども、こういった宿に一緒に入っていく事はできない。

おしのび中の主人の身バレを防ぐ配慮として

宿の前で待ち続けなければならないのがツラい所である。


連れ込み宿の前で男が一人で待ちぼうけている様子は

傍目には待ち合わせをしているように見える。

「好きものめ…」

と思われながら通行人にチラ見されるので

俺のほうでも認識阻害魔道具の外套を着用させられている。


「可能な限り味方以外の者達からは顔を覚えられないように過ごす」

事で、おしのびで出かける機会の多い主人を護る任務を

遂行し続けるハードルが多少なりとも下がってくれる。


護衛官が目立ちたがりだと影武者を使う時には陽動として役に立つが…

ドミニク王子レベルの美貌になると、そうそう見かける事もないため

影武者が務まるようなソックリさんがいない。


今の所ドミニク王子の護衛官に目立つ男は必要無いのである。


俺は存在感を消して背景に溶け込むのが得意だ。

殺気や精神干渉波に気付きやすかったりするのは伊達じゃない。

「気」という、生き物が発する波動に対して敏感だという事だ。


そして「気」というものに敏感であるからこそ

「人間を餌と見做している魔物の意識」

と類似した意識を持つ人間がいたなら、すぐにそれと分かるし


(その見た目がどんなに美しい美少女であろうとも)

俺には気持ちが悪くて仕方ない。


ようは俺は

クラリッサ・チャニングが嫌いなのだ…。



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