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67:ロドニー・デュー視点32

挿絵(By みてみん)


ドミニク王子の語った

ーーこの国がここまで蝕まれる前にもっと誰かが何とかしてくれていたなら『必ずしも私が出しゃばる必要はない』と思う事が出来たーー


ーーこの国の民がもっとずっと心も魂も汚れきって腐りきっていたなら『救いようがないのだから見捨てよう』と思い切ることもできたーー


という言葉は俺自身が前世で向き合っていた問題そのものだった。



何もしなかった。

何もできなかった。

確かに「無責任」なのだろう。


だからなのかーー

自分の中から「後悔」が消えてくれない。


どうしても

どうしても

埋み火のように


「後悔」が消えてはくれない…。


本当は俺は愛していた。

あの国を。

あの社会を。


ドミニク王子は

「国家に仕える人間は愛を表明する資格すら失う」

と言ったが

「国民が自国への愛を表明する資格すら失っている」

ような場合もある。


怖かった。

認識すらされず裁かれず存在していたテロリズムが。


自分では日本人のつもりでも

生粋の日本人達から自分も他国のシンパと見做される事も

怖かった。


似て非なるものを見分ける識別力が

周りに育っていなければ

見分けてもらえなければ

俺達は絶望に堕とされる。


「国民とは何か?」

という問いにしても、生粋の日本人は深く考えもしない。


「自国にアイデンティティを置いた目線で自国の国益を望み、自国民を運命共同体と見做して自国民の安全と幸福を願う。

それができる者、それを繰り返した者こそが『国家君主の庇護下で守られるべき国民』なんです」

と以前言い切った言葉は俺の本音だ。


「拒まれる愛なら愛したくない」

「傷つきたくないから愛を表したくない」


テロリズムに屈し

愛していた国に愛を表明する資格をすら

自ら手放していた

あの頃からの俺の本音だった…。



********************



この世界の下敷きになってる乙女ゲームのヒロインに関して

俺は顔も名前も全く知らなかった。


だが

「あっ!この女がヒロインだ!」

と感じる新入生はすぐに見つかった。


「クラリッサ・チャニング」

という名前の姓を見ればクレーバーン公爵家に所縁の者だろうと予想がつく。


王子達もロードリックも

「クレーバーン公爵は愛人である歌姫を王立歌劇場の支配人の座に就けていて、その愛人との間に産まれた庶子はアランの一つ下の歳だ」

という噂話を聞いた事があったらしく。


「一族の子とか、そういう傍流ではなく、公爵の胤である庶子なのか?」

と気になったようで侍従達に情報を集めさせたところ

すぐにクラリッサがアランの異母妹だと判明した。


クラリッサは母親同様に歌姫。


何年も前から少年少女の合唱の場面で歌声を披露していた。

歌劇場ではちょっとした子役スター扱いだったのを

「せっかく魔力が有るのだから王立魔法学院に入学して人脈作りもしておきたい」

と営業面で色気を出し入学してきたようだった。


クレーバーン公爵の庶子。


もしもアランが死んでいたらクレーバーン公爵の一粒種の実子。

「平民から一気に公爵家令嬢というポジションへ駆け上がって王立魔法学院高等部に外部入学してくる美貌の歌姫」


(…ドラマチック過ぎる。もうコレ、ヒロイン確定でしょう)

と俺は内心で確信を持った。


一方で王子達はもっと違った観点を持ったようだった。


「クラリッサ嬢が誰かと恋仲になって婚約などといった運びになれば、アランは益々命を狙われる環境になるかも知れないな。クラリッサ嬢のお相手次第では」

と考えたらしく


ドミニク王子とロードリックはアランに

「護衛を増やしてみるなり、自身を鍛えてみるなりして今後の危機に備えてはどうか」

といった提案をしたのだった。


クラリッサが営業も兼ねて学院の音楽部に入部したのを知ると

アランも含めて皆が

「どの程度のものなのか聴いてやろうじゃないか」

と注目し音楽室へと集まった。


廊下にも人が押し合いへし合いで溢れ

「歌劇場の子役スターのソロの歌声を聴いてみよう」

と、ちょっとしたお祭り騒ぎになってしまっていた。


そんな中ーー


歌声が聴こえてきた。



俺はゾワリと鳥肌が立ち

周囲の者達は静まり返ってウットリと歌声に聴き入る…。


異常だとハッキリ判った。


声に魔力を乗せて精神干渉を仕掛けてくる魔物に対峙した時のような

何とも言えない気持ち悪さを感じながら…


俺は思わず自分の魔力で「耳栓」代わりの「魔力栓」を自分の耳の穴の中に創り出した。


音波系精神干渉を遮るための防御術。

騎士団でしか習わない対魔物防御術が王立魔法学院内で必要になるなど、思いもかけなかったせいでドミニク王子には魔力栓の作り方を教えていなかった。


自分の魔力を王子に流し込む訳にもいかないので

俺はドミニク王子の両耳を自分の両手で塞いだ。


ドミニク王子にムッとした表情をされたが

「精神干渉波です」

と言うと、唇を読んでくれたらしくて


ドミニク王子は驚いたように目を見開いてから

俺に軽く頷いて

「大丈夫だ」

と言うように俺の両手を自分の手を引き剥がした…。



****************



「自分だけは大丈夫。精神干渉なんてされない」

と自信過剰になって自ら危険に突っ込んでゆき、精神を操られる羽目に陥り、それを自覚できない人間は多い…。


どこか怖いもの知らずで刹那的。

「自分は大丈夫」

と思う事でプライドを保とうとするかのような無謀。


騎士団でも

「自分は大丈夫」

と思い、命を落とした者達がいた…。



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