62:ロドニー・デュー視点27
ランドル王国内のアザール派と愛国派との小競り合いは国内のいたる所で多発しているが…
そうした二派の争点の一つには
「次期クレーバーン公爵アラン・チャニングの婚約者に誰を据えるか?」
というものがある。
クレーバーン公爵は
「自国の王女フローレンス・レヴァイン殿下を迎えるべきだ」
と主張していて
クレーバーン公爵夫人は
「アザール王国の王女レナエル・アザール殿下をお迎えするべきです」
と主張している。
クレーバーン公爵夫人は旧姓が「グレイ」姓。
俺の実家のバーネット伯爵家と同様に「コンクウェスト侯爵家から派生した伯爵家」の出だ。
ここで問題になるのは
「コンクウェスト侯爵派は基本的に愛国派である」
という事だ。
それなのにコンクウェスト侯爵派一門の血筋の奥方自身が
「アザール王国の王家と姻戚関係を結んで媚びておくべきだ」
などといった王妃追従の考えを示し
コンクウェスト侯爵派内でも一定の支持を得ている事である。
「露骨な裏切り」
と言うほどではないのかも知れないが…
「確実に日和って敵に尻尾を振っている」
のが判る。
ドミニク王子はバーネット伯爵領のビートンのダンジョンを消滅させる事態を極力避けようとしてくれているのだが…
それはコンクウェスト侯爵派がランドル王国に根を張るランドル人の派閥であるからだ。
「これ以上、我が国を隣国の食い物にさせないためにも国内勢力から隣国系の影響力と権益を削り、ランドル人勢力を伸ばしていこう」
という意図の元、コンクウェスト侯爵派の重要な財力源の一つであるビートンのダンジョンの保護を考えてくれている。
それなのにコンクウェスト侯爵派の中には売国上等の阿呆どもが湧いている…。
ヤツらの中に生かしておいてやる値打ちを見出してやる事は俺には難しい。
そんで当の婚約問題の渦中にあるアラン・チャニングはと言うと…
「(レベッカ以外の)誰とも結婚したくない」
とワガママをほざいているらしい。
「四の五の言わずにフローレンス王女と婚約してしまえ!!!」
と心底から怒鳴りつけてやりたい。
国際情勢・社会情勢も読めずにワガママばかりほざくガキにレベッカ嬢が惚れるなどと思うなよ!
レベッカ嬢が万が一アランに惚れようとも俺が許さん!
俺が事情を知って一人で百面相をしているとイーサン・ブレイクが
「お前、今日非番だろ?たまには騎士団に顔を出して模擬戦でもしてみたらどうだ?」
と進めてきた。
近衛騎士は基本的に襲撃などといった稀な事態でも起こらない限りは護衛対象の周りに引っ付いて回るだけの置物と変わりない。
なので非番の日には身体を鍛えて筋力や反射神経を維持する努力が必要になる。
用事が無ければ騎士団の訓練に加わってみるのも良いが、他に用事がある事も多く、用事が済んでから自主トレをする事が多い。
「…今日は用事はないから騎士団に顔を出してみるが、なんか野郎ばっかり見てると気が滅入るんだよな」
と思わず本音を漏らすと
「お前の男嫌いも相当だな」
とイーサンが呆れたように肩をすくめた。
「お前みたいな異常な女好きに言われたくない」
と反発の言葉が口をついたが…
だが、まぁそうだな。
騎士団内でジャレット・カースティンの噂でも仕入れておいても良いかも知れない。
「本当にジャレットがレベッカ嬢の見守りを邪心なく行えるのかどうか」
俺が直々に見定めてやる。
そう思うと俄然ヤル気が起きてきた。
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あわよくばジャレットの悪口を聞きつけて腹の中で罵詈雑言を投げつけてやろうと意気揚々騎士団に乗り込んだ俺だったが
行ってみて
「あれっ?」
と思ったのが、第二王子グレッグ殿下の専属近衛であるダスティン・フェアフィールドに出くわした時の違和感である。
ダスティンは乙女ゲームの攻略対象の一人なのだが…
俺の中にあるイケメンデーターの中のダスティンと現実のダスティンは微妙に雰囲気が違う…。
もちろん現実はゲームとは違う。
俺のようなイレギュラーも存在するのだしキャラがゲーム内とは違う性格になっていても不思議はない。
因みに乙女ゲームの攻略対象者は六人。
メジャールートとマイナールートがあって
メジャールートにおける攻略対象は四人。
ドミニク・レヴァイン(第一王子)
ロードリック・クロックフォード(第一王子の友人)
グレッグ・レヴァイン(第二王子)
エリアル・ベニントン(第二王子の友人)
マイナールートにおける攻略キャラは二人。
バートランド・ブロデリック(講師)
ダスティン・フェアフィールド(第二王子の近衛騎士)
といった具合だ。
攻略対象者中一番スペックが高いのは当然我らがドミニク王子。
ロードリック・クロックフォードは宰相の息子で次期宰相。
グレッグ王子は第二王子。
エリアル・ベニントンは次期辺境伯。国内の軍事力の過半数がブライトウェル辺境伯の手中にある。
こうしたキャラの社会的ポジションから見て
「メジャールートはヒロインが露骨に権力と関わり合いになるルートだ」
と予測できる。
一方で
バートランド・ブロデリックはコンクウェスト侯爵の息子ではあるが庶子。本妻が産んだ息子が何人もいる中で次期侯爵の座は不可能。
ダスティン・フェアフィールドはエルギン伯爵家の次男。長男にもしもの事があれば伯爵位が転がり込む可能性はあれどエルギン伯爵家自体が経済的にも落ち目の家なので権力の中枢とは程遠い…。
マイナールートは
「権力とは離れて人間的な成長を目指すルートなのだろう」
と予測がつく。
(公式シナリオは知らんが)
そのダスティン・フェアフィールドの婚約者はシーモア男爵家令嬢レイラ・ノーランド嬢。
なかなか逞しい御令嬢らしく教会の慈善活動でよく姿を見せているらしい。
前世知識から引き継いだ俺のデーターには
「女子に関するものが皆無」
なのでレイラ嬢がどんな女なのかは知らない。
(判ってるのは名前と噂。会った事もない)
だが
「教会の慈善活動に積極的に参加している」
という評判を聞く限りでは
「世話好き、出しゃばり」
な性格なのだろうと思う。
前世の妹の性格も外交的で世話好き・出しゃばりだった。
残念な趣味にハマって同人作家を始める前はヤツは看護師だったし
自分でも天職だと思っていたらしかったのだが…
BLというトラップが発動して後は出しゃばりの方向性が腐界探検へと向かってしまい
「オタばれを恥じるな!同志達よ!我らは我らの道をゆく!」
と先陣切って世間様の上品ぶった社交を真っ向否定。
「腐女子に人権を!腐女子差別やめろ!」
とばかりに馬鹿の子丸出しの自分を曝け出し
恥じる事なく大手を振って世間を渡り歩いていた…。
ある意味「開き直りの権化」のようなヤツであり
「腐女子だからって恥じる必要はないのね?」
と背中を押してもらいたがってる迷える腐女子達の女ボスであった。
慈善活動に積極的な出しゃばり女…。
善良ではあるのだろうし
「開き直りの権化」は小心者の群れには必要なのだろうが
俺はその手の女を前にすると…何故か萎えてしまう。
実際、前々から不思議だったのだが
「BL好きの女達は存在するだけで男をインポにしてしまう呪いを撒き散らしている」
ような作用があるという事だ。
いや、マジで。
BL好きの腐女子をマジギレさせて
「この粗チン野郎!チョン切るぞ!」
と罵られると、息子が縮こまって再起不能になってしまうのだという…
冗談みたいな本当の話。
これを実体験した男が俺だけではないと思っている…。




