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挿絵(By みてみん)


対話の余地のないドローレス・ラングリッジのもとを離れてーー


ウエストブルック子爵邸を後にしたレベッカは、兼ねてからの予定通りに諸用を済ませて自宅へ戻った。


ドローレスの無礼な対応と偏見から

「コンクウェスト侯爵派は頭が弱くて好戦的だ」

という事が判明した事でもあるし…


一刻も早く魔法攻撃無効化魔道具を開発して

「自分の発明品だ」

と触れ回る必要があると思ったのだ。



ーーランドル国で社交界デビューする年齢に特に法的な決まりはない。


16歳でデビューする人が多いのは多いが

デビュタント年齢は当人のマナー習熟度と親の財力と判断次第。


もちろん社交界デビューしていなければお茶会や園遊会に参加できないという決まりもない。

ただ「夜会、舞踏会」に限っては大人の集まりとなるのでデビュー前のお子様は締め出される。


大人の集まりから締め出されたままで自分の知的財産権を売り込むのは難しいが…

幸いな事にレベッカはエリアルと共にこの冬に社交界デビューする事になっている。(ブライトウェル辺境伯の意向で)


エリアルの父であるブライトウェル辺境伯は冬季は領地から出ない。


ただでさえ領地が王都から離れているので

足元の悪くなる冬季には領地に缶詰めになる。


「何かあった時にもすぐさま対応」

という事を考えると、移動がスムーズにゆく時期しか領地を離れられない。

辺境を守護する責任者だと言う責任感が強い御仁だ。


ブライトウェル辺境伯はエリアルに対して

「早く大人になれ」

「誰よりも強くあれ」

「早く結婚して子を作れ」

と無茶振りをする人なので…


「結婚も学院卒業まで待つ必要はなかろう。親の承認があれば15歳で入籍可能なのだから15歳で結婚しろ」

と言い張ったツワモノ…。


エリアルが

「通常は結婚より社交界デビューが先です」

と物事の順序を説いたのでーー


何とか

「高等部入学後の冬休み中に社交界デビューして、一学年終了後の夏休み期間中に学生結婚」

という予定に落ち着いている。


もちろん学期末にある高等部主催の舞踏会で

「断罪イベント・婚約破棄宣告が行われなければ」

の話だ。


それさえ乗り切ればーー


レベッカとしては普通にエリアルと結婚しても構わない。


高等部二学年目からはシナリオは王国滅亡回避対策へと移行する。

悪役令嬢断罪に向けてのイベントは終了済み。


それこそーー

スタンピードが起こるのだ。


そのせいで学院の生徒の多くが学院を辞めて騎士団に編入する。


ゲーム内の展開だとーー


悪役令嬢を破滅させてまで一緒になったヒロインと攻略キャラは、死の危機に瀕しながらも互いを信じて戦いきり、魔物にも政争にも勝利する事ができるのか?

という点が試される事になる。


レベッカ以外の悪役令嬢が断罪された

(エリアル以外の攻略対象キャラが攻略された)

場合にはーー


レベッカは未来のブライトウェル辺境伯夫人。

辺境を守らなければならなくなる。


ゲーム内のレベッカは陰湿ではあるがか弱い令嬢。

断罪を免れていても不運が降りかかる。


辺境伯領に侵攻してきたバルシュミーデ軍に襲われて凌辱され殺される。


だがこの世界のレベッカは身体強化も使えるし剣も振れる。

ナイフや包丁だともっと巧妙に戦える。

ゲームのシナリオとは違う。


何よりヒロインを全く虐めていない。

(というか今の時点では全く関わっていない)


物証を捏造される危険は侍従侍女らの活躍でこれまで何度も回避されている。


偽証者が大量発生する危険に関しては魔法攻撃無効化魔道具を作り精神干渉を無効化すれば回避できる可能性が高い。


エリアルと無事に結婚した後も王国滅亡回避のためにできる事をしなければならないだろうから「楽チンだ」とは言えないものの…

レベッカの中には充分な困難克服意欲がある。


社会界デビュー前の令嬢は肌や髪の手入れに血道を上げるのが普通らしいが、レベッカの場合は魔法攻撃無力化魔道具作りに血道を上げる。


(小型化にも成功すれば、次は退魔結界魔道具でも作りたいな…)

などと思っている。


辺境に最も必要なのが魔物を寄せ付けない結界だろうと思うのだ。


ただでさえ広大な荒地の向こうには

魔物の跳梁跋扈する樹海が広がっており

その更に先には軍事大国がある。


魔物による脅威から解放されない事には

「樹海の魔物をけしかけられて被害が出たすぐ後に追い討ちをかけるべく大軍が押し寄せて来る」

というパターンで辺境は占領され、レベッカにも死が降りかかる。


その前にバーネット伯爵領にあるダンジョンのスタンピードもある。


退魔結界魔道具は今現在は製造技術が失われていて、大昔の天才錬金術師が作った現存の稀少品が国家予算レベルの超高額でやり取りされる状態。


それを各町・各村の自治体が購入できる金額にまでコストを抑えて製造・普及させておけばスタンピードの被害も最小に抑えられる。


断罪されなかった場合の事も考えるならーー

対策しておくべき事は沢山ある。


恋愛脳のメンヘラ達の幼稚な悪意に構って

いちいち振り回されて凹んでいる時間はない。


グラインディー侯爵家が開く夜会でレベッカとエリアルは社交界デビューする事は決定事項。

しかも日にちも迫っている。


レベッカは一心不乱に魔道具製作に取り組んだ…。



************



侯爵邸で開く夜会の前準備として「料理」も含まれるが…

レベッカも当然調理した。


自分が主役である夜会の間中、何も食べずにいられる自信はない。

「全てを自分でつくる」

事まではできないまでも、途中で何か摘める分は自分で作った。


厨房スタッフはとうの昔に顔馴染みだし

今となっては毒を漏られる心配は無用だと思うものの…

やはり自分で作ったものしか安心して食べられない。


もはや自炊は強迫観念だ。

(学院の寮でも自炊。昼食も自作弁当を食べていた)


魔道具作りで根を詰めていたかと思えば

夜会用の料理まで作り

睡眠不足と疲労で顔色が悪いレベッカを使用人達も心配した。


それでも顔色の悪さを化粧で誤魔化して飾り立てると

レベッカは健康そうに輝いて見えた。


夜会当日の昼頃にエリアルが侯爵邸に来て会場の準備を手伝ってくれていたので手作りの昼食を出して

「ありがとうございます」

とお礼を言っておいた。


エリアルが気まずそうに目を逸らすのがレベッカには、ヒロインによる攻略が進んでいる証のように思えたが…


断罪ネタを与えた覚えはないので

「どうかなさいましたか?」

と余裕の笑みで問うてやった…。


(無理矢理に断罪ネタをこじ付ける気だというのなら「やってご覧なさいな」)

と挑発するつもりでーー。



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