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挿絵(By みてみん)


平穏に日々は過ぎていったようにも見えるが…


水面下ではやはり悪役令嬢化した令嬢達がヒロインの部屋を荒らしたりヒロインを後ろから突き飛ばして階段から転落させたりしていた。


それでも

「犯人はレベッカ嬢だ!」

などと決定的な濡れ衣が着せられる事も今の所はなく…

レベッカは淡々と学業でも首位をキープしつつ部活動にも励んでいた。


夏休み後から冬休み前までの一学期の間に、やっと

「魔法攻撃無効化理論」を

(顧問のバートランドとの論戦の末に)

論文にまとた。


今後は理論の実証のために魔道具試作に四苦八苦する事になる。


バートランドの婚約者のドローレスがレベッカの事を気にしているらしくて

「一度お会いしてお話ししてみたい」

と言い出しているとの事なので、冬休み中はドローレスの家のお茶会に招かれている。


バートランドがマイナールートの攻略対象者である以上、ドローレスもまたユーフェミア達と同様に悪役令嬢候補。


レベッカは

(嫉妬されるような理由は皆無。本当は会わなきゃならない理由もない。面倒くさいだけ)

と本音では思っている。


そもそもバートランドはレベッカの理論に対して意地の悪いツッコミをして屁理屈こねて否定意見ばかりぶつける。


もはやレベッカの中では

「陰険顧問」

にしか見えない。


それでも今後は更に試作品作りに必要になる機材や素材購入関連で世話になる。


バートランドが婚約者の杞憂を払拭する手伝いを望むのなら協力しておくべきなのだろうとの打算から会う事に決めた。


レベッカの人付き合いは

「必要性が有るのか?」

に応じたものだ。


あちこちに顔を出して色んな人間に様々な場面を見られると、そこに克明な印象や偏見が勝手に生み出される可能性が高くなる。


会った事もないのに噂話だけで偏見が持たれる事もあるが

そういった曖昧な偏見は

「仲良くしておくと得できる」

というポジティブな印象を与えるべく実際に対面してしまえば

比較的簡単に覆せる。


レベッカにとって

「対人関係における親和性」は

「関わらずにおけば温存しておけるもの」なのだった。


あちこちに顔を出し

あちこちで偏見を持たれ

実際に無礼な仕打ちを受けて攻撃されてしまうと…


こちらが気にせずにおいても相手は

「自分が間違っていると認めたくない」

と意固地になって

「自分の偏見と攻撃を反省する」

どころか

「益々ムキになって悪意を増幅させる」

可能性が高い。


そんな悪意のストーカーを無駄に生み出さない為にも

「実際に対面して関わるのは少数に絞る」

に限るのである。


それでいて

「誰と関わり、誰と誰を引き合わせて協力関係を築かせるべきか」

といった適材適所の看破に関しては抜かりなくやりたい。


社交の場は目立とうとする場ではなく

人物鑑定の場であり情報収集の場でもある。


流行を程よく取り入れ

褒められも貶されもしない程度の装いと振る舞いで

口数少なく人の話に耳を傾けるのがレベッカ流の処世術だ。


「楽しい」

とはお世辞にも言えないが…


社会的に活動するには他人と関わる必要性はどうしても生じる。


人間不信のまま引きこもっていたいと思っても…

実際に人間一人が引きこもって生きていけるほど社会は甘くない。

開き直って出るべき時は出るしかない訳である。


学院内のイベントには

舞踏会

剣術大会

研究発表会

音楽祭

などの催しがあるが

基本的に催し物は二学期末から三学期にかけて行われる。


授業内容の大半が二学期末までに終了するように学習課程が組まれている。

なので、一学期と二学期中盤までは学院は座学中心の詰め込み学習。


詰め込み学習に余裕が出てきた二学期末から三学期にかけてが

これまでの成果を発表したりする趣旨でイベントが開催される。


学院の新年度は夏休み明けの初秋から。


二学期末は初春。


三学期は春から夏にかけて。


学院内社交は初春頃から本格的に始まる事になる。


ともかくーー

バタバタと過ごしているうちに、冬休みに突入してしまい

(盗難防止のために)

寮の荷物を引き払い自宅のグラインディー侯爵邸へ戻る事になった。


ドローレスの元へ訪問するのは冬休みに入って三日目の日。


寒い中馬車で移動するのは路面に凍結予防処置がされてる大通りを通行して行ける場所のみ。

その点、ウエストブルック子爵邸は真冬でも馬車で行ける場所にあった。


領地持ちの貴族にとって王宮のお膝元の王都にある屋敷はタウンハウス(別荘)に該当する。


一方で官司が目立った貢献をして高級官職就任と共に叙爵した貴族は領地持ち貴族とは違って王都内の屋敷が本邸となる。


ウエストブルック子爵は領地を持たない法衣貴族の中でも重宝されている人物らしく、当人は王宮内に住む場所を与えられていて家族を住まわせる屋敷も王宮側の交通の便の良い高級住宅地にある優良物件を与えられている。

コンクウェスト侯爵の取り巻きの一人である。


バートランドもドローレスも今の所は爵位を継ぐ予定は無い。


だが派閥内で

「使い所がある」

と思われれば

「叙爵させて手駒としてキープ」

される事になる。


公共事業を請け負う競争入札なども案外

「その業界ぐるみが特定派閥の傘下」

だったりする。


上流階級の人間達が展開する権力ゲームの目指す所は

「公金を自分達の派閥の私的財産のように啜り、集団我田引水を着々と行い続けて繁殖・繁栄する事」

なのだ。


派閥内に手駒に使えそうな者がいれば引き立てて恩を売っておき、派閥内のヒエラルキーと恩恵を理解させておく筈である。


可能性として

「レベッカが魔法攻撃無効化魔道具を完成させても、その手柄が何故かバートランドのものにされてしまう」

といった事態が考えられる。


それを避けるにはレベッカはコンクウェスト侯爵とは別口の派閥に

「魔法攻撃無効化魔道具を作ろうとしている」

という現状を吹聴しておかなければならない。


そして可能な限り

「冬休み期間中に学院長が用意する予算に頼らずに自費で試作品を作っておく」

方が良い。


完成品としては小型化してアクセサリー型にするつもりでいるが…

試作品はデカくて構わない。


とにかく魔法攻撃無効化の作用が起こせて、それを

「レベッカが自分一人で作った」

とコンクウェスト侯爵派のアンチ派閥の大物達に見せつけておけば、レベッカの知的財産権が何故かバートランドのものにされるような事態を防ぐ牽制になる。


レベッカとしては魔法攻撃無効化魔道具の知的財産権自体はそこまで拘ってはいないが…


貴族社会では

「簡単に手柄を横取りできる(美味しいカモだ)」

と見做される事自体が、その後の人生に降りかかる人災の呼び水になりかねない。


貴族間の「カモ・リスト」にその名を記されるとーー


それまで誠実であった筈の人達の中にも邪心が起こるようになり

周囲の人々のメンタルが無駄に劣悪化する元凶になりかねない。


よってレベッカの

(私の知的財産権を簡単に盗めるとは思わないでよね)

といった牽制はレベッカの自己保身であると共に社会貢献でもある。


お人好しで騙されやすい人々は

「悪魔の誘惑に弱い人々」

を堕落させる誘因剤となってしまう。


そんな無知と無防備の罪を犯しながら

それでいてその罪を自覚しない…。


無知と無防備の罪を犯す人々にしても…

「筋金入りの性善説信者」

に成りきって自分一人で沈められていくのなら良かろうが。


刷り込みのまま役目を果たし続ける盲導犬さながらに

虐待に耐えつつ死ぬまで大人しく搾取され尽くして

誰も恨まず次の生へと流れて行けるほどの純粋な存在には

人間はなりきれない。


逆恨みに堕ち

どこまでもどこまでも狂う。


そうならないためにもーー

人間は無知と無防備の罪を犯すべきじゃない。


性善説に従って生きるようではいけない。

「カモ・リスト」に名を乗せられるようではいけない。


自分のためにも

他人のためにも

万人のためにもーー。



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