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44:ロドニー・デュー視点21

挿絵(By みてみん)


ダンジョンは入り口付近は壁も床も天井もゴツゴツしている。


「ダンジョン内は不思議空間なので内部に光源がある。階層によっては平原フィールドが拓けていて空もあれば太陽も月も星もある」

と言われているが、それは出入り口がある階層から登るか降るかして階層移動した後の話である。


出入り口がある階層は「外と内との境目」の階層という事なのだろう。

光源もない真っ暗闇の炭坑仕様…。


そこから階層を上がるダンジョンもあれば下るダンジョンもある。

「登りダンジョン」のダンジョンコアは赤いビーズに似た色と質感を持つ球体らしく

「降りダンジョン」のダンジョンコアは黒いビーズに似た色と質感を持つ球体らしい。


ドミニク王子が色付きの砂利やビーズを盆の上に乗せて空間概念を説明したのも、ちゃんと意味があるようだ。


蜂型魔物や蜘蛛型魔物が次々に湧いてくるので

俺達は一人一人距離を置きながら大振りに武器を振り回して進む。


無駄のない動きで効率よく瞬殺していくと

「魔物を攻撃する際に壁まで斬りつける」

という動きができない。


魔物へと攻撃してるだけのように見せかけて壁を傷付けて回るのが狙いなので攻撃フォームがワザと大振りになるのだ。

これがまたかなり体力的に消耗する…。


身体が出来上がってる訳じゃない王子にとって特にシンドイのではないかと思う。


オーバーアクションに動き回りながら魔物を殺すついでに勢い余ってダンジョンの壁を傷つけている訳だが…

そういった演技が見抜かれてでもいるかのように、魔物の出没頻度がいつもより段違いに高い。


(…これはダンジョンがなりふり構わずに「殺しに掛かってきてる」って事なんじゃないのか?)

と内心で思うものの口には出さない。


ドミニク王子が疑っているようにダンジョン自体に知性があり意志がある場合、ワザとダンジョンの壁を傷付けている事が確定的にバレたら…

どんな手口でこちらを殺そうとしてくるのか想像がつかない。


「…ふぅっ。…さすがに疲れたね。ここに入ってからずっと次々に魔物が襲い掛かってくるから全力疾走し続けてる感じで体力が削られたよ。

…私が皆の足を引っ張ると、それがキッカケで総崩れになりかねないし、そろそろ引き返す事にしようか」

とドミニク王子が言い出したので少し安心した。


正直、ドミニク王子の剣技は既に俺を超えている。


殺気に気付いてすかさず迎撃する反射神経も長期休暇の度に行っていたダンジョン巡りのお陰で鍛えられている。


まだまだ成長期という事もあり身体が出来上がってないが…

戦闘力自体は大したもの。

同年代の子供達の中では確実に群を抜いている。


ドミニク王子と張り合える戦闘力の持ち主は同年代の子供達の中ではレベッカ嬢の婚約者であるエリアル・ベニントンくらいのものだろう。


更には文武両道。


さすがの俺でも

(この国はこの王子を失う訳にはいかない)

という事くらい分かる。


ドミニク王子のような人間を失えば、この国は転がり落ちるだけだ…。


社会奉仕精神を持つ天才に依存しないと

国など簡単に解体されてしまう…。



現実世界ではーー


思考体力が無駄に絶倫で一見頭が良さそうに見えながら

「好き=善、嫌い=悪」

といった情緒至上主義に耽る者が多かった。


「好き=善、嫌い=悪」

といった情緒至上主義に耽りながら

「感情的ではなく合理的に生きている」

ように見せかけるべく詭弁を弄していた。


そういった手合いの人達は

事実を指摘されると時に激昂して

事実指摘者を攻撃した。


あの世界では

「悪を悪だと認識し、悪を断罪する」

という行為のハードルが高かった。


「敵を美化せず事実を見る」

認識力のある者にとっては

「テロリズムによる脅迫」

は身近だったからだ。


「既に敵が内部に入り込んでいて何処から攻撃が来るか分からない」

という恐怖支配社会。

あの世界の社会の実態。


欧米の行方不明者数の膨大さ…。


海外ドラマなどにおいても

「無辜の移民を装った乗っ取り侵略兵」

のような

「特殊軍事工作に関して言及する」

ような作品は不自然なまでに少なかった。


それこそが

「侵略者のテロリズムを刺激する可能性すらも恐れて不自然に言及を避ける」

心理の証左のように俺には思えた…。


あの世界の人々の多くは

「目隠しを外して真実を見る」

ことを

「しよう」

とすら思っていなかった人達だらけ。


それはまるでーー

魂レベルでストックホルム症候群罹患者の群れ。


…そんな悲しい魂を量産していた世界ーー。

あんな図式を俺は二度と目にしたくない…。


罪深すぎる図式ーー。


俺はそんな図式の正当性を否定する。

永遠に否定し続ける。


「活きる」事と「生きる」事は違うのだ。


他国に入り込んで自らアウェイに来ておきながら

「抑圧されている。差別だ、許せない」

(アウェイをホームへ変えるべきだ)

と在住国を逆恨み。


「これは差別者達を誅して自由を勝ち取る戦いだ」

と侵略正当化して自分達を美化する欺瞞に耽る狂気的身勝手さ。


自分達が特殊軍事工作に従事している自覚すら持たず

卑怯さを自覚せず

反省もせず

罪悪感すら持たない者達。


罪深すぎる。


特殊工作に手を染めて権力ゲームの駒となる道は

「祖国と同胞の支援を得て、自分の能力を引き出し自分の可能性を試す機会に恵まれる」

兵隊の道、戦いの道である。


一方で

「生きるだけでは満足できずに『活きたい』と欲を出した」

欲望の道、血塗られた自己陶酔の道でもある。


権力ゲームの駒

侵略ゲームの駒

そうなったならば生きるのにリスクが生じるのは当たり前。


非民間人として活動しておきながら

民間人だと詐称し

自分達の吐く嘘を自分達で信じ込む者達など

「癌細胞だ」

と感じられる。


縁のあった知人がそんな罪へと堕ちたら

「断罪したい」

という激昂と

「断罪したくない」

という愛着とがひしめき合うのだ。


それは矛盾地獄…。


「活きる」事を選んで魂に傷を負うのならーー


それはせめて「自分の国」において行うべきなのだ。


自分の国で活きたいと望んで

自分の血を流すからこそ

人間の心の真実を貫ける。


自分の国で活きたいと望んで

自分の血を流すからこそ

「活きたいと望んだ罪」が

予定調和の波の中へ昇華されていける。


(…国なんて…社会なんて…大き過ぎて手に負えないんだがな。…それでも「絶対に死なせてはならない人」というモノが居れば、俺にはそれが分かってしまうんだから仕方ない…。本当はお気楽に気ままに生きたいんだが…)


俺は因果というモノの皮肉さを感じ

今更ながら苦笑を漏らした…。



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