表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/71

4

挿絵(By みてみん)


グラインディー侯爵家令嬢。

レベッカ・マドレーン・ルース。


彼女は慢性的に不機嫌な家族と同様に、慢性的に不機嫌だった。


すぐにイラついて侍女や侍従に当たり散らす。

そんな性格に自分でも全く疑問を持って居なかった。

ある時まではーー。


…記憶が蘇るという現象は

「記憶の引き出しを引き出してしまう」

事で起こる。


レベッカは一人で食事をしながら急激な腹痛に見舞われて

(…苦しい…。死ぬのか…。私は誰にも愛されていない…。…最期の最期まで、私は誰からも愛されなかった。…今回も…)


そう思いながら…

液状の便を漏らしつつ口からは一度嚥下した食物を嘔吐した…。


ドラマなどフィクションだと

毒を摂取した時に口から血を流すようなシーンが描かれるが…


実際に毒物にやられると…

非常に見苦しい状態で

(失禁上等…)

悶え苦しむ事になるのだ…。


レベッカは悶え苦しみながら気を失った。


そのまま

「自分がアラサーの枯れた日本人喪女だった」

事を思い出し…


目が覚めた時に

「…私は乙女ゲームの世界に転生してしまったんだな…。しかも悪役令嬢に…」

と理解できた。


アラサーの日本人喪女ーー

岡崎五月おかざきさつきだった自分。

死んだ原因は食中毒だった。

(直接死因は食中毒による脱水症状)


なので毒物を摂取して死にそうになった事で

五月としての記憶を思い出してしまったようだ…。


「前世を思い出すキッカケは同じような死因で死にかける事?なのかな…」

とボンヤリ考える。


…家族から愛されていないとは言っても

レベッカ・ルースは腐っても侯爵家令嬢。


倒れているのを執事に発見されて一応医者は呼ばれた…。


勿論、この世界の医学レベルは迷信蔓延る中世医学。

解毒剤の種類も毒の種類に応じたバリエーションがあるという訳ではない。


いわゆる万能解毒剤テリアカと思われている吐瀉促進薬を口に流し込まれ、寝てる間にも嘔吐させられ、胃の中を完全に空っぽにさせられただけで…

後は当人の生命力に頼るという原始的なやり方…。


(…よく死なずに済んだものだな)

と自分の生命力のしぶとさに密かに感心してしまった。


現在11歳ーー。


レベッカは死にかけ、岡崎五月だった頃の記憶を思い出した事で、今自分が暮らしてるこのランドル王国が

「暁の乙女シリーズの世界だ」

と気が付いたのだった…。


更には自分の名前がレベッカ・ルースである事から

「私はエリアルルートの悪役令嬢だ」

「今の時間軸は『暁の乙女と時空の虚無神〜革命前夜〜』のゲームが始まる4年前だ」

という事も悟った…。


『暁の乙女と時空の虚無神〜革命前夜〜』通称アカオト3。

そこに登場するヒロインはクラリッサ・チャニング。

クレーバーン公爵家令嬢。


クレーバーン公爵家の一粒種の嫡男が亡くなり、後継者は親戚の中から出されるものと誰もが思った中、公爵が愛人との間に娘を設けていた事が明らかになった。


クレーバーン公爵の愛人は国立劇場の女支配人。

歌姫のポジションから成り上がった女性。

クラリッサはその娘。


クラリッサは自分の母に憧れて

「母のようになりたい」

と思っていた。


クラリッサは歌姫としての才能にも恵まれていて、尚且つ貴族特有の

「魔力を持つ体質」

である。


自分の声に自覚もなく魔力を乗せて

「自覚もなく魅惑魔法エンチャント効果を発揮してしまう」

天然の危険人物…。


王立学院は貴族子女が12歳から通うものだが…

ヒロインが王立魔法学院へ入ってくるのは15歳の時。

高等部からの入学。


ヒロインが公爵家令嬢である事実は最初は伏せられている。


公爵の意向もありーー

貴族のマナーを学び公爵家令嬢として相応しい振る舞いができるようになるまでは

「公爵家の親戚」

という名目で学院で学ばなければならないのだ。


乙女ゲームにおける

「庶民感覚のヒロイン」

という存在ーー。


それはそれまでの貴族らしい貴族達に対しては

「まるで托卵雛」

のような存在。


托卵雛は卵から孵ると刷り込みのままに

産み付けられた養父母の巣で

その巣の本物の卵を押しやって巣から堕とす。


何の罪悪感もなく

そこで生きていく筈だった者達の居場所を奪い

養父母に厚かましく甘えて遠慮なく餌をねだる。


急に割り込んできて

本来そこで生きる筈だった者達から生きるのに必要なものを奪い

そうして生み出す犠牲に対して何も感じず

「自分の幸福だけをひたすら望んでしまう」

生き物…。


だからこそ王子をはじめとする高位貴族令息達がヒロインを溺愛して

「托卵雛にせっせと餌をやり、自分の本当の子供を顧みない愚かな親鳥」

のような鳥頭状態になってしまった場合

「王国の滅亡」

という運命が用意されている。


そしてバルシュミーデ皇国軍の侵攻。

それを撃退できずに大量の戦死者を出して

「ランドル王国」

自体が無くなる。

ヒロインは攻略対象と共に他国へ亡命して平民として暮らす事になる。


国民が奮闘してバルシュミーデ皇国軍を追い返しても

『時空の虚無神』に憑依されたNPCが闇魔法を暴走させて

「ランドル王国」

のみならず

「世界」

を消滅させてしまう。


正攻法のハッピーエンドを迎えるには

「ヒロインも攻略対象達も精神的に成長していなければならない」

のだと言われる。


悪役令嬢も通常だと破滅エンドが待っているが…

ハッピーエンドだと修道院行きで済むらしい。

後年は悪役令嬢だった女性達は国内福祉に力を入れて「聖女」と称えられるのだとも言われていた。


「ハッピーエンドはちゃんと存在する」のだ。


だが一部のプレイヤーの間では

「ハッピーエンドが存在しない鬱ゲー」

と認識されていた。


いずれにせよハッピーエンドとなる可能性は低い。

五月が破滅を免れてハッピーエンドに辿り着けるのかどうかは分からない…。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ