28:ロドニー・デュー視点9
バルシュミーデ皇国に嫁いだランドル王国の王妹殿下とソックリな顔をしていて、アザール王国の王族の色である紅玉色の瞳と灰褐色の髪を持つレベッカ・ルース嬢…。
その存在は
「軍事大国バルシュミーデ皇国に対するランドル王国とアザール王国の裏切り」
の象徴にもなり得る。
(…なるほどレベッカ嬢に対して誰もが腫れ物でも扱うようなギクシャクした態度になるのには理由があったのか)
と合点がいった。
もっとも。
世の中には「周りに倣え」的に他人に対する態度を決めている者も多い。
「みんなが腫れ物に触るように扱っているから自分もそうしておこう」
という集団同期化による隠蔽的擬態で自動保身を図っているのだ。
「みんなが大事に扱っているから大事に扱う」
「みんなが粗末にしてるから粗末にする」
そんな集団同期化による自動保身行動を無自覚で行っている人達は
そういった集団同期化現象を悪用したロジックにも騙されやすい。
現実世界のマスコミが得意としていた手口もその手の詐術だ。
「コイツは犯罪者だ。コイツは悪者だ。みんなコイツを叩け」
と事件の容疑者の情報を拡散しておいて
いざ大衆が思惑通りに容疑者を一斉批判し出せば
「大衆は残酷だ。非寛容だ」
と
「批判者を批判する声を取り上げる」
事で犯罪者を擁護し出す。
マスコミに踊らされて義憤を爆発させれば、お次は必ず卑しめられる罠が予め仕掛けられていたのだ。
ならば踊らされてやるだけ損というものである。
しかも偏向報道が酷い。
「何故こんなアホなネタがニュース報道されるのか」
「何故あの出来事がニュース報道されてないのか」
「何故容疑者の情報が根掘り葉掘り報道される時と年齢・性別しか報道されない時があるのか」
「何故容疑者の国籍や帰化履歴や民族活動履歴を報道しないのか」
「何故容疑者のオタク趣味や発達障害傾向を報道するのか」
そういった点を突ついていけば…
報道機関への不信は増す一方。
集団同期化による隠蔽的擬態での自動保身。
それは自覚するべきものだ。
(…それにしても、グラインディー侯爵も王族関係者もよくレベッカ嬢を始末せずに居たものだな…)
と思いながら
(そう言えば、レベッカ嬢は「毒を漏られて死にかけて以降、自分の食事は自分で作っている」と言っていたような…)
と思い当たった。
だがグラインディー侯爵家令嬢の毒殺未遂犯捜索が行われたなどという話は聞いた事もない。
おそらく「彼女を殺そうとしてる者はあえて野放しにされている」のだろう。
(うん。むしょうにムカつく…)
彼女を保護するべき大人達は彼女に対して
「(自分の手が汚れない状態で)死んでくれて構わない」
と思っている可能性がある。
『未必の故意』による犯罪者の放置と被保護者の放置。
それは何とも卑怯なネグレクトなのだが…
そうやって
「保護するべきか弱い存在を守りもせず犯罪者を野放しにしておく」
心理の中にある婉曲的殺意・婉曲的嗜虐心を自覚しない人も居るのだろう…。
誰もが「我が子が可愛い」と自分の子供を依怙贔屓して守っている環境にあっては、親から守ってもらえない子供は子供社会の中でも圧倒的な不利をこうむる事になる。
「皆が我が子を護る」中では
「親が我が子を護らない」のは婉曲的な子殺しとなる。
そんな当たり前の事すら…理解しない者達もいる。
「自分の子供を依怙贔屓せず守ってもいない私は分け隔てをしない公平な人間だ」
と言い張る親は特に。
皆が我が子を依怙贔屓するのが当たり前の社会で
我が子を依怙贔屓しない公平さのフリをした継子殺し。
そんな醜さは現実世界の日本にも溢れていたが…
(…この世界にも有ったのだな…)
と思うと気が滅入りそうな気がした…。
それでいてレベッカ・ルースの硬質な孤高的雰囲気も思い出して
(…鍛え上げられた日本刀みたいな雰囲気だ)
とも感じた。
ふとドミニク王子の事に関しても思い出す。
サマーキャンプの間も何度も襲撃されて、ひたすら「殺意」と向き合わされた事だろう。
護衛は付けられるが、襲撃者側が本格的に捜索される事はない。
何せ襲撃者側を探れば正妃とその実家であるオークウッド公爵家ならびに、そのルーツであるアザール王国が炙り出される可能性が高いのだから。
いつ来るとも分からぬ襲撃。
元を断つという事もしてもらえずに、生きている限り延々と
「邪魔だ。死んで欲しい」
という悪意を向けられ続ける。
ドミニク王子もグレッグ王子もまたレベッカ嬢と同じように
『未必の故意』による犯罪者の放置で
死と隣り合わせの状態で生きてきている…。
人並みはずれて聡いドミニク王子はその事に気付いている筈なのだ…。
そう思った時にドミニク王子の持つ「色気」とも付かぬ魅力が
「憎悪を糧とした蠱惑」
のように思えてーー
何故か身体が震えた…。
*明日から1日2話の更新です。
*2025年12月12日完結予定となっております。




