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挿絵(By みてみん)


バンクロフト家での昼食会を終えて数日後

「ダンジョン産のナイフ」

がお礼として贈られてきた。


暁の乙女シリーズの世界ではーー


ダンジョンは

「それ自体が空間属性を(闇属性を)持つ魔物」

であったりする。


つまり「ダンジョン」は「具現化したアストラル界の魔物」。

「ダンジョン内部」は「具現化した低次アストラル界」なのである。


その具現化したアストラル界の魔物であるダンジョンの本質は

「結晶化した瘴気」。


健全な社会では貴族という特権階級は

「飢饉の際にこじ開けられる備蓄庫」

のような存在でしかない。


素朴な人達からすれば

「結晶化した瘴気であるダンジョン」

から便利な道具や宝物を見出して生活に役立てることも道理。


何気にダンジョン産の道具やドロップ品は出回っている。

ダンジョンは貧しい領地にとって貴重な資金源となっている。


だがダンジョン自体が空間属性の(闇属性の)魔物の一種である以上

いずれ核を破壊しダンジョンを消去させる攻略も必要になる。


欲をかいてダンジョンを放置し

ダンジョンを巨大化させてしまうと…

内部で魔物が大量発生してスタンピードの元凶になる。


ダンジョン巨大化に伴うスタンピードによって滅んだ国もあるくらいだ。

「欲は身を滅ぼす」

のである。


ゲーム内でもーー

欲をかいた領主が領地内のダンジョン消滅時期を見誤ってスタンピードを招いてしまい、凄まじい数の領民を死なせてしまった惨事が起きていた。


騎士団の精鋭達で討伐隊が結成されて魔物討伐もダンジョン攻略と核破壊によるダンジョン消去も済まされたが…

その後の顛末は決して一つではなくルートごとに分かれる。


「スタンピードを招いた領主は一族諸共処刑」

というルート。


「ダンジョン利権で甘い汁を啜っている連中の暗躍によって、領主一族が制裁される事もなく野放しとなり、逆にスタンピード被害の拡大を抑えるべくダンジョンを攻略・消去させた精鋭部隊の騎士達の方が言いがかりを付けられて粛清されてしまう」

というルート。


そんな陰惨な事件は

「王国の弱体化」

に拍車をかけてしまい

「バルシュミーデ皇国軍の侵攻」

を招く隙となる。


「欲をかいてダンジョン消去時期を見誤る」

とろくな事にならないのである…。



***************



トレント家での昼食会も無事に成功をおさめて

「他人に作ってあげるのって緊張したけど楽しかったなぁ」

と思ったレベッカは


その後も菓子を作る時は多めに作って屋敷内の使用人達に配るようになった。


最初は厨房スタッフと執事と女中頭と毒味係をしてる侍女や侍従に

「予行演習に協力してもらったお礼」

として配り


その後は他の使用人達にも

「良かったらどうぞ」

と分け与えた。


レベッカは

「自分が楽しい気分で作った料理は味も美味しいだけでなく体調も良くなる」

と気がついた事もあり


労働量が多くて疲れ気味の者達には積極的に手作りの菓子を渡していた。


餌付けのつもりはなかったものの…


結果的にはレベッカに餌付けされてしまった使用人が増えたので、家族からまるっと無視されて放置されてる割りに寂しさを感じる余地も無くなってしまっていた。


今はむしろ無視されるより

「可哀想に」

と変な同情をされるのが嫌だと感じる。


まるで…

「惨めなもの」

というイメージが自分に張り付いてきそうな気がするのだ。


特に好意を持った相手が低次元な情緒主義者だった場合、ことさら

「惨めなもの」

というイメージが張り付いてくる気がする。


なので

(…低次元な情緒主義者から変に身近な存在のようにナメられたりすると、相手から見た自分のイメージが変に貼り付けてこられる、という事なんだろうな…)

と思った。


低次元な物の見方をしてて思い込みの激しい人に対して

下手に出たりナメられたりすると

悪運がまとわりつく惨めなイメージがネチネチ貼り付けてこられる。


大半の人間が

「気のせいだ」

と思おうとするが…


低次元な物の見方をするくせに行動的な人達は

無自覚なまま偏見の貼り付けをしていて

貼り付けたイメージ通りの振る舞いを相手に強いる圧力を

無自覚なまま振りかけてる人達だ。


身内贔屓によるピグマリオン効果のバフや

ヘイトによるゴーレム効果のデバフとは

また違うものの…


「『自分の視線の力が相手の足を引っ張ってる』事に気付かないまま、相手を惨めさの沼に沈めて絶望させる邪眼の持ち主」

は存在するのだ。


投影魔術が

「何度でも世の中に再現させたい素晴らしいもの」

のイメージを投影して対象を変質させたり


付与魔術が

「何度でも世の中に再現させたい素晴らしいもの」

の性質自体を付与したりするものであるのに対して…


邪眼は

「世の中に再現させるべきではない救いのないもの」

のイメージを投影して対象を変質させたり、不毛な性質を付与してしまう。


「他人の不幸は蜜の味」

と思う嗜虐心や

「可哀想な人を可哀想と思ってあげる私は優しい」

と思うナルシシズム。


そんな低次元な意識の人達が活動的になって好き勝手な偏見を吹聴して回り、周囲の認識に低次元な影響を与えていくと…

好き勝手な偏見をなすりつけられた側は低次元さに汚染された人達との間に溝が作られている。


まるで並行世界みたいに「実際の現実」と「偏見にまみれた観点からの現実」との間には隔たりができる。


不思議な事にーー

偏見にまみれた観点からの現実に意識が呑まれてる人達には、同じ言語を話していても言葉が通じない事が多い。


それは今のところ「悪意」にまで育ってはいないものの…


(低次元なのに社交面で活動的に自分の偏見的観点を広めて回る人達というのは…貴族だろうが、使用人だろうが、どんな界隈にも存在していて、自分の偏見が他人の足を引っ張ってるのに気付きもせず反省もしない分だけ罪深いのだな…)

と感じた。


それと同時に

(魔力が「飲料用に使用できる綺麗な水」だとするなら、魔素は「飲料用に使用できないバイ菌だらけの汚い水」、瘴気は「飲料用どころか触れるだけで危ないバイ菌と蟲だらけの汚染水」みたいなものなんだろうな)

と気がついた。


学院に入学するなどして大勢の人の中に入ればーー

低次元な人達から勝手に値踏みされて勝手な人物像を投影される。

偏見に基づいた態度を取られる可能性も上がる。


(「自分が護られるイメージ」を思い描きながら魔力を注いだ御守りを幾つも作って、身につけるなり持ち歩くなりして低次元な人達からの魔素の投射や悪質な相手からの瘴気の投射を打ち消せるように対策を立てておいた方が良いのかも知れない…)

とレベッカが思ってしまったのも仕方ない事だった…。



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