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16:ロドニー・デュー視点5

挿絵(By みてみん)


この世界に関する俺の情報は腐界寄りだ。


何せ本当のゲームのシナリオを知らない。

ゲームをプレイした事もなくタイトルもろくに思い出せない。


妹が描いていたイケメン達の恥ずかしい性癖やヤンデレぶりだけが俺の知るこの世界の全てだ…。


乙女ゲーム世界であるからには「悪役令嬢」などといった存在も居る筈だと思うのだが…


妹は「イケメンしか描かない」同人作家だったため、俺の偏った知識の中に女性キャラの存在は欠片もない…。


だがレベッカ・ルース嬢に対しては

「悪役令嬢かも知れない」

という疑惑が起こった。


彼女は子供ながらドミニク王子並みに存在感が濃かった。


前世の記憶を取り戻した俺の前にーー

一斉に姿を現した攻略対象者達同様に会場に現れた美少女。


この出会いに意味が無い訳がないと思った。


なにせレベッカ嬢が

『騎士団見習い志願者用研修会、二週間野営コース』

に参加できる見込みは限りなく低かった。


だからこそ彼女が会場に現れて衆目を集めた出来事自体が

「彼女がゲーム開始前に攻略対象者達と面識を持っておくイベント」

である可能性が高い、というのが俺の読みだったのだ。


参加者数は30人までなのに参加希望者の子供達は100人以上。

大半が参加資格を与えられる事なく脱落する。


参加希望者招集会場から野営地までの

「23.8kmを走破する」

という選別による篩い落としによって…。


11歳の侯爵家令嬢が

「23.8kmを走破する」

という選別を突破するなどとは普通誰も思わない。

しかもレベッカ嬢は初参加。


参加者選別方法は毎年同じ。

前年に篩い落とされた者達が1年かけて走り込みを積み重ね

翌年にやっと食らい込んでくるらしく

「23.8kmを走破する」

という選別を経てサマーキャンプに参加するのは

参加資格者年齢の10歳〜12歳中、殆どが12歳。


初挑戦でこのサマーキャンプに参加できた者は一部の例外のみ。

女子で参加できた者は今の所一人も居らずとの事だった。




そんな中でーー


レベッカ嬢は初挑戦で野営地まで走り着きキャンプに参加資格を得た。

充分に驚愕に値する…。


(タダもんじゃねえぞ!やっぱり悪役令嬢に違いない!)

と俺は半ば確信を持ったのだった。


野営地に辿り着いた子供は30人に満たず26名。

俺達からすれば参加者人数は少ない方が良いので少しホッとした。


何せサマーキャンプを仕切る教官(兼護衛)は

ラング・ボネット

レイ・チャーチル

エセル・アボット

デール・フレッカー

ドルフ・ラティマー

イーサン・ブレイク

マーカス・モーズリー

の7名に俺を加えた8名。


テントを貼るのが、魔物の跳梁跋扈する森の中ではなく森のわきなのが救いだが…

8名で30名の子供達のお守り兼護衛をするのは負担が大きい。


定員を4人きってくれただけでも有り難かった。


去年も教官役を演ったエセル達に言わせれば

「不自然なくらいに(去年初参加時の)ドミニク王子にのみ集中して魔物が襲いかかっていた」

との事だ。


この国の権力事情によるものなのだろうが…

側妃が産んだドミニク王子とグレッグ王子は事故を装った暗殺未遂に遭遇する頻度も高い。


正妃が産んだ第三王子サディアス王太子殿下が蝶よ花よと育てられている中で、第一王子と第二王子の方がスペックが高い。

しかも第一王子ドミニク殿下と言えば幼少期より神童として名高い。


正妃陣営からどんな嫌がらせを受けてきているのか分かったものではない。


今年の参加者の中にはドミニク王子だけでなくグレッグ王子もいたのだから

(この機に乗じて側妃腹の王子二人を始末しようとしてくるんじゃあるまいな?)

という警戒心が湧いて俺達がピリピリしてしまっていたのは仕方ないと思う。


夜行性の魔物も多い。

夜行性の魔物は夜目が利く。

人間が魔物を見つけるより早くに魔物は人間を見つけてしまう…。


野営中、夜には大人も子供も交代で見張りに立っていたが…

俺の目の前でも

「魔獣がドミニク王子目掛けて襲いかかる」

ような事件が起きた。


殺気というモノは

「標的を死の運命へと巻き込む」

のような不思議な作用を引き起こす。


自分が殺気を向けられた場合にはほんの一瞬自分の死に顔が脳裏をよぎるし、側にいる誰かが殺気のターゲットなら、その人物の死に顔が浮かぶ。


真っ暗闇の森の木陰から嫌な気配がしていてドミニク王子の死に顔が一瞬脳裏をかすめた事によって、魔獣がドミニク王子に襲いかかるよりも数秒前に俺は襲撃を予測していた。


ドミニク王子の前に立ち塞がって

闇の中から飛び出してきた魔獣を一刀両断にできたのは

偶然でもなければ運が良かった訳でもない。

全ては訓練と実力の賜物である。


だが子供達は殺気自体に慣れていない。

(((((何が起こった?!)))))

と戸惑ったように子供達が硬直した状態で数秒が過ぎた。


「…あ、ありがとうございます…」

とドミニク王子が驚愕状態から気を取り直して俺に礼を言った事で


同じ時間帯に見張り番をしていた子供達も

「…び、ビックリした…」

「一体、何だったんだろ」

「…森の茂みの中から魔獣が最短距離でドミニク王子に襲い掛かったよな…」

と口々に自分の思いを口にした。


それに対して俺は

「丁度いいから、よく聞いておけ。この場に居た全員がこの魔獣が放っていた殺気を浴びている。

あれくらい強い殺気だと騎士ならすぐに気づかなければならない。

大事な事だから忘れずに覚えておいて欲しいが…『殺気に気づかなかった』と思ってるヤツは『気づかなかった』のではなくて『殺気に呑まれて、魔獣から振りかけられた死の運命の中に巻き込まれていた』のだという事を自覚して欲しい。

殺気に呑まれて殺気に気づかないヤツは回避行動も迎撃も有効に行えない。

戦闘は剣術や魔力補助だけでなく『敵が放つ殺気に呑まれずに済む胆力』を鍛える事も必要だ。本気で騎士を目指す気があるなら、よく覚えておけ」

と教えつつ、魔獣の心臓部分に切れ込みを入れて魔獣の死を確実なものにした。


そうこうしている間にもーー

魔獣の心臓部分に魔石が発生し、焚き火の灯りに反射して鈍く光った…。


ドミニク王子が

「…デュー教官。『殺気』とは何なのでしょう?私は先程『自分の死に顔』が脳裏に浮かんでゾッとして怯んでしまったのですが…。そういった感覚をこちらに味わわせた『何か』が『殺気』なのでしょうか?」

とボソリと小声で尋ねてきたので


「…そうです殿下。魔獣や野生動物の殺気は直接的で分かりやすい。

だから殺気を向けられれば自分自身の死に顔のイメージが見えますが…婉曲的な殺意の場合にはもっと不透明なモノが見えます。

いずれにせよ『迷いのない殺意』は、それを向けられた側に対して殺意の反映である何らかの印象を伝えてくるものですよ…」

と事実を教えてやった…。



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