帰り道
「――今日はどうだった、ハイノ?」
「うん、すっごく緊張はしたけど……でも、すっごく楽しかった。みんな、すっごく優しかったし」
「ふふっ、良かったねハイノ」
それから、しばらくした放課後のこと。
帰り道、軽やかな足取りで隣を歩くエルナがそう問い掛ける。……うん、ほんとに楽しかった。上手くしゃべれないぼくに、みんな気さくに話しかけてくれて……うん、ありがとうみんな。そして――
「……ありがとう、エルナ。今日、少しでもぼくがみんなとお話できたのは、エルナのお陰だから」
「……別に、わたしはなにもしてないけどね。でも、どういたしまして、ハイノ」
そう伝えると、柔らかく微笑み答えるエルナ。もちろん、みんなにも感謝している。それでも、最も感謝をすべきはやっぱりエルナしかいなくて。と言うのも、ぼくがみんなと話せるようにエルナが色々と気を遣ってくれていて……うん、ありがとうエルナ。
「……でも、授業はほとんど分からなかったな。先生にも気を遣わせちゃったし、申し訳ないなぁって」
「ううん、それはしょうがないよ。だって、ずっと学校に行ってなかったんでしょ? そんなの、ハイノが悪いんじゃないし」
「……エルナ」
その後、帰路を進みつつそう口にする。すると、優しく微笑み答えてくれるエルナ。……うん、ありがとうエルナ。
でも、授業はほんとに分からなくて。エルナの言うように、ずっと学校に行ってなかったのでそもそもぼくらくらいの歳の水準を知らないんだけど……うん、あんなに難しいんだね。……よし、頑張ろう。
……ただ、それはそれとして――
「……あのさ、エルナ。その、なんか……ううん、なんでもない」
「ふふっ、なにそれ」
自分で言って引っ込めたぼくに、おかしそうに微笑むエルナ。……まあ、そうなるよね。……ただ、それはそうと……やっぱり気のせい、かな?




