お食事
「……あの、ほんとにいいんですか? その、ぼくまでご一緒して……」
「もちろんだよ、ハイノくん。エルナが帰ってきたら食事にしようと思っていたから、ちょうど良い時に来てくれてよかったよ」
「そうよ、ハイノくん。遠慮なんてせずにたくさん食べてね」
「……あ、ありがとうございます……」
それから、しばらくして。
そう、おずおずと尋ねてみる。すると、満面の笑顔で答えてくれるお父さまとお母さま。遠慮なんてしたらむしろ申し訳ないくらいの、まぶしいほどの笑顔で。……その、ありがとうございます。
「それでは、いただきます」
「「いただきます」」
「……あ、その……いただきます」
それから、ほどなくして。
最初にお父さま、続いてお母さまとエルナ、そして最後にたどたどしくぼくが手を合わせお食事前の挨拶をする。……うん、いただきます。
さて、綺麗な木製の食卓にはアイントプフやシュペッツレ、ザワークラウトなど、この国の代表的な家庭料理が彩り豊かに並んでいて。ちなみに、アイントプフとはソーセージや野菜などたくさんの具材を一つの鍋で煮込んだスープ、シュペッツレとは卵入りのパスタのような麺料理、ザワークラウトとはキャベツのお漬物で……うん、どれもおいしそう。
……さて、どれから……うん、スープかな。そういうわけで、そっとジャガイモをスプーンですくい口の中へと――
「…………え」
「……ハイノ?」
「……あ、ごめん、その……」
ふと、きょとんと首をかしげ尋ねるエルナ。まあ、それもそのはず……どうしてか、最初の一口を噛みしめてほどなく、ぼくの目から一滴の雫が頬を伝ってきたのだから。
「……あ、その、ごめんなさ――」
そう、謝罪を口にしようとするも不意に止まる。と言うのも、隣にいるエルナがそっとぼくの肩に手を乗せ微笑みを浮かべていたから。何も言わなくていい――そう言ってくれているような、優しい微笑で。そして、そっと視線を移すと、お父さまとお母さまも同じような微笑を浮かべてくれていて……だから、代わりに――
「……その、ありがとうございます、お父さま、お母さま……エルナ」
そう、感謝の言葉を口にする。すると、みんな優しい笑顔のままそっとうなずいてくれた。




