抱えてきた思い
「…………ハイノ」
「……っ!! エルナ!! ……あっ、ごめん」
それから、数時間後。
そう、ポツリとつぶやくエルナ。そして、そんな彼女を前に思わず大きな声を上げるぼく。……しまった、つい。……でも、良かった。ほんとに……本当に、良かった……エルナ。
「……そっか、わたし、あの時……」
その後、仰向けのままつぶやくエルナ。今、ぼくらがいるのは総合病院の一室――数時間前、突然倒れたエルナが救急車で運ばれ、ついさっき目を覚ましたわけで。
「……ごめんね、ハイノ。心配かけちゃって」
「ううん、気にしないでエルナ。それより、目が覚めて本当に良かった。具合はどう?」
「……うん、大丈夫。ありがとう、ハイノ」
「……そっか、それなら良かった。あっ、寝てて大丈夫だよ」
「ううん、大丈夫。起きてハイノとお話ししたいし」
「……それなら、良いんだけど」
それから、ほどなくして。
そう、ゆっくりと身体を起こし告げるエルナ。心配ではあるけれど、彼女自身がこう言っている以上、今の時点でこちらから止めることじゃないのだろう。実際、少しぼんやりした様子ではあるものの、それほど具合が悪そうには見えないし。
……ところで、どうしても言っておかなきゃいけないことがあって。
「……あの、エルナ。その、パパとママは――」
「うん、分かってる。わたしを、ハイノと二人きりにしてくれたってことは。だから心配しないで」
「……あ、そうなんだ」
ためらいつつ口を開くも、柔和に微笑みそう口にするエルナ。エルナと二人で一緒にいてあげてほしい――あの後、すぐに病院に駆け付けてくれたパパとママからそう頼まれ、こうして二人でいるわけだけど……でも、それは二人がとても忙しくて、どうしても病院に残れないからぼくに託したものだとばかり――
……でも、今のエルナの言葉だと、何やら事情が違うようで。それに……よくよく考えれば、どれだけ忙しくても、あのパパとママがあの状態のエルナが目を覚ますのを見届けずに二人とも去るとは思えない。生命に別状はないとお医者さんから聞いていたから、そこは安心していたのだとは思うけど……それでも、どうしても二人ともが残れないなら、せめてどちらかは残ってエルナが目を覚ますのを待っていたはずで。でも、二人とも残らなかったのがエルナ自身のためだというなら納得もできて。
……でも、どうして? どうして、僕と二人にすることがエルナのために? エルナだって、パパとママがいてくれた方が良かったはずで――
「……ねえ、ハイノ。もう結構前だけど、聞いてくれたよね。『無理してない?』って」
「……へっ? あっ、うん……」
そんな疑問の最中、ふとそう口にするエルナ。……うん、言った。確かに、言ったけど……でも、どうして突然――
「……ねえ、ハイノ」
「……へっ?」
すると、そっと僕の手を握るエルナ。そんな彼女に少し驚きつつも、そっとぼくも握り返す。すると、嬉しそうに微笑んでくれるエルナ。そして、再びゆっくりと口を開いて――
「……聞いてほしいんだ、ハイノに。あの日までずっと抱えてきた、わたしの思いを」




