コンクール
「――ねえねえ、ハイノ! これに出てよ!」
「…………へっ?」
窓の隙間から吹き込む風が心地の好い、ある休日の朝のこと。
リビングにて、満面の笑顔でそう口にするエルナ。そんな彼女の手には、一枚の用紙。そこには――
「……ピアノ、コンクール……?」
「うん! ハイノなら絶対優勝できるよ! それに、これで優勝したらプロになれるかもしれないんだって!」
そう、満面の笑顔のまま話すエルナ。でも、ぼくとしては自信なんてない。エルナはこう言ってくれているけど、優勝できる実力なんてないし、ましてやプロなんてなれやしない。……だけど――
「……うん、分かった。やってみるよ」
「……っ!! うん、一緒に頑張ろ、ハイノ!」
そう言うと、花のような笑顔でぼくの手を握り告げるエルナ。正直、自信なんてないけど……うん、エルナが喜んでくれるなら頑張ろう。
「……どうかな? エルナ」
「……うん、もちろんすっごく良かったんだけど……でも、さっきと同じくらいかな」
「……うん、だよね」
それから、一週間ほど経た夕方の頃。
ピアノの前にて、隣のエルナへと尋ねるも少し浮かない表情で答えが届く。……うん、だよね。弾いてるぼく自身もそう思ったし。
そう、あの日からぼくらはコンクールに向け日々練習を重ねている。……だけど、どうにも……いや、全くないわけでもないんだけど……でも、あまり手応えは感じなくて。……いや、どころか正直のところ――
「でも、あせることないよ! あとまだ一週間もあるんだし、頑張ろハイノ!」
「……うん、そうだねエルナ。ありがとう」
すると、ぐっとこぶしを握るエルナ。そんな花のような彼女の笑顔に、ふっと心が安らぎ……そして、再び力がわいてくる。……うん、ありがとエルナ。




